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病弱令嬢は、死にたくないので闇堕ち王子を甘やかします!  作者: ゆにみ


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1、病弱令嬢は死にたくない

 私は、生まれつき身体が弱かった。


 「……はぁ……っ」


 ベッドの上で上体を起こしただけで、視界が揺れる。

 喉の奥が熱を帯び、咳がこぼれそうになるのを、リリアーナは必死に堪えた。



 「……また、熱を出したのね……」



 ――慣れている。

 この身体で生きてきたのだから。


 淡い桃色の髪に碧眼を持つ公爵令嬢、リリアーナ・フランヴェール。

 名門中の名門に生まれながら、重度の病弱体質を持つ少女。

 

 それでも、いつか普通の生活を送れることを夢見て、リリアーナは諦めなかった。


 体力の許す限り、勉学に励み、貴族令嬢として必要なマナーを身につけた。

 病弱だからって、足元を見られないように。

 いつかは、自分の足で立って、自由に世界をみるの。



 だけど現実は残酷だった。



 この日もいつものティータイム。

 体に良いというバーブティーを嗜んでいた。



 「……っ!」


 その瞬間、頭痛が走る。

 頭の奥で、何かが弾けた。


 知らないはずの記憶が、洪水のように流れ込んでくる。


 文字。

 物語。

 誰かが書いた「小説」。



 断片的な情報が、一本の線で繋がる。


 ――理解してしまった。


 ここは、私が前世で読んでいた物語の世界。

 そして私は、その中で若くして病死する、

 “男主人公の妹”という役割。



 「…………え?」



 喉が、ひくりと引きつった。


 そんな。

 そんなはずがない。



 だって私は――

 まだ、何も成し遂げていないのに。



 思わず手に持っていたティーカップを地面に落としてしまった。



 (私、死ぬの……?)



 疑問の形をしているのに、胸の奥では、すでに答えが分かっていた。


 余命五年。


 「……やだ」


 小さく、震える声がこぼれる。


 「やだ……死にたくない……!」



 ――ガタッ。


 声が漏れたその時、向かいに座っていた人物が、勢いよく立ち上がる。



 「リリー!? 急にどうしたんだ」



 私と同じく淡い桃色の髪に碧眼を持つ年頃の青年――私の兄だ。

 そして、原作の男主人公でもあるシアン・フランヴェール。



 そして自分は――

 兄とヒロインが出会い、結ばれるためだけに用意された、“使い捨ての妹役”。


 病弱で、

 兄に心配をかけて、

 静かに息を引き取る。

 それだけ、それ以上は物語に出てこない。


 その死が、兄の心に傷を残し、ヒロインのセラフィナがそれを癒す。



 身体がふわりと急に持ち上がる。

 兄が私を抱き抱え、走っているようだった。



 だけど、私は混乱でそれどころではなかった。



 待って。

 本当に、待って……?


 思考が追いつかない。


 (私、死ぬの……? しかも、もう確定ルート……?)



 余命五年。

 指折り数えられるほどの時間。



 「えぇ......!? やだっ、死にたくないわ......!」


 「リリー大丈夫だ! 今、お兄ちゃんがなんとかするから!! 頼むから、そんなこと言わないでくれ!!」



 兄の叫び声は、全く耳に入っていなかった。




 ***



 


 死にたくないと呟き続けた私は、驚いた兄に抱き抱えられ、自室のベッドに運ばれる。


 医者を呼ばれたり、慰めの言葉をかけられたり、とにかくすごかった。


 「リリー……! 大丈夫だからな……!」


 「お兄様、大丈夫よ。急にごめんなさい。夢の内容を思い出してしまっただけだから」


 「大変だ……! 悪夢がリリーを襲うなんて……!」


 体調を崩したと勘違いした兄を宥めるのは大変だった。


 だけどなんとか兄を宥めて、部屋から出てもらった。


 「……ふう」



 冷静になったのか、思わず息が漏れる。


 その時、もう一人の人物の存在が浮かび上がった。


 ――ルキウス・アウレリウス。


 原作に登場する、第二王子。

 妾腹で、無能と蔑まれ、

 やがて王国を崩壊に追い込む“悪役”。


 ヒロインに惹かれ、

 けれど選ばれず、

 絶望の末に闇堕ちする存在。


 (……でも)


 思い出す。


 彼が持っていた、二つの異能。


 すべてを壊す力と、

 本来は――人を救うはずだった力。


 癒しの異能。


 誰にも知られず、

 誰にも明かすことはなかった。

 彼自身さえ、その意味を見失った能力。


 リリアーナは、ゆっくりと拳を握った。


 (もし、あの力を……私のために、使ってもらえたら……?)



 塞がっていた視界に光が差し込む。

 息が、少しだけ楽になった気がした。



 「私、長生きできるかもしれない……!」




 ――そして私は、まだ知らなかった。



 この時の決断が、

 一人の王子の運命と、

 私自身の未来を、

 大きく書き換えることになるなんて。

新連載開始します!

毎日更新目指してがんばります!

完結済み作品も4作ございます。興味あればよろしくお願いします!

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