生きている
もしも、俺がこの世界に生まれ落ちていなければ。
きっと、この世界は存在しなかったろう。
この世界を俯瞰で見ることが出来る場所からは、この世界など何の価値もない場所だったに違いない。
俺が気に入らないあいつは生まれ落ちていたかもしれないけれど。
けれど、何の価値もありはしない。
この世界に俺と言う個が存在しないのだから。
鼻で笑うような妄想だと、価値あると思い込んでいる人たちは言うかもしれない。思うかもしれない。
けれど、逆に笑ってやるさ。
俺のいないこの世界にそこまでの価値なんてないよ、って。
この世界に溢れるどんなドラマも。
俺がいない時点で無価値に過ぎない。
総じて皆道化と同じだ。
おかしな化粧で玉に乗っている。
誰かを笑わせようとしているけれど。
誰も笑っちゃいないんだ。
そこに俺がいなければ。
血の通わぬ世界の中で生きているだけに過ぎないんだ。
俺は生きている。
この世界に生きている。
だから、この世界も生きている。
それでようやく、この世界は生きていけている。
誰も気づかない内に。
誰も知らない内に。
俺が生きていると言うそれだけのことで。
この世界はようやくに生かされている。