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69話 とんころもし

バターバッタの翅を手に入れたトウキ一行は更に奥へと進む。


「まさか、GPCに収納機能を加えているだなんてね」

「かっかっかっ、便利じゃろ?」


ドクターモモは自前のGPCを携えていた。


それには既製品には無い機能、【異空間収納機能】が備わっている。


これは要するに四〇元ポケットと思ってくれればいいだろう。


「なぁ、爺さん」

「なんじゃい、ジャック」

「GPCを大幅に改造するのは確か違反だったよな?」

「そうじゃよ?」

「このジジィ」


GPCは通常のPCとは違い、ドッペルドール管理センターの登録が必要となる。


それは、このGPCには転移、転送装置が標準装備となっているからだ。


この機能を悪用された場合、犯罪を抑止することが困難となる。


そのため、GPCを改造することを禁じており、もし発覚した場合、重い禁固刑か最悪、極刑もあり得る。


尚、軽く処理機能を向上させる等は黙認されているもよう。


「バレなきゃいいんじゃよ、バレなきゃ。どうせ連中も隠し事だらけなんじゃし」

「そういう問題じゃないだろ……」


とここでジャックの足が止まる。


それは先頭を行くトウキも同じだった。


「ん? どうしたの、トウキちゃん」

「気配がする……しかも殺気」

「えっ?」


ひゅんっ、と何かがデューイの頬をかすめる。


つつぅ、と伝う赤い雫は彼女の頬に一筋の赤い線を描いた。


「っ!?」


慌てて身構えるデューイ。


既にトウキはオーラウィップを手にして応戦の構え。


闇の向こうから、ひたひた、と何者かの足音。


やがて、懐中電灯の明かりに照らされるその猛獣は……とうもろこしだった。


「とんころもしだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「とうもろこし、な」


トウキの勘違いにすかさず修正を入れるトーヤ。


デューイを攻撃したのはこのトウモロコシの怪物【トウ・モロゴロシ】だ。


DLは21。


間違い無く強敵である。


見た目は巨大なトウモロコシに人間の手足が生えているというシュール極まる姿をしている。


先端から伸びる髭は髪の毛のつもりなのか、個体によっては七三分でビシッと決めているトウ・モロゴロシも見かけられるという。


「面倒くせぇのがいるな。こんな事なら盾でも用意しておけばよかった」


ジャックはこのように愚痴る。


その理由はトウ・モロゴロシの攻撃方法にあった。


この化物は自身の実を散弾銃のように発射して攻撃してくるのだ。


その威力は乙女の柔肌であるなら掠っただけで傷を負うほど。


トウ・モロゴロシの実自体は通常のトウモロコシのサイズと同じなので、それが大量に射出された場合、ショットガンの発砲と等しい威力を見せつけるだろう。


この攻撃を生身で防ぐのは不可能に近い。


「茹でる前の硬さって?」

「鉛玉と同じだよ」

「そっかー」


トウキの質問にジャックがすぐさま答えた。


ジャックはトウ・モロゴロシの調理を何度かしたことがあるので、その実の硬さを嫌というほど理解している。


食材になる前のトウ・モロゴロシと対面するのはこれが初めてであるが、その厄介さは食材を納品したパイロットたちから聞き及んでいた。


「とうもろごろしー!」

「「「「「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」


尚、これは鳴き声である。


「ほれほれ、とうもろこしの散弾が飛んで来るぞい」

「んなこと言われてもなぁ」


トウキの発言は全員の心情を代弁したものであっただろう。


しかし、この中で一人だけ余裕がある者がいた。


「にゃろめぇ、乙女の柔肌に傷をつけるとか邪悪でしょっ」

「とうもろごろしー!」


トウ・モロゴロシが足を踏ん張り、腕を広げた。


僅かな時間を置いて大量の粒が発射される。


即死までは行かないものの、これだけの粒を受ければ少なくとも重傷へと至るであろう。


「種がバレた手品は面白くもなんともないのよ」


しかし、放たれた粒は物理法則を無視したかのようにあらぬ方角へと逸れて行き、そこで纏まってしまった。


「Extraスキル【バキューム】。あんたの実は全て回収させてもらったわ」


空中にて黄色のボールと化したそれは、デューイの特殊能力にて無効化された粒たちだ。


「と、とうもろごろしー!」

「はいはい、止めを刺してね」


デューイの願いを聞き入れたのはトーヤだ。


ぱんっ。


狙撃銃の発砲音、それはトウ・モロゴロシの頭部?を破壊。


ぼとり、と先端の髭が地面に落ち、ゆっくりとトウ・モロゴロシは地面に倒れた。


「そこ、頭だったのか」

「知らないで撃ったの?」

「はい」


トーヤにしてみれば、妙に腹の立つ部分がそこだったので撃っただけである。


しかし、正しくそこがトウ・モロゴロシの急所。


例えるなら、眉間を撃ったらだいたいの動物は死ぬ、だ。


「とんころもしゲットだぜ!」

「とうもろこしな……ふむ、とうもろこしか」


再びトウキにツッコミを入れたトーヤは、ぽわん、と妄想した。


コーンポタージュもいいかも、と。


「トーヤ、涎」

「コーンポタージュ……はっ!?」


トーヤは幼い頃に食べたコーンポタージュの味が忘れられないようで。


慌てて涎を拭い取りおすまし顔を披露する、も手遅れである。


その様子にデューイとジャックはクスリと笑う。


「あらまぁ、珍しい」

「そういうのはトウキの専売だと思っていたんだがな。帰ったら作ってやるよ、コーンポタージュ」


これにトーヤは耳まで真っ赤に染め上げたのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] トウ・モロコシ「とうもろこしー!」 ジャック「しゃべったー!」 珍刀「ふきゅん」 ジャック「しゃべったー!」 ゴリラ「ウホッ」 一堂「しゃべったー!」
[一言] ゴリラスキンの前では「散弾ではなぁ!」になりそう(小並感
[一言] 違法改造はイケません トーヤ「まあドクターだからな…」 ジャック「それだけで納得出来るからな…」 Dr.「お前のGPCも改造してやろうか?」 デューイ「ドクターのだから誤魔化せてるのから!」…
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