時空をさまよう霊
日増しに元気を取り戻して行く成美と涼太。2人が生死の境を乗り越えてから、1週間が過ぎたある夜の出来事だった。
「ねえ、鈴葉。」退院を翌日に控えた鈴葉の病室に、集中治療室から一般の病室に移っていた成美が、あの夢の器具を自分で操ってやってきた。まだ自力では歩けなかったのだ。成美の部屋も、鈴葉と同じ6階になっていた。
「どうしたの?こんな時間に。」
「いくら待っても、涼太君来ないんだ。どうしたんだろう。」成美は、不安そうな顔をしていた。
「待ち合わせでもしてたの。」
「うん、3日前から毎晩来てくれていて、昨夜は私にこれをつけてくれて、こっそり院内デートしたんだ。」涼太も経過が良好で、顔色もすっかりよくなり、夢の器具なしでも普通に歩けるようになっていて、近々退院する見込みになっていた。
「おいおい、けが人と病み上がりが一体何やってるんだよ。」
「だって、涼太君といると楽しいんだもん。」
「大人しくて、奥手だと思っていた成美がねえ。」
「そういう鈴葉だって、大貴君とラブラブでしょ。」
「いやー、あんなに好かれちゃ、断れなくってさあ。」
「と言いながら、鈴葉は凄く嬉しそうだよ。」
「まあそうだけど、それより涼太君とこ、行ってみる?」
「鈴葉、付いてきてくれる?」
「いいよ。行こう、成美。」2人はさっそくエレベーターに乗り、涼太の病室のある3階に向かった。
成美の体を想い、当然の選択だったが、鈴葉にふと悪夢が蘇った。その次の瞬間、あの時と同じようにエレベーターの扉が、あの4怪で開いてしまった。
「だめ、成美。」そう言うと同時に、成美はあの夜の鈴葉同様エレベーターを降りかけた。それをひきとめようと、成美の手をつかんだ鈴葉も引っ張っれるように4怪に降りてしまった。もう摩耶はいない。
どうしよう?大きな不安が鈴葉を襲った。やはりあの夜と同様、少年の叫び声が聴こえた。
「お兄ちゃん、帰って来て、僕を助けてよ。」変わらぬ悲しげな声だった。
「涼太君の声だ。」成美が叫ぶように言った。
「そう言えば似てるね。」
「間違いない。涼太君に違いないよ。行こう。」成美は、迷いなく声のする方へ進んだ。
「待ってよ。行っちゃだめだよ。どうしてこんなとこに涼太君がいるんだよ。」
「彼の声を聞き間違えたりしないよ。絶対に涼太君に違いない。」もう鈴葉の制止を無視して、成美はどんどん進んで行った。
「もう、あんたらは入院患者の分際で、どういう契りなんだよ。」と鈴葉があきれながら、成美の後を
追うと、すぐに420号室に着いた。そして、止まることなくその中に入って行く成美と、それを追って
鈴葉も中に引き込まれてしまった。果して、そこで2人が見たものは、謎の少年に話しかけている涼太だった。それは、何か説得しているようだった。
「涼太君!」
「涼太君!」相次いで呼びかける成美と鈴葉に、驚いたように振り返った謎の少年は、病弱そうでかなり青白かったけど、確かに涼太そのものだった。
「君は、僕なのか?」その霊は、動揺していた。
「お兄ちゃんに命を救われたんだ。だから、もういいだろう。」
「来てくれたのか?雄太兄ちゃん。」
「うん、だから、こうやって生きてるんだ。」
「そうか。来てくれたんだ。ほんとだ。兄ちゃんの匂いがするね。よかった。」そう言うと霊は、すうーっと静かに消えて行った。
「さあ、みんな早くこっちへ。」420号室の扉のところからユウリンが叫んだ。
時空の狭間に迷い込んだ3人を助けに来たユウリンの正体は?次回は
いよいよ最終回、”新たな都市伝説”です。




