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96話 悪魔のgorilla

やがて凍矢は念願の地上へと無事に着地した。


「離れて大丈夫です。聞いてます?」


これにチームオーガの面々はそれぞれの感想を口にする。


「生きてるぅぅぅぅぅぅっ!」


熊谷のコメントだ。


「ふっ……漏らした」


明星のコメントである。


「濡れた」


金林へんたいのコメントだ。


「結婚しましょう」


寅吉君さくらんのコメントである。


うん、色々と酷い。


「正気に戻って。地上エレベーターまで走りますよ」

「あっはい」


大混乱状態の地下東京を駆ける。


町は一匹の巨大過ぎる大蛇が大暴れ。


それはやがてドッペルビルに狙いを付けて突っ込んできた。


「伏せてっ!」

「はいっ!」

「僕の尻に顔を埋めないでっ!」


どさくさに紛れてセクハラを炸裂させる寅吉君。


彼は本能的に雄として正しい選択が出来る英傑だ。


「(この柔らかさ……やはり、凍矢さんは女性っ!)」


寅吉君は確信した。


凍矢は女である、と。


きっと彼女には性別を偽る理由があるのだとも認識した。


そうなるとドクター・モモ関連だろうか。


ドッペルドールは基本的にパイロットの性別と同じであり変更することはできない。


その法則に当てはめるなら、これは情報のかく乱を狙っての事と理解する。


「(なるほど……ドクター・モモは本部と事を構えるつもりだな。だからこそ、僕らを奪還することを考えた)」


寅吉君は自分の置かれている立場をすぐさま理解した。


それは半分正しく、半分間違いである。


だが、ドクター・モモにとって、トラクマドウジに期待するのは半分正しい方であり、寅吉君の推測はあながち間違いではない。


「よし、やり過ごした。ほら、寅吉君も……」

「暫く、このお肉に溺れたいです」

「こらっ、今はそんなことをしている場合じゃないっ」


強引に起ち上りショタっ子を引きはがす。


寅吉君は不満そうな顔を向けるも、凍矢は構ってやるほどショタ属性は持っていない。


彼女はどちらかというと、鍛え上げられた筋肉に欲情するのだ。


ぷにぷには好みではない。


「エレベーターまで走れっ!」


凍矢はチームオーガを先導し混乱の町をひた走った。






一方その頃、東京要塞は酷い有様だった。


曰く、巨大怪獣が攻め込んできた。


曰く、魔王が攻め込んできた。


曰く、gorillaが暴れている、と。


いずれも間違いではないのが酷い。


「ふきゅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!」


出鱈目な力を振るう珍刀の前にエリートたちは成す術が無い。


よもやこの現象を生身の人間一人が起こしていると誰が思い付こうか。


「ば、化け物がっ!」


ドッペルドールの一人がマグナム銃を桃吉郎に撃ち込んだ。


普通であれば高レベルの猛獣をも破壊しうる威力の銃だ。


だが―――――。


キンッ、チュインッ。


「な―――――」


それは桃吉郎の分厚い胸板に弾かれ無効化された。


「ぬるい」

「ひっ!?」


一瞬で間合いを詰められる。


そして、反応する暇もなく脳天を手刀で叩き割られた。


脳髄を撒き散らしながら倒れるドッペルドール。


その有様に複数のドッペルドールが失禁し戦意を失う。


まさに魔王。


絶対強者が弱者を狩りに来ている、と誰しもが思った。


「ぐわっはっはっはっ! 何事かと思えば仲間割れか!」

「わ、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? ド、ドラゴンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


そこにアナザーが乱入してくるという異常事態だ。


東京に置いてもアナザーの名は浸透しておらず、時折こうやって襲来するアナザーは知能の高いドラゴンとして認識させられていた。


もちろん、人類の脅威であることは変わらずそのDLは120と設定されている。


「ど、どうするんだっ!? DAはもう壊滅しちまってるぞ!?」

「ち、地下に逃げ込むしかないっ!」

「もう駄目だっ! お終いだっ!」


絶望に顔を歪めるドッペルドールたちを愉快そうに眺めるアナザー。


そんな彼は斥候であり、戦闘に長けた個体ではない。


それでも東京の一般的なドッペルドールたちを圧倒するのだ。


「滅びよ! 猿ども! 我が吐息で駆逐してくれる!」

「うるせぇ」


がぶりゅ。


「は?」


アナザーの視界が半分消えた。


残った視界には巨大な口だけの蛇の姿。


「カロロロロロロロロロロ……」

「な、な……」

「フキュオォォォォォォォォォォォォォンッ!」


ぞぶっ、ぶちっ、べりべりべりべりっ。


「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


アナザーも大蛇たちにとっては餌に過ぎない。


竜の強固な鱗も大蛇にとっては煎餅も同然だ。


無数の大蛇に集られた竜は内臓を貪り食われ直ぐに絶命。


数分後には骨ひとつ残らず消滅した。


この間にも闇からは次々に大蛇が飛び出しており、この世の終焉のような光景が作り続けられている。


「ド、ドラゴンまで……」

「この世はどうなってしまうんだっ!?」


ぎゅぴっ、ぎゅぴっ、ぎゅぴっ、という足音は何かの聞き間違いか。


「く、来るなっ! 悪魔っ!」

「悪魔? 違うな。俺は……gorillaだぁ」


にちゃぁ、という凶悪な笑み。


笑みとは本来、強者が弱者に向ける威嚇行為である。


「ふきゅん」


珍刀が怪しく輝く。


その前には腰が抜け逃げる事もできない女性ドッペルドールの姿。


桃吉郎がエルティナを振り上げる。


腰が抜けたドッペルドールはその行動をガタガタと震えながら見上げる事しかできなかった。


「桃吉郎っ!」


だが、その言葉で桃吉郎の動きが止まる。


「……凍矢か?」

「やり過ぎだ! 目的は達成した、引き上げるぞ!」

「やり過ぎ……うおっ!? なんじゃこりゃぁっ!?」


正気を失っていたのだろう。


桃吉郎は周囲の惨状を見て仰天した。


「ふきゅおん?」

「おまえらは巣に帰れ」

「ふきゅお~ん」


桃吉郎はどうやら大蛇を制御できるようだ。


ぶんぶんと手を振って大蛇を巣に帰らせる。


どさくさに紛れて数体のドッペルドールがお持ち帰りされたが見なかったことにするもよう。


「ふぅ、びっくりした。なんでこうなった?」

「それは僕が聞きたい」

「それで、こいつらがトラクマドウジの本体か?」

「そうだ」


寅吉君は桃吉郎を見てポカーンとしていた。


「だ、誰ですか?」


そして、恐る恐る凍矢に訊ねた。


「こいつは木花・桃吉郎。ドッペルドール・トウキのパイロットだ」


「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」


本日、一番の悲鳴が木霊したのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 衝撃!美少女の正体はGORILLAだった!! 寅吉「嘘だー!?」 凍矢「真実なんだよ…」 寅吉「凍矢さん!僕の子を産んで!」 凍矢「何でだ!…でも駄目だ 実はGORILLAの筋肉が好みなんだ…
[一言] (トーヤさんがプリケツのスレンダー美女なのにトウキちゃんの中身が筋肉もりもりマッチョマンのGollilaだなんて)通るか…そんなもん…!という気持ちで一杯だろう寅吉君。
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