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99話 紙一重の協力者

巨大なる竜は目的となる存在を認めるとまばゆい光を放った。


それはジャックたちの目を眩ませるだろう。


「何の光っ!?」


モヒ・カーンの悲鳴。


ここで視界を失うのは恐怖以外の何物でもない。


だが、彼らは視界を失ったのみで特に何かをされるということはなかった。


そして、眩んだ目が白以外の色を取り戻す。


すると、そこには金髪碧眼の美女が一糸まとわぬ姿で佇んでいるではないか。


「……あんたは」

「お久しぶり、と言えばいいでしょうか?」


それはプリズムキャロットの一件で遭遇したアナザー、エティルであった。


その証明として耳が人間よりも遥かに長い。


いわゆるエルフ耳とよべるものを所持していた。


「うーっ!」

「……」

「ふきゅんっ!」


エティルに反応するトウキたち。


これは好奇心から来るものだろうか。


そんな彼女たちに優しいまなざしを向けるアナザーに、ジャックたちは固まってしまっている。


『彼女が協力者、アナザー・エティルじゃ』

「敵側じゃねぇかっ」

『勢力的には敵じゃが、個としてみれば味方じゃよ』

「そういう問題かよ」

『そういう問題じゃ。アナザーとて一枚岩ではないからのう』


ジャックはドクター・モモに抗議する。


流石に、アナザーをトウキたちの育成に招くのはどうか、と躊躇ったからだ。


『これはトウキたちに必要な処置じゃ。普通では乗り越えられない試練を乗り越えるためのな』

「あんたは、この子たちに何をさせようとしてるんだ」

『……』


ジャックの声は少し強めのものだった。


それは老科学者に自責の念を思い出させるだろう。


『未来を変えるんじゃ』

「未来?」

『そうじゃ。ハッキリ言おう。わしは未来と過去を行き来する【イレギュラー】じゃ』

「あ? タイムスリップでもしてんのか?」

『正確にはそうではないが、その認識でええわい』


ドクター・モモはいよいよ自身の秘密を明かす。


それはジャックたちに希望を託すも同然の行為。


そして、自身を危険に晒す行為でもあった。


「いよいよ何でもありねぇ」


これにデューイも呆れる。


しかし、ドクター・モモなのだから仕方がない、とも思っている。


「私はともかく、ドクター・モモだけは信じてあげてください」

「久しぶり、と言えばいいのかしら?」

「えぇ、お久しぶりですね」


ここでエティルが口を開いた。


デューイは彼女の身体を観察する。


以前治療した傷は完全に癒えたのか傷痕は見当たらなかった。


「あなたがトウキちゃんたちに常識を教えるなら先ず、するべきことがあるわ」

「……それはなんでしょうか?」

「服を着なさい」

「あっはい」


一瞬にしてエティルの神秘性は失われた。


デューイは理解していた。


トウキとトーヤの視線が彼女の豊満な乳房の先に向けられているのを。


これ絶対に母乳を期待している目だ、と。


事実、トウキとトーヤはでっかい赤ちゃんである。


本能的におっぱいを、ごはん製造機、として認識しているのだ。


「えっと……それじゃあ、これで」


エティルは傍に生えていた植物の葉を千切り、自身のツルツルの股間に当てた。


すると、それは見事に肌に張り付いたではないか。


「まさか、それが服とか言わないわよね?」

「ダメでしょうか?」

「だめっ」

「そんなー」


エティルは、どうやらナチュラリストのもよう。


「まぁ、冗談です」


そういうとエティルは何かを呟き始めた。


それはやがて股間の葉に力を与える。


「【マ・ナル】」


最後に力ある言葉を発し、それなる現象は起こった。


葉が閃光を放ち、姿を変えたのだ。


それが納まった時、エティルは痴女から淑女へと変化を果たしていた。


「うそ……! 魔法!?」

「似たようなものですね。似合います?」


なんと、一瞬にしてシックなロングスカートのメイドエルフと化していたではないか。


エティルにとって葉は衣服足り得る存在であることを証明して見せた瞬間である。


「驚いたな。このご時世に魔法を見せられるとは」

「魔法も科学も原理は似たようなものです。使用するエネルギーが異なるだけですよ」


御木本はエティルの行使した技術に感嘆する。


だが、同時に最大級の警戒も行っていた。


今披露したのはあくまで殺傷能力の無いものであった。


しかし、知恵あるものであるならば、必ず優れた技術を兵器として転用するものであることを彼は知っている。


「(これは脅威だな。一見、非武装でも常に警戒せざるを得ない)」


御木本はドクター・モモに全幅の信頼を寄せてはいるが、彼の協力者というエティルは信用ならない、という直感めいたものを感じ取っていた。


「では、トウキとトーヤには私が教育を施します。目的達成のために」

「う?」

「……」


無垢なる存在であるトウキとトーヤは、エティルに好奇の眼差しを向けている。


エティルもまた、彼女たちを見つめていた。


「任せてください。この子たちを一流の淑女に育て上げて見せますとも」


そして、エティルの頬は若干赤く、息が荒いものになっていた。


なんか、はぁはぁ、言ってる。


「あぁ、めっちゃ、性的にくいた……げふんげふん。可愛いですね?」


「「「「(大丈夫か、こいつ)」」」」


ジャックたちの意見が一ミリも狂わずに一致した瞬間であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アナザーふきゅん! なんか違う様な気がするがふきゆんの前では些細な事 オリジナルふきゅん「ふきゅ〜ん!」
[一言] 野獣の眼光を感じる…!
[一言] 大丈夫かコイツで? 見張「同士が来た予感!!」 Dr.「だからヤツは別働隊にした…」
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