同期の桜
正月を迎えた 2日
祖母の誕生日に合わせて
霧島神宮にて 式を挙げた
正月を過ぎて またいつもの暮らしの中
祖父が 仕事で来ていた 豆腐屋の離れに住み
趣味として車の整備を手伝い
新婚旅行にいく機会を逃していた
2月の14日に 祖父と祖母は 湯布院へ行った
湯布院にて 2泊し
またいつもの暮らしをしていた
大伯父は 戦後オルガニストとして
活動していた腕を買われ
中学にて 音楽の教師として働いていた
教師になり 梅北からは 少し遠いという事で
教師をしている中学のある町に
引越しすることになった
祖父が 修理工場から トラックを借り
引越しの荷物を積み込み
祖父と大伯父は 2人で 引越し先にトラックで向かった
運転しているトラックの中で
2人はまた戦時中の話になり
祖父は 満州にて
車のエンジンを担当していた話をしたり
ふざけるのが過ぎて 度々目をつけられ
罰として木に登らされ
蝉の鳴き真似をさせられた話で 2人は笑った
大伯父は 敵前上陸の後
進軍して南下し その後マニラを制圧した後
トラックに乗り 食料を運ぶ部隊へと
編成されたのである
米軍の再上陸後 トラックに乗り
荷物を積み 山下大将の部隊と合流し
戦後 捕虜に なるまで 戦いながら
飢えに 苦しみ 亡くなる仲間に手を合わせた
そんな話をしながら
大伯父が 住むことになる家へ着いた
荷物を運び終え
祖父は 結婚祝いに貰った焼酎を
トラックへ取りに行き 大伯父のいる部屋へ戻り
その日 大伯父と祖父は
今こうして生きている喜びと
2人のこれからの 新たなる人生へ祝杯をあげた
その日の夜 大伯父は
妹と結婚した祝にとピアノで
戦時中に 作曲した曲を祖父の為に弾いた
そしてまた 酒を酌み交わし 2人は泣いた
2人は縁側に座り 星をみていた
満天の星空を見て
祖父が こう言った
俺達は お互い 長男だったのもあって
戦争へ 駆り出され 戦ったけど
生きて帰ってきて良かったのか?と呟いた
大伯父は こう言った
長男だからこその 役目を果たし
国の為 家族の為 将来の日本の為に
戦ったんじゃないか
今 こうして 俺達に 命があるのは
祖先が 見守っていてくれたからこそであり
無事に帰って 生涯を全うし
同じ墓に 入れという事じゃないのか
だから 生きて帰って良かったのかと言うな
生きて帰ってきたからこそ
こうして 今があるんじゃないか
そういって 2人は
生きて帰ってきた事を噛み締め
焼酎を2人で開け
また 涙した
薄明かりの中 桜の花びらが舞い散る夜だった