表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/14

3、今見たことを誰かに話せば――命はないと思え

 思わず、ルキウス殿下に真っ直ぐ告白してしまった。

 本当は、もう少し慎重に言葉を選ぶつもりだったのに。

 彼の立場を気遣う言葉とか、寄り添う姿勢とか――そういうものを。


 なのに、口から飛び出したのは、あまりにも無防備で、無計画な告白だった。


 ぐるぐると後悔が渦巻く中、鋭い視線が突き刺さる。



 「――何が、目的だ」


 低く、冷えた声。


 「も、目的などございません……! 心からの、本心です!」


 「おかしいな。君とは、それほど関わりがなかったはずだが」


 図星だった。

 胸がきゅっと縮む。


 ――でも、もう引き返せない。



 「......顔、です」


 「――は?」


 「殿下の……お顔が、とても好みなのでございます。ずっと見ていたいくらいに……!」



 言い切った瞬間、頭の中が真っ白になった。


 (……私、今なにを言った……?)


 勢いに任せすぎた自覚と同時に、視界がふらりと揺れる。

 足元から力が抜け、身体が前に傾いた。


 ――あ、だめ。


 そう思った次の瞬間、誰かの腕に支えられる。


 (……殿下?)


 ぼんやりと考えながら、意識が遠のいた。




 ***



 倒れ込んできた身体を、ルキウスは反射的に受け止めていた。


 「――チッ」


 小さく舌打ちが漏れる。


 (......なんなのだ、この女は)


 告白の言葉が嘘であることくらい、すぐにわかった。

 けれど――悪意がない。


 それどころか、切羽詰まった必死さが、痛いほど伝わってくる。


 誰にも必要とされず、信じられずに生きてきた彼にとって、

 それはあまりにも異質だった。


 だからだろうか。

 思わず、彼女を支えていたのは。


 その時、バルコニーの向こうから声が響く。


 「リリー! どこにいるんだ? ……あれ、ここか?」


 足音が近づいてくる。


 (......まずいな)


 腕の中の少女は、意識が朦朧としている。

 起き上がれそうにない。


 公爵令嬢と、忌み嫌われる“無能王子”。

 この状況を見られれば、面倒な噂が立つ。


 ――時間がない。


 誰にも知られてはならない力。

 生き延びるために、封じ続けてきた異能。


 ルキウスは意識を集中させ、手のひらに力を込めた。


 祈りにも似た、だがどこか異質な暖かな光が溢れ、リリアーナの身体を包み込む。


 やがて、彼女の瞼がゆっくりと持ち上がった。



 「……え……? 殿下……今のは……」


 「今、見たことを誰かに話したら――その覚悟はあるな」


 低く、冷たい声。


 リリアーナはびくりと肩を震わせ、それでも小さく頷いた。


 (……でも)


 胸の奥が、確かに楽になっている。


 (癒してくれた……)


 その事実に気づいた瞬間、足音がすぐ背後まで迫った。


 「リリー! ここにいたんだな!」


 兄――シアンが駆け寄ってくる。

 彼は、ルキウスの姿を認めると、一瞬だけ表情を引き締めた。


 「……殿下と、ご一緒でしたか」


 穏やかな口調の裏に、明確な警戒。


 ルキウスは無表情に戻り、淡々と告げる。


 「……話は終わった」


 そう言い残し、踵を返す。


 シアンはリリアーナに歩み寄り、そっと耳打ちした。


 「大丈夫だったか? 何か、されていないか?」


 心からの心配が滲む声。


 リリアーナは、はっきりと顔を上げた。


 「心配しないで、お兄さま。殿下は――優しくて、素敵な方よ」


 その言葉に。


 背を向けたままのルキウスが、ほんの一瞬だけ、足を止めたことを――

 リリアーナは、まだ知らない。

ブクマ、評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ