「プロローグ」あんたなんかいなくても
うまれて初めて作る二次創作が東方っていうのはなんか感慨深いねぇ
自由な創作・解釈をインターネットに許してくれたZUNさんに感謝
「おい霊夢! こいつは一体どういうことなんだ!?」
そう言って机の上に新聞を叩きつけてきたのは、久しぶりに見る顔だった。
自称『普通の魔法使い』霧雨魔理沙。物心がつく前から一緒に時を過ごしてきた親友でありながら、この幻想郷で私……『博麗の巫女』である博麗霊夢と互角に戦える数少ない存在。
そんな彼女がこの神社に来るのは別に不思議なことではない。だが、今回は「遊びに来た」とか「弾幕ごっこで勝負だ!」とか、ちょっとそういう感じではないらしい。
「久しぶりに来たかと思えば、何よいきなり。人ん家に土足で上がり込んだ挙げ句、その態度は無いんじゃないかしら?」
「へっ、今の私にそんな正論は通じねぇぜ! そんなことより……」
魔理沙は机の上、正確には私の目の前に叩きつけてきた新聞を指差す。
「……『氷の妖精、サウナにて逝く』? はぁ、これがどうかしたの?」
「ちっがぁう!!! そっちじゃねぇ、裏見ろ裏を!」
荒ぶる魔理沙の言う通り、私は新聞を裏返す。そこには大きな白黒写真と、それに伴う大見出しが派手なフォントで記されている。……あれ、これって。
「『博麗の巫女、巨大妖怪の群れを単独撃破! 人間の里救う』……ああこれ、昨日の私の記事か。ったく文のやつ、出すなら出すで一言言えって前々から……」
「そこじゃない!」
両手を机に叩きつけた魔理沙の顔面が、目の前に迫る。その気迫に、思わず言い返すだけの勢いを失ってしまう。
「私が言いたいのはそこじゃねぇ! なんでそんな事があったのに、お前一人で戦ってるんだって聞いてんだ!」
「……は?」
「は、って……なんだよ、私の言ってることそんなにおかしいか?」
「いや、だって……別にあんたなんかいなくても……」
「──っ」
豆鉄砲を食らったかのように、魔理沙の顔が引きつる。
「……ああ、そうかい」
そう言って、魔理沙は私から離れて背を向ける。そのまま縁側から庭に飛び降り、少し歩いたところで箒にまたがった。
「ちょっと魔理沙、どこ行くのよ」
「聞きたいこと聞けたから、帰る」
「帰るって……ねぇ、なんで怒ってるの? 私なんかした?」
「……そういうところだぞ」
そう言って、魔理沙は風と共に空へと舞い上がった。私が呼び止める間もなく、あっという間に空の奥に突っ込んでいき、そのままもう見えなくなって……こうなってしまえば、追いかけても簡単には追いつけないだろう。
「……何よ、あいつ」
ため息をつき、私は縁側の戸を閉める。せっかくゆったりしていたというのに、なんなんだあの暴風魔法使いは……いっつもそうだ、面倒くさいことを嬉々として持ってきて、何が楽しいのかさっぱり分からない。
「……病み上がりのくせに」
──風邪ひいてたあんたを叩き起こさなきゃいけないほど強い相手じゃなかった。
素直にそう言っておけばよかった。そんな自分の言葉選びによる非を認めそうになって、私は考えるのをやめた。
「……ってか、相変わらずこの新聞碌なこと書いてないわねぇ。流石文っていうか……誇張どころか作り話に両足突っ込んでるわよ……って、なにこれ」
ホラ吹き新聞の字を目で追っていたら、妙な写真が小さく載せられていた。なんだこれは……流れ星? それにしてはすっごく黒いし、なんだか不気味だが。
「……『凶星、魔法の森に落ち来たる』?」
やけに不穏な煽り文句だな、と。私は静かに鼻で笑った。
魔法の森という単語に少しだけ、黄色いアイツの顔をチラつかせられながら。
これを書くよりもフェンリルよりもアリーシャを書けとか言われそうだけど、しょうがないだろ書きたくなっちゃったんだから……!(言い訳)
……一応言っとくけど続くかどうかは気分よ?(保険)