表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

10、安心するのに、落ち着かない

 湖の美しさに、心が洗われるようだった。

 ふと、隣に立つルキウス様へ、視線を移す。


 彼はまっすぐ前を見つめていた。

 その横顔は、静かで――どこまでも真剣で、揺るぎがない。


 ――どくん。


 胸の奥で、心臓が強く跳ねた。


 (......え?)


 なに、今の……?


 理由も分からないまま、視線だけが彼から離れなくなる。

 まるで、引き寄せられるみたいに。


 その視線に気づいたのか、ルキウス様がゆっくりと顔を向けた。


 「……どうした?」


 「え、ええっと......」



 その穏やかな表情に、ぶわりと熱が込み上げる。

 頬だけじゃない。耳まで、じんじんと熱い。


 (まって……急に、どうしたの、私……)


 ルキウス様は一歩近づき、私の前に屈み込む。


 「......体調が、悪いのか」


 そう言って、手をそっと包まれる。

 大きいのに、暖かくて。優しくて。


 いつもは安心するあたたかな光、今日は......安心するのに、なぜだか落ち着かなくて。

 でも、全然嫌じゃなかった。


 ずっと、このままこうしていたい。


 ……そんなことを願ってしまう自分に、少しだけ、胸が痛む。

 ルキウス様を利用している。その事実が、静かに心を刺していた。




 ***



 その後も、少し二人で湖を眺めながら、穏やかな時間を過ごしていた。


 「……そろそろ戻ろうか」


 体調を気遣うその言葉に頷き、屋敷へと戻る。


 「リリーーーっ!」


 馬車を降りた瞬間、勢いよく抱きつかれた。

 ――兄だった。


 「大丈夫か? 気分は悪くないか? 怪我は?」


 両肩を掴まれ、念入りに確認される。


 「もう、お兄様......大丈夫よ」


 「シアン殿も心配をかけたな。だが、外出中は常に体調に変化がないか目を配っていた。安心して欲しい」


 「殿下......! 妹をありがとうございます......!」


 兄が深く頭を下げる。


 ルキウス様は、驚いたように目を見開いたまま、しばらく動けずにいた。


 それもそうか。彼はまっすぐに、好意を向けられたことなんて......なかったはずだから。


 「......本当に、いい兄妹だな」


 ぽつりと呟かれたその声には、羨望とも、諦めともつかない響きが滲んでいた。



 ***



 ルキウス様に見送られ、兄と二人きりになる。


 「殿下と出会ってから、調子が良さそうだな」


 「恋のパワーは偉大なのよ」


 「……嬉しいけど、少し複雑だ」


 「ふふっ」


 思わず、笑みが溢れる。


 「でも、リリーのそんな顔を見られたから殿下には感謝だな」


 そして、兄は優しい笑顔を向け、私の頭をポンポンと撫でる。


 「それにもうすぐ、二人の婚約披露パーティーもある。今日はゆっくり休んで」


 「ありがとう、お兄様」



 そう言葉を残して、兄は部屋を後にする。


 ……そうなのだ。

 もうすぐ、私とルキウス様の婚約披露パーティーが行われる。


 王妃とのお茶会は、何事もなく終わった。

 でも、今回は……どうだろう。


 今のところ、王妃には警戒されている様子は感じられないし……大丈夫よね?


 それよりも、今回のパーティーは、いつもの様に途中離脱する訳にはいかない。

 私とルキウス様が主役なのだから。



 でも、きっと優しいルキウス様は、こっそり癒しの力を使ってくれるのでしょうね。



 「ふふっ」



 想像するだけで、心があたたかくなった。

 不安と期待が入り混じる中で、パーティーは、静かに近づいていた。

ブクマ、評価よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ