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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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56/61

56、王妃との対峙

 翌日、私は再び王宮を訪れた。

 目的は、もちろん――ルキウス様のお見舞いだ。


 王宮の廊下を歩いていると、一人の影が私に近づいてきた。


 「あら、リリアーナ嬢じゃない」


 振り返ると、目に映るのは赤髪の女性――ヴァレリア・アウレリウス王妃。

 その姿は、まるで舞台に立つ女優のように優雅で、視線は鋭く、私をじっと見据えていた。


 (やっぱり……来たわね)


 ルキウス様が倒れたと聞けば、必ず動くと思っていた。


 「……ごきげんよう」


 私は感情を表に出さぬよう、静かに一礼した。


 「今日はルキウスのお見舞いに?」


 「はい」


 「あのような状態になって、さぞ心配でしょうね……」


 王妃の声は優しい。

 けれど、その口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。


 「一刻も早く回復することを祈っています」


 私がそう答えると、王妃の笑みがさらに深くなる。


 「それは……難しいんじゃないかしら」


 「……どういう意味ですか」


 王妃はくすりと笑った。


 「ふふ、毒の種類が厄介らしいわよ? 王族で耐性があると言っても、じわじわ蝕まれているはず」


 胸の奥がきゅっと痛む。


 でも――。


 (……信じるしかない)


 ルキウス様は、大丈夫だと言っていた。


 ぎゅっと拳を握る。


 「それにしても」


 王妃は一歩近づき、顔を傾けて私を覗き込んだ。


 「二人は仲違いしたと思っていたのだけれど……どうやら違うみたいね?」


 唇の端が愉快そうに歪む。


 「でも……残念」


 王妃は、にこりと微笑んだ。


 「ルキウスは死ぬわ」


 その声には、確信があった。


 まるで、すでに未来が決まっているとでも言うように。


 「……嬉しそうですね」


 私がそう言うと、王妃は目を丸くする。


 「あらあら……!」


 楽しげな声を上げた。


 「本当なら侮辱罪で訴えてもいいのだけれど......今は気分がいいから許してあげる」


 手にしていた扇子が、そっと私の顎を持ち上げる。

 挑発の意図は明らかだった。


 「あなたは、何度も私の提案を無下にしてきた......本当は怒っているのよ?」


 顎がさらに持ち上げられる。


 「でも、いいわ」


 王妃はうっとりとした目で私を見る。


 「あなたのそんな顔が見られたのだから」


 そして、くすくすと笑った。


 「ルキウスが死ぬとき、さぞ美しい表情を見せてくれるのでしょうね」


 原作を読んだ時は、単に王位継承権のためにルキウス様が邪魔なだけだと思っていた。


 だけど、違う。

 それだけじゃない。


 王妃は――人の命を、楽しんでいる。


 やはり、この人は狂っている。


 だけど。


 残念ね。


 あなたの思い通りにはいかない。


 私は口元をわずかに緩め、ふっと微笑んだ。


 王妃の眉がぴくりと歪む。


 「……何よ。余裕そうね」


 「あなたは、私が絶望することを望んでいるようですが……残念」


 私はゆっくり顔を上げた。


 そして、まっすぐ王妃を見据える。


 「そうはなりません」


 折れる気配のない私を見て、王妃は不満そうに腕を組んだ。

 指先は腕をトントンと叩く。


 その時だった。


 廊下の奥から、ゆっくりと足音が近づいてくる。


 (……来るわ)


 足音は王妃のすぐ後ろで止まった。


 そして――肩をぽん、と叩く音。


 「王妃、そこまでです」


 振り返った王妃の目が大きく見開かれた。


  王妃が勢いよく振り返る。


 「……ルキウス……!」


 目が大きく見開かれていた。


 「なぜ、ここにいるのかしら」


 その表情から、余裕が消えている。


 王妃の世界が、今この瞬間崩れたのだと、私ははっきりとわかった。


 「もう、あなたの思い通りにはいかないのですよ」


 ルキウス様の声は穏やかだった。


 けれど、その瞳は鋭い。


 王妃を真っ直ぐ射抜いている。


 「俺に毒は――効かない」


 その姿は、少しも弱っているようには見えなかった。


 「あなたが尻尾を出したおかげで、証拠は揃った」


 堂々としたその姿に、王妃の顔がわずかに歪んだ。


 ルキウス様は、挑発するように微笑む。


 「もう、おしまいなんですよ」


 低く、静かな声。


 「ヴァレリア王妃」


 その言葉は、王宮の廊下に重く響き渡った。

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