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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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46、もっと話したかったのに

 ルキウス様から拒絶の言葉を浴びて、私はその場から動けずにいた。


 ――泣いちゃ、だめ。


 目の奥が熱を帯びる。けれど、歯を食いしばって堪えた。


 「だが驚いたよ。君を調べてみれば、俺と婚約関係にあったとはな」


 思わず、顔を上げてしまう。


 「しかも、すぐに破棄している。……それで今は兄上の隣だ。さて、どういう意味だ?」


 「そ、それは……誤解です……!」


 「誤解? 今も、あんなふうに心配そうに見ている。違うと?」


 言葉が喉に詰まった。


 ――違う。違うのに。


 今のルキウス様には、記憶がない。

 彼が集めた事実だけを並べれば、私は――

 彼を踏み台にして、王太子に取り入った女に見えてもおかしくない。


 (そんなつもり、ないのに……)


 向けられる視線は冷たく、温度がなかった。

 私の知っているルキウス様じゃ、ない。


 「……黙るのか? なら、認めたということだな」


 畳みかけるような言葉が、胸に突き刺さる。


 信じてもらえない。

 それが、こんなにも苦しいなんて――。


 (……息が、できない)


 ふいに、視界に影が落ちた。


 「――ルキウス。そこまでにしないか」


 「……兄上」


 「彼女が辛そうだ」


 「は。ヒーローの登場ですか。言われなくとも、退きますよ」


 その瞬間、足元がぐらりと揺れた。


 力が抜け、身体が前に傾く。


 (あ、倒――)


 次の瞬間、強い腕に身体を支えられた。


 顔を上げると、漆黒の髪。

 至近距離で見る彼の表情は――一瞬、確かに焦っていた。


 「ル、ルキウス様……」


 名前を呼んだ、その瞬間。


 世界が大きく歪み、引きずられる感覚に襲われる。


 (……まさか)


 次の瞬間、私とルキウス様の姿は、その場から消えていた。


 残されたレオナード殿下は、呆然と立ち尽くし――

 やがて、低く呟く。


 「……消えた? ルキウス……まさか……」




 ***




 引き裂かれるような感覚が収まり、暖かな力が全身を巡る。


 重かった身体が嘘のように軽くなり、私はゆっくりと目を開けた。


 見覚えのある部屋。

 ――ルキウス様の、私室。


 「……ルキウス様?」


 呼びかけても、返事はない。


 彼は、呆然としたまま立ち尽くしていた。

 倒れかけた私を支えたまま、ここへ来たのだろう。

 今も、その腕に抱えられている。


 二人の間に、重たい沈黙が落ちた。


 やがて、ルキウス様がはっと我に返り、私から手を離す。


 「……俺は……」


 言葉を探すように、眉を歪める。


 「……くそ」


 「君が倒れそうになると……考える前に、身体が動く」


 「もう関わらないと、決めたはずなのに」


 「で、でも……助けてくださって、ありがとうござ――」


 「やめろ」


 鋭い声に、言葉が途切れる。


 「そんな顔をするな。……頭が、おかしくなりそうだ」


 両手で頭を押さえ、苦しそうに息を吐く姿を見て、胸が締めつけられる。


 今の私に、彼のためにできることは――。


 「……どうして、君なんだ」


 虚ろな瞳で呟かれた言葉。


 今、言わなければ。

 この想いを。


 「私は……ずっと、ルキウス様を待っていました。それで――」


 言い切る前に、影が迫る。


 強く引き寄せられ、気づけば彼の腕の中だった。


 ――けれど。


 次の瞬間、突き放される。


 「ああ、くそ……! なぜ、こんな……!」


 吐き捨てるような声。


 そして再び、足元が揺らいだ。


 (……また……)


 彼の異能。


 引き離されながら、思う。


 本当は、もっと話したかった。

 誤解を、解きたかったのに――。



 部屋に残されたルキウスは、しばらくのあいだ動けずにいた。


 そして、ぽつりと一言。



 「………リリアーナ………?」

お読みいただきありがとうございます。

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