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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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58、どんな未来も怖くない

 王妃が連れられると、その場には私とルキウス様だけが残った。


 王妃が連れられていく。

 扉が閉まり、部屋には静寂だけが残った。 


 私は静かに、ルキウス様を抱きしめる。


 「……頑張りましたね」


 「……リリー……!」


 ルキウス様が、力強く抱きしめ返してくる。


 「先程は驚いた......もう、危険なことはしないでくれ」


 「ごめんなさい。でも……止めなきゃって必死だったから」


 「そう……だな。ありがとう。止めてくれて」


 「ふふ。素直ですね?」


 「リリーには、敵わない」


 ルキウス様の頭が、私の肩に擦り寄せられる。


 「本当に、かわいい人ですね」


 「……そういう言い方は勘弁してくれ」


 そう言って、擦り寄っていた彼が離れる。


 「え? もっと来てくれないんですか?」


 「……まったく、君は……」


 そして再び、ルキウス様は私の肩に顔を埋める。


 甘えるように擦り寄る姿に、胸の奥がくすぐったくなる。


 ……なんというか、母性本能をくすぐられる。


 私はそっと、ルキウス様の頭を撫でた。


 「……ん」


 「ふふ。これからは、もう誰にも邪魔されませんね」


 「……ああ。もう絶対に離さない」


 「絶対ですよ?」


 二人で静かに抱きしめ合う。


 穏やかな時間だった。


 「……このまま、連れ去ってもいいか」


 「どちらに?」


 「俺の部屋だ」


 「ふふ、ルキ様ったら。甘えたりないんですか?」


 「……ああ」


 やけに素直で、より一層愛しさが増す。


 「いいですよ?」


 ――その時。


 遠くから足音が響いた。


 ……んー、良いところだったのに。


 「リリー!!」


 聞き慣れた声が廊下に響く。


 (お兄様だわ……)


 扉が勢いよく開かれ、人影がこちらへ駆け寄ってくる。


 目に入ったのは、お兄様と……セラフィナだった。


 「お兄様とセラフィナ様もいらしたのですね」


 「ああ。レオナード殿下から話は聞いていた。ルキウス殿下もいるし大丈夫だろうとは思っていたが……心配で待っていられなかったんだ」


 「まあ、お兄様……でも空気を読んでくださいよ」


 兄は目を丸くし、状況を理解したようだった。


 目の前には、私とルキウス様が抱きしめ合っている姿。


 兄はコホンと咳払いをする。


 「……人目を考えろ」


 「ええ?」


 するとセラフィナが、そっと歩み寄ってきた。


 「なにはともあれ、お二人とも無事でよかったですわ」


 その瞳には、わずかに涙が滲んでいる。


 (いつもすごく心配してくれる……)


 くすぐったいような気持ちになる。


 「リリアーナ様、少しこちらへ」


 私は頷き、ルキウス様の腕からそっと抜け出した。


 その時、ルキウス様が一瞬だけ――寂しそうな顔をした。


 そして次の瞬間。


 セラフィナに抱きしめられる。


 「えっ!?」


 兄の驚いた声が響く。


 心なしか、ルキウス様から黒いオーラが漂っているような気がした。


 突然のことに戸惑いながら、私は声をかける。


 「ええっと……セラフィナ様?」


 すると彼女は、私の耳元でそっと囁いた。


 「ふふ……これで、ようやく安心できました」


 優しく笑う声。

 けれど、その声音にはどこか安堵が滲んでいる。


 「リリアーナ様。実は、あなたにお伝えしたいことがあるんです」


 その言葉に、思わず瞬きをする。


 「私……一度、この未来を経験しているんです」


 「え?」


 思わず声が漏れる。


 セラフィナは小さく微笑んだ。


 「回帰、と言えば分かりやすいでしょうか」


 セラフィナは静かに息を吐く。


 「だから私は……ずっとルキウス殿下を警戒していました」


 少しだけ目を伏せる。


 「だって、あの未来では――」


 「殿下は誰も信じなくなっていましたから」


 胸が、どくんと鳴る。


 セラフィナは、あの未来を知っていた......?

 ルキウス様が絶望し、国を崩壊へ導く――あの結末を。


 その時の彼の気持ちを思うと......。

 思わずルキウス様を見る。

 何も知らないように立つその姿に、胸が苦しくなった。


 でも……原作のヒロインが、回帰者だったなんて。


 だけど、それで今までの違和感に説明がついた気がした。


 少し間を開け、彼女は続ける。


 「けれど、違ったんです」


 そして、もう一度私を見る。


 「本当に警戒すべきだったのは、殿下ではありませんでした」


 その瞳は、まっすぐだった。


 「リリアーナ様」


 「あなたが、未来を変えたんです」


 胸の奥が、どくんと鳴る。


 「ありがとうございます」


 柔らかく笑う。


 「これで……安心できます」


 「殿下と一緒なら、リリアーナ様も元気そうですし」


 そして、軽くウインクした。

 私も思わず、頬が緩む。


 「みんなで幸せになりましょう」


 自然とそう口にしていた。

 結局、これに尽きるのだ。


 私はセラフィナと微笑み合った。


 すると、すぐ近くから低い声が響く。


 「……そろそろリリーを返してくれ」


 いつのまにか近くまで来ていたルキウス様が、セラフィナを軽く睨んでいる。


 「もうルキ様ったら。そんな顔しないでください。私の一番はルキ様ですから」


 「……二番、三番でもいるのか」


 不機嫌オーラが漂う。


 でもそんな姿も、愛おしく思える。


 「そんな屁理屈言わないでください。あとでたくさん構ってあげますから」


 「……うん」


 先ほどまでの威圧感は消え、やけに素直だ。


 すると兄が、ぽつりと呟いた。


 「……なあ、俺たちはもう帰るか?」


 「あんなことがあったんですもの。私たちは帰りましょう」


 「まあ、無事なことを確認できたからいいか……」


 そんなやり取りがあったようだけれど。


 その頃にはもう、私の世界にはルキウス様しかいなかった。


 これで、同じ未来を歩める。


 ずっと一緒にいられる。


 そんな確信が胸に広がっていた。


 きっともう、どんな未来も怖くない。

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