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オレンジの 陽の中で  作者: 伊集院 大和
11/12

同期の桜



正月を迎えた 2日


祖母の誕生日に合わせて


霧島神宮にて 式を挙げた








正月を過ぎて またいつもの暮らしの中


祖父が 仕事で来ていた 豆腐屋の離れに住み

趣味として車の整備を手伝い

新婚旅行にいく機会を逃していた






2月の14日に 祖父と祖母は 湯布院へ行った

湯布院にて 2泊し

またいつもの暮らしをしていた



大伯父は 戦後オルガニストとして

活動していた腕を買われ

中学にて 音楽の教師として働いていた



教師になり 梅北からは 少し遠いという事で

教師をしている中学のある町に

引越しすることになった




祖父が 修理工場から トラックを借り

引越しの荷物を積み込み


祖父と大伯父は 2人で 引越し先にトラックで向かった



運転しているトラックの中で


2人はまた戦時中の話になり

祖父は 満州にて

車のエンジンを担当していた話をしたり


ふざけるのが過ぎて 度々目をつけられ

罰として木に登らされ

蝉の鳴き真似をさせられた話で 2人は笑った





大伯父は 敵前上陸の後

進軍して南下し その後マニラを制圧した後


トラックに乗り 食料を運ぶ部隊へと

編成されたのである


米軍の再上陸後 トラックに乗り

荷物を積み 山下大将の部隊と合流し


戦後 捕虜に なるまで 戦いながら

飢えに 苦しみ 亡くなる仲間に手を合わせた





そんな話をしながら


大伯父が 住むことになる家へ着いた



荷物を運び終え

祖父は 結婚祝いに貰った焼酎を

トラックへ取りに行き 大伯父のいる部屋へ戻り




その日 大伯父と祖父は

今こうして生きている喜びと

2人のこれからの 新たなる人生へ祝杯をあげた




その日の夜 大伯父は


妹と結婚した祝にとピアノで

戦時中に 作曲した曲を祖父の為に弾いた




そしてまた 酒を酌み交わし 2人は泣いた




2人は縁側に座り 星をみていた





満天の星空を見て

祖父が こう言った




俺達は お互い 長男だったのもあって


戦争へ 駆り出され 戦ったけど


生きて帰ってきて良かったのか?と呟いた





大伯父は こう言った





長男だからこその 役目を果たし


国の為 家族の為 将来の日本の為に


戦ったんじゃないか



今 こうして 俺達に 命があるのは


祖先が 見守っていてくれたからこそであり


無事に帰って 生涯を全うし

同じ墓に 入れという事じゃないのか



だから 生きて帰って良かったのかと言うな

生きて帰ってきたからこそ

こうして 今があるんじゃないか







そういって 2人は

生きて帰ってきた事を噛み締め



焼酎を2人で開け

また 涙した





薄明かりの中 桜の花びらが舞い散る夜だった




















































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