47、私は決めたの
目を開けると、見慣れた天井が視界に入った。
――私の、自室。
以前も、こうして話の途中でルキウス様に飛ばされたことがある。
(……もう少し、話したかったな)
そう思った、その時。
ふと、棚の上に置いたままの小箱が目に留まった。
(あれは……)
ゆっくりと立ち上がり、箱を手に取る。
蓋を開けると、金色の石があしらわれたカフスが姿を現した。
体調が安定していた、あの頃。
ひとりで街に出て、ルキウス様に渡そうと選んだもの。
ウス様が反応しているのかもしれない。
――けれど、帰り道で強盗に襲われて。
結局、渡せないままになってしまった。
金の石を、指先でそっとなぞる。
胸の奥が、静かに痛んだ。
「……」
深く息を吐く。
確かに、今回は最後まで話すことができなかった。
けれど――。
思い返せば、ルキウス様は明らかに動揺していた。
私の体調や言葉に、反応していた。
……自惚れかもしれない。
それでも。
拒絶されるかもしれない。
でも、伝えずに後悔するより、伝えて後悔する方がいい。
私は、ずっと逃げていた。
癒しの異能を求めて近づいたこと。
結果的に、彼を縛るような関係になってしまったかもしれないこと。
そして、今更好きだなんて言えないと、自分を責めていた。
――でも。
このままでいいはずがない。
ルキウス様だって、苦しそうだった。
真実を知ったうえで、判断してもらうべきだ。
その結果、彼に拒絶されるとしても。
私は、箱を静かに閉じた。
決めた。
ルキウス様に、話そう。
あなたのことを、ずっと想って、待っていましたって。
***
王宮の一室。
窓辺にもたれかかり、金髪の青年は腕を組んでいた。
レオナード・アウレリウス第一王子は、指先で腕を規則正しく叩きながら、先ほどの光景を思い返していた。
――確かに見た。
リリアーナ嬢とルキウスが、目の前で消えた瞬間を。
「……やはり、あれは王家の異能か」
二人が婚約していた頃。
病弱だったはずのリリアーナ嬢は、舞踏会でも驚くほど安定した様子を見せていた。
そして婚約破棄。
その後、ルキウスが戦地へ向かうと――
彼女の体調は、再び不安定になっている。
偶然で済ませるには、出来すぎている。
「癒し……と移動? いや、それ以上の可能性もあるな」
そして、おそらく。
その事実を、リリアーナ嬢自身は知っている。
レオナードは小さく息を吐いた。
「……さて」
王位を継ぐために、努力を重ねてきた。
だからこそ、見過ごすわけにはいかない。
――ルキウスと、一度きちんと話をする必要がありそうだ。
次回、ルキウス視点!




