夕陽は太陽
『おはょ!綾音です。あのぉ〜、携帯買いました。やったね。』
綾音は、一生懸命バイトして、やっとの想いで買った初めての携帯。嬉しかったのは、言うまでもない。
学校行ったら友達に教えよ!
最初は、楓だけどね〜。
今時、携帯持ってないのは珍しく、かなりレアな綾音。
『おっはょぉ〜!』
テンションMax!
朝、早めに来た綾音は、楓の事を待っていた。
『綾音、おはょ!』
元気良く挨拶してきたのは、梓だった。
『あ!おはょ。梓、あのね?……!』
嬉しさの余り、思わず言ってしまいそうな綾音。
『ん?なになに?何かいい事合ったん?』
『ん〜。携帯買ったんだぁ。にっ!』
嘘を付くのが嫌いな綾音。梓には、正直な気持ちを伝えた。
『そっかぁ…。んじゃ、私は二番目に入れてね。ニコッ。』
ちょっと可哀想な事、しちゃったかなぁ…。
キーンコーン
カーンコーン♪
また、遅刻…。
『スミマセン!おはようございます。廊下、立ってます。』
先生も、呆れを通り越して言葉がでなかった。
『三神!もっと早起きしなさい!今日は、大事な話があるから…、はぁ。早く席に着いて。』
『そぅすか!』
何も考えてない楓でした…。
『今日、皆に伝える事は、来年行く予定だった修学旅行が、今年の6月、つまり来月になりました。また、改めて親族等、プリントを用意します。前もって伝えておいて下さい。』
ザワザワ…。
思いもよらぬ出来事だった。
ツンツン…
綾音だ!楓は、後ろを振り向き…
『何だょ…。』
『おはょ。ニコッ。旅行、楽しみだねぇ。』
『そうか?何か、面倒だな…。』
楓は、あまり集団行動が得意ではなく、気が進まなかった。
『何でょ!プンプン!綾音は、凄く楽しみだなぁ。にっ。』
だって、楓との思い出つくるんだもんね!
『楓?』
『なに?』
『今度、一緒に買い物行こ?旅行に着ていくヤツ!』
『え〜。』
『行くぞ!わかった?』
『はぃ…。』
俺っていったい…。
具合も良さそうだし、前の出来事は気にしてなさそうだし、綾音の笑顔が見れればいっか。
HRも終わり…
『楓、楓!』
ちょっと照れた感じの綾音。モジモジしながら楓に話かけた。
『ん?どしたん?モジモジしちゃって…!トイレ?』
『バカ…。違う…、これ、楓に見せたかったの…。』
綾音は、バイトをして買った携帯電話を、少し照れながら楓に見せた。
『お!携帯!ついに持ったんだ!あははっ!よかったね!』
『ぅん!でね?楓の番号、最初に入れてあげようかなぁって思ったの…。教えて?』
『いいけど…、俺でいいのかなぁ…。』
『いいのぉ!』
綾音は、ニコニコしながら登録すると…、『じゃあね。』と言って、皆に聞き回った。
あららっ…と、思いながらも微笑ましい綾音だった。
嬉しいんだなぁ…。
学校も終わり…
『帰ろ?楓っ。』
『おぅ。』
珍しく休みが重なった楓と綾音。
久しぶりに、一緒に帰る事になった。
『楓?なんか、久々だね!一緒に帰るの…。』
『そうだね…。』
久々ってのもあって、少し緊張する2人。
ゆっくりと海沿いを歩いていた。
『やっぱり、一人で帰るより…、楓と帰る方がいいな…。』
『……。』
正直、なんて言っていいか言葉が見つからなかった…。
『綾音?ベンチ座る?』
『ぅん。』
今日も、夕陽は俺達を見つめていた。
風が心地良い…
『楓?』
綾音は、夕陽を見ながら語り始めた…
『楓が、あの女性とキスした時、綾音、ショックだったょ?』
……。やっぱり…。
『その時ね?綾音、一人でココに来たんだ…。』
……。楓は、黙って綾音の声に、耳を傾けていた。
『色々な事、思い出した…。頭の中で、ずっと考えてたんだ…。』
うん…。
『そしたらね?……。』
…?楓は、すっと綾音の顔を覗き見た…!
夕陽の光に照らされる綾音。頬に流れる涙がダイヤのように輝いて見えた…。
『そしたらね?優希がね…。楓を信じてあげなって…。』
『うん。』
大粒の涙を流す綾音。
俺は、ベンチから立ち上がり、前の柵に手をかけ、夕陽を見ていた…。
『優希がね?…綾音の事、ずっと……見守っててくれた!………。楓の事、信じてって…。』
『……。ごめんな?』
!!!
綾音は、泣きながら楓の言葉に耳を傾けた…
『俺、今までずっと…。勇気がなくて…。いつも、綾音の事、傷付けてばっかで…ごめんな。』
そっか…、優希が…。ありがとな…、優希。俺にも、勇気貸してくれよ…。
『俺、頭の中にいつもお前がいるんだ…。昔から…、気になってしょうがなかった…。』
綾音は、涙が止まらなくなっていた。
『ずっと前から…、綾音の事が…、
楓君、頑張って…
優希……、ありがと…。
綾音の事が…大好きです。』
『……、信じてて良かった…。良かったょ…。ずっと待ってたんだよ…。楓の事、ずっと…。』
綾音は、楓に抱きつき、泣き続けた…。
夕陽に照らされる2人。
泣きながら抱きしめ合う2人。この日が、2人の最高の思い出の場所。
きっと、夕陽を見る度に思い出すでしょう。
そして、ココにくれば、太陽のような笑顔の優希に逢えるでしょう。
信じていれば必ずかなう思い。それを、楓と綾音が教えてくれた。
ぁゃちゃん?
楓君?
おめでとね…
この思い出の場所…。夕陽は太陽。
今まで、読んで頂き有難う御座います。楓が告白!…自分で読み返してて“ヘタだな”って…。でも、また楓と綾音のこれからを書いて行きたいと思ってます。その時は、宜しくお願いします。有難う御座いました。