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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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27/61

27、現れたのは、第一王子

 金髪に金眼。

 凛とした佇まいに、背筋の伸びた立ち姿。


 ――レオナード・アウレリウス第一王子。


 正義感に溢れ、原作でも正統派として描かれていた人物だ。

 誰に対しても公平で、誠実で、王子という立場に甘えない。


 ……そんな彼が、今この場にいる。


 王妃の突然のお茶会に呼ばれ、何の疑問も抱かずに現れるだなんて。

 いくら母の命令とはいえ、私は今も――ルキウス様の婚約者なのに。


 (少しは、疑問に思わなかったのかしら……)


 胸の奥に、ちくりとした棘のような感情が刺さる。


 けれど、レオナード殿下は、私をじっと見つめたあと、困ったように眉を下げて微笑んだ。


 「……すまない」


 「え……?」


 唐突な謝罪に、思わず目を瞬かせる。


 「言い訳に聞こえるかもしれないけれど、知らなかったんだ。母上からは、会ってほしい令嬢がいるとしか聞かされていなくて」


 そう前置きしてから、殿下は静かに言葉を続けた。


 「来てみれば……君が。相手がルキウスの婚約者だったとはね」


 「そんな顔をさせてしまうのも当然だ。本当に、すまなかった」


 ――この人は、最初から何も知らされていなかったのだ。


 その事実に気づいた瞬間、胸に溜まっていたわだかまりが、すっと形を変えた。


 王妃に振り回されているのは、私とルキウス様だけではない。

 この人もまた、その一人なのだ。


 私は慌てて姿勢を正し、深く一礼する。


 「いえ……こちらこそ、事情も知らずに失礼なことを考えてしまいました」


 「気にしないでくれ。僕の方こそ、配慮が足りなかった」


 そう言ってから、殿下は少し間を置き、柔らかく笑う。


 「でも、せっかくだ。少し話さないか?」


 本当はすぐにでもこの場を離れたかった。

 こんな場面、他の人に見られたら誤解されかねない。

 だけど、王族にそう言われてしまえば、断るという選択肢はない。


 「……はい」


 短く答えた私に、殿下は穏やかな声で問いかけてきた。


 「でも、母上からね、もうすぐ君たちは婚約破棄するかもしれない、とも聞いていたんだ」


 視線が、真っ直ぐに向けられる。


 「実際のところは……どうなんだい?」


 胸の奥が、きゅっと締めつけられた。


 正直、返答に困る。

 王妃に言われなくても、私は――ルキウス様とこれ以上一緒にいるべきではないと思っている。


 けれど、ここで頷いてしまえば。

 まるで王妃の思惑通りに動いているようで、どうしても納得がいかなかった。


 これは、誰かに決められたことじゃない。

 あくまで、私自身の意志の問題なのだ。


 「……ええと、その……」


 言葉に詰まった私を見て、レオナード殿下は一瞬だけ目を見開き、すぐに表情を和らげた。


 「すまない。答えにくいことを聞いたね」


 「いえ……」


 「でも、そうか……」


 殿下は小さく息を吐き、どこか納得したように呟く。


 「なんとなく、母上の思惑が見えてきたよ」


 「殿下……?」


 「いや、こちらの話だ。気にしないでくれ」


 そう前置きしてから、殿下は穏やかな声で続けた。


 「ただ……また僕たちは、会うことになるかもしれない」


 「え……?」


 その言葉の意味を問い返すより先に。


 背後から、低く、冷えた声が落ちてきた。


 「――ここで、何をしているんだ?」


 空気が、一瞬で凍りつく。


 振り返った先に立っていたのは――ルキウス様だった。


 険しい表情。

 感情を押し殺したような眼差し。


 その周囲には、黒い靄のような気配さえ漂っているように見えた。


 よりによって、レオナード殿下と一緒にいるところを見られたのは。

 一番、誤解されたくない相手だった。


 (最悪の展開だわ......)


 血の気が引くとは、このことなのだろう。

 喉がひくりと鳴って、声が出なかった。

地雷踏みましたね、リリアーナ。

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