+たからもの+
苦手な人は逃げましょう。
「宝ぁ、どこー?」
いつもの、あの人の声。
もぅ、聞こえない。
時は平成のどっか。
どうでもいい。気にしないでくれ。
俺は、どっかの男子校の生徒。
あの人は、性を偽って、男子校にいた。
教室にも
図書室にも
グラウンドにも。
あの人は『いた』。
何があったかも、何をしたかも、俺は知らない。
ーーーあの人のいないところなんて。
俺は、高校を自主退した。
生徒会長で成績優秀だったので、校長がウザかった。
今までは『いい生徒会長』を演じていた、これが本当の俺ですと言えば、引き下がった。
『いい人』なんているだろうか?
みんな、『何か』を演じているのではないか?
実際俺は、『いい生徒会長』を演じていたわけだし。
一人暮らしっていいな、と思った。
…思う?想う…。
あの人がいつも来ていた。
もう来てくれない。
…もぅ、会えない?
…会えない。
あの人って不思議だったなぁ。
よく頭撫でてくれたし、手も繋いでくれた。
暖かかった、優しかった。
…もっと、それを感じていたかった。
僕の、宝物。
たった一つだけの『 』。