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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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59、今はただ腕の中に

 気づけば、兄とセラフィナはその場からいなくなっていた。


 「……あれ、帰っちゃったみたいですね」


 「やっと二人だ」


 ルキウス様と目が合う。


 その瞳は熱を帯びていて、胸がどきりと跳ねた。

 そして耳元に、低い声が落ちる。


 「……もう我慢できない」


 次の瞬間、強く抱き寄せられ、身体がふっと引き寄せられる感覚が走る。


 視界が揺れた。


 ルキウス様の異能だ。


 感覚が落ち着き、ゆっくり目を開ける。


 そこは――ルキウス様の私室だった。


 「ここなら、もう誰にも邪魔されない」


 「そうですね」


 私はそっと、ルキウス様の頬に手を伸ばした。


 けれど次の瞬間、彼の表情がはっと変わる。


 「リリー、体調が悪いのか?」


 「え?」


 言われてみれば、少し息苦しい。


 ずっと気を張っていたから、自分の体調の変化に気づかなかったのかもしれない。


 ……本当に、この人はすぐ気づく。


 それが、たまらなく嬉しい。


 「そうかもしれません」


 そう答えた瞬間、唇が重なった。

 じんわりと、温かな熱が広がる。


 「……ん」


 身体の奥へ、やさしい力が流れ込む。

 ふわりと、体が軽くなった。


 やがて唇がゆっくり離れる。

 その瞬間、二人の間に銀の糸がかすかに光った。


 思わず頬が熱くなる。


 ルキウス様は、どこか熱に浮かされたような目で私を見つめていた。


 「もう、大丈夫か?」


 「はい」


 私はそのまま、ルキウス様に抱きつく。


 そして――ふと、話したくなった。


 今まで隠していたことを。


 「私、本当は……」


 「死ぬ運命だったんです」


 「……は?」


 その言葉を聞いた瞬間、ルキウス様の空気が変わった。


 「……それは、誰が決めた」


 低く、押し殺した声。


 「そんな未来」


 「ふふ。大丈夫ですよ」


 私は小さく笑った。


 「きっと、もう未来は変わりましたから」


 「ルキ様、あなたのおかげで」


 「……え?」


 ルキウス様の目が、わずかに見開かれる。


 「私の知る未来では……ルキ様はこの世界に絶望して、国を崩壊に追い込んでいました」


 「そして私は……短い命でした」


 静かに言葉を続ける。


 「私も、そんな未来は嫌だった」


 「それに……あなたが苦しむ未来を知っていたから」


 「……どういうことだ?」


 「私、最初から知っていたんです」


 「ルキ様の癒しの力のこと」


 「だから近づいたんです」


 一瞬、息を吸う。


 「……生きたかったから」


 少しだけ笑う。


 「ずるい女でしょう?」


 しばらく沈黙が落ちた。


 「きっかけはそうでした。でも今なら、はっきり言えます」


 私はルキウス様を見上げる。


 「ルキ様」


 「あなたのことを……愛しています」


 胸の奥が、静かに震える。


 「私の秘密は全部話しました」


 「離れるなら、今ですよ……?」


 一瞬の沈黙。


 けれど、次の瞬間。


 「いや、離さない」


 迷いのない声だった。


 「ずっとそんなことを抱えていたなんて……」


 「今度からは、俺も背負う」


 ルキウス様の腕が、さらに強く私を抱きしめる。


 「リリーが死ぬ運命なんて」


 「俺が許さない」


 「ずるい女でもいいんですか?」


 そう聞くと、ルキウス様は小さく笑った。


 「ずるくなんてないさ」


 「俺を想ってくれていたんだろう?」


 そして、私の髪をそっと撫でる。


 「それにもう……」


 静かに、囁く。


 「リリーは俺にとって、世界のすべてだから」


 「今さら、いなくなるなんて許さない」


 ルキウス様の瞳に捕らえられそうになる。


 (私だって......同じよ)


 応えるように、彼の裾をそっと摘む。


 「......ねぇ、ルキ様?」


 「なんだ?」


 「さっきのキス......あれでもう終わりですか?」


 ルキウス様が、ごくりと息を呑む。


 「今度は治療のためじゃなくて......ね?」


 そう言って見上げると、ルキウス様の瞳が揺れる。


 背中に腕が回される。


 逃げ道を塞ぐように、ゆっくりと。


 「……リリー」


 低い声が、すぐ近くで響く。


 吐息が頬に触れた。

 唇が触れそうな距離で――止まる。


 心臓がうるさい。


 「本当に君は……」


 呆れたように笑う声。

 けれどその瞳は、熱を帯びていた。


 次の瞬間。


 唇が重なった。


 最初は優しく。


 確かめるように。


 けれどすぐに、深くなる。


 角度を変えて、もう一度。


 吐息が混ざり合う。


 指が背中を引き寄せる。


 「……ん」


 息がこぼれ、身体の奥が、じんわり熱くなる。


 これはもう、癒しの力なんかじゃない。


 ただ――


 二人の想いが、重なっただけ。


 唇がゆっくり離れる。


 それでもルキウス様は、私を離さない。


 額が触れる距離で囁く。


 「……もう離さない」


 その声に、胸がぎゅっと締め付けられた。

 私はそっと、彼の胸に顔を埋める。


 今はただ、この腕の中にいたい。

次回、最終回!

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