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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ


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11/15

11、ヒロインの登場!?

 あっという間に、私とルキウス様との婚約披露パーティーの日を迎えた。


 朝、ルキウス様が屋敷まで迎えに来てくれた。

 黒を基調とした正装に身を包み、胸元には桃色と水色の花が添えられている。


 (もしかして、私の髪と瞳の色……?)

 

 そう思ってしまった自分に、思わず頬が熱くなった。

 今日はいつも以上に、彼が眩しく見える。


 悪役とはいえ、王子で、物語の主要人物。

 何より……とても整った顔立ちをしている。

 

 初めて会った日に、勢いで「顔が好み」なんて告白してしまったけれど、

 あれは決して嘘ではなかった。


 (……本当に、かっこいい)


 ルキウス様はゆっくりと歩み寄り、私と視線を合わせる。


 「昨日は、ちゃんと休めたか?」


 「はい。おかげさまで」


 「今日は長くなる。リリアーナが倒れないよう、こまめに力は送る。だから――」


 一瞬、言葉を選ぶように間を置いてから。


 「……俺のそばを離れるな。今日は一日、ずっと一緒だ」


 そう言って、そっと手を取られる。

 真っ直ぐな視線に、心臓が大きく跳ねた。


 (これも……きっと、顔が良すぎるせいね)


 自分に言い訳をするように、私はその手を、ぎゅっと握り返した。


 ***



 会場に足を踏み入れると、煌びやかなシャンデリアが視界いっぱいに広がった。

 人々のざわめきと音楽が混じり合い、胸が自然と高鳴る。


 (いよいよ、始まるのね)


 息を整えた瞬間、ルキウス様と目が合った。

 彼の存在だけで、なぜか心が落ち着く。


 「......行こうか」


 「はい、ルキウス様」


 扉が開かれ、エスコートされながら、階段をゆっくりと降りていく。

 視線の先には、すでに多くの貴族たちが集まっていた。


 階段の下で待っていたのは、二人。


 赤髪の女性と、金髪の青年――

 ヴァレリア王妃と、第一王子レオナード・アウレリウス殿下。


 「二人とも今日はおめでとう」


 王妃は柔らかく微笑む。

 けれど、その笑顔の奥には、何も映っていないように見えた。


 続いて、レオナード殿下が一歩前に出る。


 「ルキウス、婚約おめでとう。リリアーナ嬢も。今日はお会いできて光栄だ」


 爽やかで、完璧な笑顔。

 人々から慕われるのも頷ける。


 ――けれど。


 この人と比べられ続け、ルキウス様がどれほど傷ついてきたのかを思うと、胸の奥が、じくりと痛んだ。

 それに、彼の苦しみの元凶である王妃......。

 自ら、無能王子を演じて、選んだ道とはいえ、何も感じないはずはないのだから。


 思わず、手に力が入る。

 それでも、今は敵対してはいけない。


 私はそっと微笑み、丁寧に一礼する。

 

 「光栄ですわ。本日はありがとうございます」


 「......感謝する」


 対照的に、ルキウス様の返答は短い。

 その声音には、隠しきれない警戒が滲んでいた。


 「もう、ルキウスったら。今日くらい笑顔でいなさいな。怖いわよ?」


 「努力します」


 「......ふふ、相変わらずね」


 王妃は満足そうに微笑んだ。

 これまで、こうして生き延びてきたのだろう。


 ――せめて、私だけは。


 (ずっと......味方でいたい)


 そっと、ルキウス様の袖を掴む。


 

 「では、失礼します」


 返事を待たず、彼は私の手を引いてその場を離れた。


 「……私は、ずっと一緒にいますから」


 小さくそう告げると、


 「……ああ」


 振り返らないまま返された声は、ひどく優しかった。



 その時だった。


 会場のざわめきが、ふっと色を変える。

 

 「珍しいわね……」

 「辺境伯領にいらっしゃるはずでは?」

 「相変わらず、お美しい……」


 ひそひそと交わされる声。


 (……え?)


 胸が嫌な音を立てて鳴る。

 人々の声に、一人の人物が思い浮かぶ。


 ”セラフィナ”......?


 ――そんなはず、ない。

 彼女が王都に現れるのは、私が死んだ後。五年後のはず。

 


 視線の先に立っていたのは、


 銀色の髪に、意志の強そうな紅い瞳。


 間違えようがない。

 セラフィナ・ヴァレンシュタイン辺境伯令嬢。


 ――原作のヒロイン。


 どうして、ここに?


 理解が追いつかないまま、

 胸の奥に、冷たい不安が静かに広がっていった。

物語が動いてゆく……

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