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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ
本編

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19/61

19、もう離れない?

 今日は、ルキウス様と客間でティータイムを過ごしていた。

 柔らかなソファーに並んで腰を下ろし、二人の距離はほとんどない。


 (ち、近い......)


 肩が触れ合い、息遣いまで伝わってきそうで。こちらの心臓の音も、ばれてしまいそうだった。


 ルキウス様は昨日も公爵家を訪れてくれた。

 それなのに、今日もまた、こうしてここにいる。


 「昨日も来てくださったのに……お疲れではありませんか?」


 「......そんなことは、ない」


 素っ気ない返事。

 けれど、その声はどこか柔らかかった。


 「昨日、癒していただきましたし……今日は調子もいいです。無理をなさらなくても――」


 言いかけた私の言葉を遮るように。


 「……迷惑だったか?」


 不意に、縋るような金色の瞳が向けられる。


 胸が、きゅっと縮んだ。


 「そ、そんなことありません……!」


 慌てて否定すると、ルキウス様はほっとしたように、小さく息を吐いた。


 「……よかった」


 そのまま彼は身を預けるように身体を横にし、

 気づけば、私の膝の上にその頭が載せられていた。


 「ル、ルキウス様......」


 「……王城は、相変わらず息が詰まるんだ」


 ぽつりと落とされた言葉。

 

 胸が締めつけられるのと同時に、ひどく、矛盾した感情が湧き上がる。


 ――喜んでしまったのだ。


 以前より、確実に寄りかかられている。

 その事実が、どうしようもなく嬉しかった。


 そのように、今まで行動し言葉を選んできた自覚もあった。


 (……これで、もう……離れない?)


 私はそっと、彼の髪に指を通す。

 撫でられる感触に、ルキウス様は静かに目を閉じた。


  ……けれど。


 指先が、一瞬だけ止まる。


 (このままで......いいのかな......)


 胸の奥に、ちくりとした痛み。

 ――私は、彼を利用している。


 それでも。


 それでも、私は死にたくない。

 生きたい。長く、生きていたい。


 それに、彼の支えになっているのなら……

 それで、いいのではないだろうか。


 ――まるで、自分に言い聞かせるみたいに。


 そのとき、ルキウス様が不安そうに見上げてくる。


 「......リリアーナ?」

 

 「......少し、疲れてしまったのかもしれません」


 咄嗟に、そんな嘘をついた。


 次の瞬間。


 「それは、大変だ」


 彼は勢いよく起き上がり、私の手を取る。

 そして、額にそっと唇が触れた。


 温かい感触とともに、

 ――いつもの力が、流れ込んでくる。


 触れ合う距離が近いせいか、

 ただ手を繋ぐときよりも、強い。

 

 (……本当は、疲れてなんていないのに)


 それでも、心がふっと軽くなる。


 ルキウス様は躊躇うことなく、力を使ってくれる。

 それが、当たり前みたいに。


 彼はゆっくりと身体を離し、私の顔を覗き込む。


 「体調は、戻ったか?」


 「はい……ルキウス様のおかげです」


 「......そうか」


 安堵した表情を浮かべた彼は、再び私の膝へと身を預けた。

 今日は、どうやらここが定位置らしい。


 (......やっぱり、かわいいな)


 素直に、そう思ってしまう。

 もっと、いろんな表情を見てみたい。


 私は再び彼の頭を撫でる。

 ルキウス様は安心したように、目を閉じた。


 「......ここは、落ち着く」


 「私も……ルキウス様といると、落ち着きます」


 「帰らなきゃ……だめか?」


 「......まだ、婚前です」


 視線が絡み、思わず笑い合う。


 穏やかで、優しい空気。


 ――きっと、これは、しあわせの時間。

歪みが……

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