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LETISGEAR OVERTECHNOLOGY TOHO FANTASY   作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
黎明都市フィッツジェラルド編
20/45

17章 見えた世界

彼女がカイアスを尋問していた時、新たな足音がその場で響き渡った。

寡黙な捜索機動隊本部を貫くように、その足音はチルノの近くへとやって来たのである。

彼女が後ろを振り返った時、其処には退院したセーラが元気そうに立っていたのである。

セーラは満足そうな笑みを口元に浮かべており、久々な再開を心底喜んでいたのである。


「……セーラちゃん!退院したんだね!」


「うん、遅れてゴメンね。後は私に任せて。……主任権限は私が退院するまでよ、カイアス」


「―――嗚呼、好きにさせて貰ったよ。多くの人が嘆き苦しむ結果を産んだ、今回の采配は正しいだろう?セーラ」


「……貴方、一体何を言ってるの!?…我々深淵庁は、解条者フォノン模索と黎明都市の安全を守るために設立された部署なの!

―――私の兄、ルーシア=オルハも先程の緊急国会演説で、今回の採択は繆錯だと指摘していた!

……貴方は何も分かっていない、今回の貴方の"決断"はミスだったのよ!!」


セーラは彼の発言を非難した。

しかし彼は何も悪びれる事無く、彼はただその場に両手を懐を突っ込んだまま立っているだけであった。

主任権限はセーラへと戻ったものの、多くの死傷者を出し、且つ金融システムを混乱させた今回の行動は決して取り戻されない。

だがアクシス・オーバー社が律城世界メタトロンの元老院と密実な関係であったこと、これしか利益は得られなかった。

軍需産業の第一人者とも言えるべき会社がこうして信頼を失った今、あれだけ危ぶまれていた第二次蒼穹而戦争が起きようとしているのだ。

このままでは間隙を見計らった、圧倒的優勢なメタトロン側の侵略に、まともな攻防さえも出来ずに敗北を機するだろう。

セーラは不安な感情を心に降り積もらせながら、これからを必死に模索していた。


「……ミス、か。…私は私の最適に思う考えを類推し、結論を導いただけだ。

我々深淵庁の捜索機動隊が幾ら非難を浴びよう、過去に戻ってやり直す、と詭弁するのか?

……クラスター錯覚は止めろ、家宅捜索の施行と私への責任の罪過の有無を相関させるのは、誤謬も甚だしいと思うがな」


「……相関も何も、貴方が主任権限を行使して使役させたが故なのよ!?

―――カイアス!!何を言って…」


「その名を言うな!!!」


セーラは大声を上げそうになったが、その声はカイアスの声によって消されてしまったのである。

少し感情的になりすぎた事を反省し、お互い気分を落ち着かせては、再び眼差しを向け合った。

彼は至極不機嫌そうな顔面を浮かべては、机上に置いてあった幾枚かの資料をばら撒く形でセーラたちに渡した。

地面に落ち行く資料を掻き集めるチルノに、セーラは申し訳なさを抱きながら、かの男を睨んでいた。


「……アクシス・オーバー社と絡んでいた企業リストだ。…その中の一つに、シュノファス鐵工所が絡んでいた。

お前らも覚えているだろうが、シュノファス鐵工所は掘削機、破砕機を専門に取り扱う中小企業だ」


「シュノファス鐵工所…掘削機…、…もしかして、あの時あたいたちを襲ったのは!?」


チルノはその時、セーラと共に話していた時に突如襲ってきた掘削機を頭の片隅に思い出した。

黄色のボディを見せた、かの悍ましい巨大機械。唐突に襲撃を図ってきた、一種の恐怖を髣髴とさせる。

彼女はぼんやりと、朧げながらも其の姿形を取り留めも無く思い描いては、男の方を真剣に向いた。

拾い上げた資料をセーラに渡しては、ただ不安そうな表情を浮かべて。


「……あれは過失では無い、完全に故意だ。

アイツら…アクシス・オーバー社は、この世界を"見えない権力"で覆おうとしたんだ。

奴らはスパイとして深淵庁の職員だったゼロ長官からチルノの話を聞き、殲滅に動き出した。

そしてシュノファス鐵工所はアクシス・オーバー社とは切っても切れない関係である、其れは迂回融資の件だ。

シュノファス鐵工所は深刻な赤字問題が続き、銀行にも劣悪企業として見捨てられていた、此処で正義ヅラをしたアクシス・オーバー社が迂回融資を行ったんだ。

……『迂回融資』ってのは銀行から融資を別会社経由で行わせることだ。無論、アクシス・オーバー社は優良企業だったんでね、迂回融資は何なく成功した。

言っておくが、迂回融資は不当融資だ。世間に知れ渡れば、其れは信用に関わる大問題になるだろうな。

こうしてアクシス・オーバー社に弱みを握られたシュノファス鐵工所は、過失に見せかけた解条者フォノン殲滅を執行した。

―――証拠がこれだ」


カイアスは不敵な笑みを浮かべながら、懐から黒くて細長い物体を取り出したのである。

其れは紛うこと無き、盗聴器であった。何処からともなく仕込んであったのか、カイアスは盗聴内容を再生し始めたのである。

ノイズが多少入っているものの、声はしっかりと聞こえるものであった。



―――オランディオ社長、本当に宜しいのですか…!?


―――構わない、私はお前たちシュノファスに期待している。


―――あ、ありがとうございます!…この50億の迂回融資、ご恩は一生忘れません!!



中にはジ・オランディオたる人物とシュノファス鐵工所の社長と思わしき人物の会話の一部始終が記録されていた。

其の場に居たセーラや捜索機動隊の面子は驚きに駆られては、ただカイアスを見つめていた。

チルノは急に何かが怖くなり、蹲ってしまった。淡々と照る天井の蛍光灯は、深淵庁を軽く見下ろしていて、男は其れに微笑み返すように口元に弧を作った。

盗聴器を懐の中に仕舞っては、再び口を開いた。


「…私が勝手な独断で取り付けた盗聴器だ。

……迂回融資と言う弱みを握られた以上、シュノファスは何をしでかすか分からない。

アクシス・オーバー社や我々に非難が集まる今、何か行動を侵してくる可能性も充分に考えられるだろうな。

表面上、全く無縁だと思われていた2社は密接な関係があったんだよ。だから今回のアクシス・パラダイムでシュノファスの株価は変動ナシ、だ。

―――さぁ、此処で俺は何を言いたいと思う?」


「……まさか」


「そのまさか、だよ。…今からシュノファス鐵工所に家宅捜索を行う。非難とか知った事では無い、世界が惜しければ動け。

迂回融資の口実を捜し、其れを使って脅せば、奴らは…シュノファスのロアトル社長はアクシス・オーバー社の企みを話すだろうからな。

あの、誰よりも会社や社員を思う熱情のある、物分かりが早い社長ならな。

……恐らく、奴らの計画はまだあるはずだ。…自身の会社が惜しければ秘密を伝えろ、と脅す。

―――我々、第三者諮問機関こと深淵庁が行う独自の家宅捜索に、国民の糞みたいな世論は不要だ!

真理が其処にある以上、我々は戦うべきなのだ!…愚かな民衆の口々に飲みこまれてたまるか!!!」


◆◆◆


「……№IV。ハッキング状況はどうだ?」


「ああ、№VII。たった今、第三次世界へのアバタール・ネットワークのファジー指数システムへアクセス成功した」


「なら丁度話は早い、その成功データのバックアップをコピーして、此方に貰えないだろうか?

先方、リュノン思案書に於いてメテオ計画との照合が必要だと言われてな」


「なら了解した、バックアップデータをUSBに送って渡す。それでいいよな」


薄暗い部屋の中、彼はやって来た来客に対してそう告げたのであった。

すぐさまUSB端子を差し込み、自身が築き上げたデータを送る。

バックアップデータは完璧にUSBメモリの中に入れられ、其れは№IVの掌に投げられるような形で渡された。

来客は軽く礼を述べると、その部屋から踵を返したのである。

鋼鉄製の自動ドアが閉まった時、彼は懐からスマホを取り出しては耳に充て、小声で徐に喋り始めたのである。


「メテオ計画の基本データを回収した。…ホログラム型戦闘機"ゼロア"を起動させ、脱出する準備を図れ」


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