親切の押しつけ
謎の少年狩屋大貴の義母を名乗る自称”ユウリン”の申し出とは・・・
「ねえ、ちょっといいかしら?」鈴葉が意識を取り戻してから数日後の午後、集中治療室から出て来た凛に、先日謎の少年大貴と話していた彼の母親風の人が声をかけて来た。近くで見ると大柄の人だ。
「どうしてここまで?」
「あら、大貴君と一緒にいたのをお見かけしただけなのに、憶えていてくれたのね。」
「一体何なんですか?新聞記事がそんなに気になりますか。」
「そうね、気にならないことはないわね。でもね、私が凛さんのことも、成美さんのことも、鈴葉さんのことも知ってるのは、あの事故が直接の原因じゃないの?」
「はー?どういうことですか?」
「それはまだ詳しく言う訳にはいかないの。でも、これだけは言えるわ。これには、都市伝説や噂が関係してるってこと。」
「失礼ですが、貴方はこの前の彼のお母さんなんですか?」
「そう、母親です。でも、血の繋がりはないのよ。それと、ユウリンと呼んで頂けるかしら。」
「ユウリンさんは私たちのことを前から知ってるってことですか?」
「前からって言うのとちょっと違うけど、私にとっては前からになるかしらね。」
「すみません、正直気味が悪いんですけど、私たちにどういうご用ですか?」
「単刀直入に言って、力になりたいの。」
「力って、何のですか?別に初対面の人にお世話になることなんか何もありませんが。」話しているうちに、凛は、これが人の心の弱みに付け込んで勧誘してくる怪しい新興宗教の類だと思い、これ以上の対応を避けて、その場を振り切ろうとした。
「待って。親切の押しつけと思われてもいい。凛さんも聞いたことあるでしょ。相手に恩を着せずに親切にすると、幸福ポイントが増えるって噂。」
「その噂をまじで信じてるんですか?」
「ええ、信じてるわ。確信してるって言った方がいいくらいにね。」その顔は真剣そのものだった。ずっと凛の目をまじまじと見て話して来るユウリンに、凛は疑ってばかりではいけない気もしていた。
「そんなに幸福ポイントが欲しいんですか?」
「ええ、どうしても助けたい人間がいるから。その為にね。」
「大貴さんのお姉さんのことですね。」
「そうね、大貴君のお姉さんも救ってあげなくちゃいけないわね。」
「じゃあ、ユウリンさんが助けたい人というのは別にいるってことですか?」
「ええ、でもその為には今、貴方たちのことや、大貴君のお姉さんのことを心から応援させてもらいたいの。いけないかな?」その言葉に、凛は互いの抱える問題に接点がある様な気がした。
「絶対に嘘じゃないですよね。騙してなんかないですよね。」
「信じて。私の大切な人間の命がかかってるの。時間がないの。」
「分かりました。」
「ありがとう。信じてくれて嬉しい。」
「じゃあ、まず何すればいいんでしょうか?」
「鈴葉さんに会わせて頂けますか?」
ユウリンの助けたい人とは?又、ユウリンは鈴葉に会って何をしようというのか?次回第8部は、
”鈴葉の切実”です。




