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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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43/61

43、俺と君は、何だった?

 パーティーが終わり、レオナード殿下と別れた。

 送ると言って聞かず、結局、公爵家の門前まで付き添われてしまった。


 (……やっと、一人だわ)


 自室へ戻った途端、張り詰めていた糸が切れる。

 そうでなくても病弱な身体だ。今日は、もう限界だった。


 侍女を呼ぼうと、呼び鈴へ手を伸ばした、その時。


 ――コツン。


 窓の方から、小さな音がした。


 (……え?)


 思わず身構える。

 次の瞬間。


 ――コンコン。


 はっきりと、ノックの音。


 恐る恐る窓辺へ近づき、そっとカーテンを引く。


 そこにいたのは――


 漆黒の髪に、黄金の瞳。


 「……ルキウス様……?」


 「突然、すまない」


 低く落ち着いた声。

 夢ではないと理解した途端、胸が強く脈打った。


 私は急いで窓を開け、彼を室内へ迎え入れる。


 二人きりの空間。

 沈黙が落ち、空気が張りつめた。


 先に口を開いたのは、ルキウス様だった。


 「……君は、リリアーナ・フランヴェールと言ったな」


 その距離感に、胸がちくりと痛む。

 もしかしたら――少しは思い出してくれたのでは。

 そんな淡い期待は、すぐに打ち砕かれた。


 「……はい。ですが、殿下はどうしてこちらへ?」


 「確かめたいことがある」


 「……確かめたい、こと?」


 短い沈黙。

 彼は一歩、こちらへ近づいた。


 「……名前を呼んでみてくれないか」


 「名前……?」


 「……ああ」


 戸惑いながらも、私は息を吸う。


 「……ルキウス様……」


 その瞬間。


 彼の瞳が、はっきりと揺れた。


 「……そうか」


 小さく息を吐き、彼は言う。


 「ありがとう」


 礼を言われる理由が、分からない。


 けれど、少し反応してもらえたような気がする。

 たったそれだけで、何故だか嬉しくなった。


 (本当に、重症ね……)


 自分で思っていたよりも、ルキウス様が大好きみたい。

 だからこそ今の状況が心苦しい。


 二人の間に再び沈黙が落ちた。


 「………」


 その直後だった。

 急に、視界が白く滲む。


 (……だめ……)


 足元が崩れ、身体が傾いた。


 次の瞬間、強い腕が私を抱き留める。


 「――危ない」


 同時に、身体の奥へ流れ込む、温かな感覚。


 懐かしい。

 忘れるはずがない。


 (……癒しの異能……)


 ゆっくりと目を開けると、すぐ傍に黄金の瞳があった。


 「……ありがとうございます」


 「……君は、この力を知っているのか?」


 「え……?」


 彼は、わずかに眉を寄せる。


 「無意識に使ってしまった。だが……君は驚かなかった」


 「それに――」


 視線が、私を射抜く。


 「この感覚を、俺は知っているような気がするんだ」


 胸が、ぎゅっと締めつけられる。


 ルキウス様は、私を覚えていない。

 それでも――身体は、覚えているとでも言うの……?


 「これは……偶然か? 俺は……君を知らないはずなのに」


 低く、戸惑いを滲ませた声。


 「君を見ていると、胸がざわつく」


 「理由も、名前も分からない感情が、離れない」


 一拍開けて、低く呟く。


 「……なぜだ」


 黄金の瞳が、逃げ場なく私を捉える。


 「教えろ、リリアーナ嬢」


 そして、静かに告げた。


 「――俺と、君は……何だった?」


 心臓が、大きく跳ねた。


 ――なんて、答えればいいの……?

次回、多分地獄です。

すみません。

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