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普通という唄  作者: Setsu
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第1章「鏡の中のちがい」

朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、洗面台の鏡を白く染める。

 歯ブラシをくわえたまま鏡を見ると、そこにいる“自分”が少し他人に見えた。


 寝癖を手ぐしで直すたび、制服のリボンが視界に入る。

 どうしてだろう。

 この布切れひとつが、心の中で重たくのしかかってくる。


「結月、今日も髪かわいいじゃない」

 キッチンから母の声がした。

 トーストの香ばしい匂いと、テレビのワイドショーの笑い声が混ざる。

 母は、いつも明るい。

 芸能人の話を楽しそうにして、ドラマの俳優を見ては「この人ほんと男らしいよね」なんて言う。


「うん、そうだね」

 そう言って笑うのが、もうクセになっていた。

 本当は、その“男らしい”って言葉を聞くたびに、胸の奥がざわつく。

 自分が“どっち”なのか、わからなくなる。


 母の前では、笑っていなきゃいけない。

 違和感なんて見せたら、きっと「そんなこと考えすぎよ」って言われる。

 だから今日も、リボンを整えて、鏡に映る“女の子”を演じる。


 ――そう、演じるしかない。



 学校に着くと、廊下の向こうで志織の声がした。

「ねえねえ、聞いて! 昨日ね、あの子に告白したんだ」

 周りの子たちが「まじで?」「すごーい!」って笑いながら聞いてる。

 志織は、自分が女の子を好きだって隠してない。

 クラスの中でも、ちゃんと“志織らしさ”として受け入れられてる。


 それが、少し羨ましかった。


 志織が笑うたび、その笑顔がまぶしく見えた。

 私は、自分の気持ちを誰にも言えないまま、

 心の奥に小さな「違和感」を押し込めて、今日も過ごす。


 ……鏡に映る自分が、誰なのか。

 その答えは、まだ見つからないまま。

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