表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/18

17、嘘だと分かっているはずなのに(sideルキウス)

 最初は、ただ監視をするためだった。


 ――リリアーナ・フランヴェール公爵令嬢。

 必要に迫られ、彼女の前で癒しの異能を使ってしまった。

 本来なら、この力は誰にも見せるつもりのなかったものだ。


 俺は、これまで幾度となく命を狙われてきた。

 始まりは、第一王子レオナードよりも才覚がある――そんな噂が立ったことだった。


 王妃が危機感を抱くのに、十分すぎる理由だった。


 やがて、二つ目の異能が目覚めた。

 本来、王家の異能を持つ者は、王位を継ぐ資格を持つ。

 それほどまでに、重く、価値のある力だ。


 だが、俺には後ろ盾がない。


 もし、この力の存在を知られたら――。


 (……今度こそ、殺される)


 背筋を冷たいものが走った。

 俺は生きるために、選ばなければならなかった。


 この力を隠すことを。

 そして、生き残るために――演じることを。


 無能王子を。


 それは、想像以上に容易だった。

 無気力を装い、才を隠し、期待に応えない。


 王妃は満足したように、暗殺の手を緩めた。

 世間はレオナードを称賛し、代わりに俺を嘲笑した。


 だが、それでよかった。

 生きてさえいられれば、それで。


 第二王子として、衣食住は保証されている。

 死ぬより、遥かにましだった。


 ――そう、思っていた。


 リリアーナと出会うまでは。


 彼女は、息をするように「好きだ」と口にした。

 あまりにも自然で、あまりにも軽く。


 当然、嘘だと思った。

 真意がわからない。

 それに、不本意とはいえ、癒しの異能を見られてしまった。


 力を知られた以上、自由にされるのは危険だ。

 ならば、いっそ手元に置くほうがいい。


 そう判断して、婚約を結んだ。


 ……ただ、それだけのはずだった。


 だが、彼女はあまりにも身体が弱かった。


 会うたびに、苦しそうに息をし、顔色を失う。

 見て見ぬふりができず、癒しの異能を使った。


 最初は、ただ放っておけなかっただけだ。


 けれど、関わる時間が増えるにつれ、彼女の人となりが見えてきた。

 閉ざされた世界で、孤独を抱えて生きてきたことも。


 ……俺と、どこか似ている気がした。


 それは、勝手な親近感だったはずなのに。


 いつの間にか、使命感のようなものが芽生えていた。

 共に時間を過ごすことに、居心地の良さも感じていた。

 だから、柄にもないことを言ってしまったのかもしれない。


 「俺は......案外、君のことが気に入っているらしい」


 口にしてから、自分で驚いた。

 こんな言葉を、俺が言う日が来るとは思わなかった。


 誰にも必要とされず、無能王子と蔑まれてきた俺の力が、

 彼女の命を、日常を、確かに支えている。


 彼女にとって俺は必要なのだと――

 そう錯覚するほどに。


 気づけば、癒しの異能を使うことは苦痛ではなくなっていた。

 むしろ、それが自分の役割なのだと、思ってしまうほどに。


 そんな彼女は、今日も平然と、俺の心を揺らす言葉を口にする。


 (……本当は、好きでもないくせに)


 そう、線を引いているつもりだった。


 それなのに――。


 「すきです……!」

 「一緒にいてください……!」


 嘘だ。

 わかっている。


 彼女に必要なのは、俺ではなく、この力なのだろう。


 それでも。

 婚約を破棄しても構わないと告げた俺に、必死に縋ろうとする姿を見て――。


 ……騙されてもいい、そう思ってしまった。


 彼女の言葉が嘘でもいい。

 俺が必要だという事実さえあれば。


 (……それで、よくないか)


 気づけば、俺自身も囚われていた。

 彼女を救っているつもりで、

 実のところ、救われていたのは――俺のほうだったのかもしれない。


 必要とされること。

 それだけで、心が満たされていく。


 だから、俺は答えてしまった。


 「……ああ」


 その瞬間、理解した。


 もう、戻れない。

どんどんおかしな方向に……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ