目を覚まして、成美
重体の少女は成美?果して、みんなの願いは届くのか?
「成美の具合はどうなの?」大貴が帰り、再び病室に来た凛に、鈴葉がいきなり聞いた。
「思い出したの?」
「うん、なんか混乱してたけど、頭の整理が出来たんだ。」
「そう、成美は意識がまだ戻らない重体で、集中治療室にいるわ。」
「これ装着して、連れて行ってくれる?成美のところ。」凛は、鈴葉のトイレが済むまでの間に、器具の使用説明をユウリンから受けて、すでに試しもして、マスターしていた。誰でも使えるように、簡単操作になっていたのだ。
「見たら辛くなるよ。」
「さっきね、聴こえたんだ。成美を助けたいって、摩耶の声が。みんなの思いが、きっと成美を助けるって、摩耶は必死に訴えてたの。だから行かなくちゃ。」
「そう、鈴葉にも聴こえたんだ、摩耶の声が。分かった。行こう、成美の病室。」
「分かった。でも夜まで待って。さっきは、もう切羽詰まってて限界だと思ったから、何も考えずに言ったけど、こんなの病院の人に見られるとちょっとやばいよ。」
「それもそうだね。よくよく考えたら、よく見つからなかったもんだ。じゃあ、凛又これ持って夜に
来てくれるの?」
「うん、消灯の後、夜勤のナースの見回りが終わった直後が狙いめだから、それくらいに来るよ。」
「え、わざわざそんな時間に来てくれるんだ。なんか悪いな。」
「何言ってるの。友達でしょ。」
・・・・・そして、夜・・・・・
「鈴葉、起きてる?」凛が小声で言って来た。
「あ、凛。ごめん、ちょっとうとうとしてた。いつから居たの?」
「今来たばっかだよ。ちょっとは眠れた?」
「うん、夜に備えていつもより多めに昼寝しておこうと思ったら、余計冴えて眠れなくって、今頃眠く
なって寝ちゃったみたい。でもすっきりしてるから大丈夫。」
「じゃあ、さっそく着けるね。」凛は鈴葉に器具を装着した。
「凛、手早いね。」
「これ、高性能な割に意外と簡単なんだ。凄く進んだ器械だよ、これは。よし、これでOK。じゃあ、行くよ、いい?」
「うん、お願いします。いつでもいいよ。」それに応えて凛は、リモコンを操作し、昼間ユウリンがや
った時同様、鈴葉が難なく静かに起き上った。そして、さっそく病室を出て、成美のいる集中治療室に向かった。
「今、何か聴こえなかった?」鈴葉の病室は最上階の6階=実質は5階だが、成美のいる集中治療室は2階なので、二人はエレベーターに乗ったのだが、その途中で、鈴葉がどこからかの声を耳にした。
「何も聴こえないけど、鈴葉は何か聴こえるの?」
「いや、もう聴こえないけど、なんか男子の声みたいだった。」鈴葉がそう言ったところで、エレベーターが2階に着いて開いた。
「何て言ってたの?」エレベーターを降りながら凛が聞いた。
「助けてって言った気がするけど、一瞬聴こえただけだから、よく分からない。」
「入院患者だよ。そんなのはナースさんに任せておこう。」
「そうだね。私たちには関係ないね。」その時は2人共そう思っていた。
成美の病室はエレベーターから近く、二人はすぐに着いた。
「成美!」複数の管を着けた友達の痛々しい姿を見て、鈴葉はショックを受けた。身動きこそ出来ないにしろ、自分は全然まだましだったからだ。鈴葉の目から涙があふれ出た。
「タクシーから投げ出されたからね。全身を強く打って、骨もあちこち折れてるんだよ。出血もひどくてさ、成美の家族の人や私も輸血に協力して今は一応安定してるけど、いつ目を覚ますか分からないんだよね。」凛の頬にも涙が流れていた。
「ごめんね。私のせいで、ほんとにごめんね。」鈴葉の耳にも、凛の耳にもその声は届いていた。
「摩耶!大丈夫だよ。きっと成美は目を覚ますから。それに、自分一人抱えないで。私たちは友達なんだよ。出来れば姿も見せて。」鈴葉の呼びかけに、摩耶のすすり泣く声が聴こえた。
「そうだよ。又4人で遊ぼう。」
「うん、ありがとう。でももう私はいいよ。結局みんなに迷惑かけて、こんな私なのに友達になってく
れて、もう後は成美が元気になってくれれば私はもうそれでいい。」
「そんなこと言わないで、摩耶。摩耶の辛い気持ちすごくよく分かるよ。だから、今は3人で心1つにして祈ろう!成美が目を覚ますように祈ろう!」鈴葉が必死で呼びかけた。
「うん、分かった。そうだね、一緒に祈ろう!」摩耶の声に応えて、凛は手を伸ばして成美の左手を握った。鈴葉は手前の右手を握った。そして、その両手を更に上から乗せてくる手を感じた。その時、3人
の気持ちは一つになっていた。しかし、間もなくして上から乗せた手が離れて、
「もうすぐしたら、見回りの看護師さんが来るよ。見つかると、大変でしょ。もう戻って。」その警告
に応えて、二人はしぶしぶ集中治療室を後にした。
晴菜の霊=摩耶の声を聴いた鈴葉は、その直後別の霊の声に導かれる。次回第12部は、”420号室の怪”です。




