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59話 力の解放

桃吉郎の眼前には悪夢が具現化したかのような存在。


ドッペルビルとほぼ同等の身長を誇る巨人が町を破壊しながら迫っている。


しかも、それは徐々にだが巨大化していた。


「デカいっ……!」


その肉巨人は町ごと人間モドキを踏み潰して進む。


その際に己に取り込んで巨大化していっているのだ。


それだけでは飽き足らず、機能停止したドッペルドール。


更には人間ですら取り込み、醜い姿を更に膨張させてゆく。


このおぞましい存在は、その度に悲鳴を上げた。


それは、巨人を作る肉の一つ一つが疑似的な命を与えられ、意志のようなものを持たされているが故。


それらは己に降り掛かる激痛に悶えている。


だから動くたびに悲鳴を上げるのだ。


何故、自分がこんな目に。


それは遠からず、困惑から怒りに、そして憎悪へと転化されるだろう。


「ひでぇ、陰の気だ。こんなのを許したら、世の中おかしくなっちまうっ!」


桃吉郎はこれなる存在に吐き気を催した。


それはあまりにも真っ当な生物ではなかったからだ。


彼は地上の改変された猛獣たちにも敬意を払って対処している。


食うか食われるかの真剣勝負。


そこに邪念などありはしないのだ。


しかし、人間モドキは違う。


しかし、肉巨人は違う。


これらは、人間を殺すためだけに活動していた。


怒れる戦士はそれが許せない。


ぶった斬ってやる。


そう思った瞬間、既に刃は抜かれていた。


何故、自慢の拳を叩き込もうと思わなかったのか。


それは彼にも分からないだろう。


ただ、本能のままに。


自分の最善手であろう行動を取る。


それが木花・桃吉郎なのだ。


ふきゅん。


桃色の刃が鳴いた。


軽く一振りしただけで大気が鳴いた。


その刃は美しい。


しかし同時にこの世の物とは思えない【おぞましさ】をも湛えている。


だが、桃吉郎は気付かないのだ。


それが、あまりにも【身近過ぎて】。


「おめぇはっ! この世に居ちゃあいけねぇ!」


桃吉郎が上段の構えを取った。


トウキとは比較にならない圧倒的な殺意。


それは大気を歪ませる。


それが肉眼で見えるという異常な状況。


呼応するかのように桃色の刃が輝き始める。


それは桃吉郎に力を与えるもので間違いない。


しかし、見ようによってはこうも捉えることが出来よう。


それは、刀の涎である、と。


これなる刀は欲していた。


食事を。


肉を。


それは希望であり。


また、破滅へ誘う存在。


所持者は抗わなくてはならない。


斬る事への快楽を。


それを目的としてはいけないのだ。


桃吉郎はエルティナを振り下ろした。


全力の一振りではない。


そのようなことをしたら刀が折れてしまう、と思ったからだ。


だが、エルティナは微塵も負荷を感じていない。


なんなら、もっと力を込めて振るえ、と催促までしている。


「――――――っ!?」


桃吉郎の一振りは肉巨人の左腕を簡単に切り飛ばしていた。


ただの素振り。


それが必殺級の斬撃になってしまっていたのだ。


彼と巨人の距離は約20キロメートルほどもある。


しかし、その斬撃は桃色の輝きを纏って飛翔し、巨人の腕を切り飛ばすに至る。


それでも尚、勢いは止まらず。


シェルターの外壁を切り裂き、土を喰らい、そして地上に到達。


たまたまそこに居たエンプティングを斬り殺し、更には雲を斬り、そして大気圏を突破して月に衝突。


そこでようやく気が済んだのか、桃色の粒子となって周囲に散らばった。


「スゲェじゃねぇか。オラ、ワクワクしてきたぞっ!」


普通ならここでドン引きするのだが、ゴリラは格が違った。


引き戻すなら今なのだが、こいつはレッツラゴー。


全力疾走で最悪に突っ走る。


「ひゃっはぁ! 汚物はみじん切りだぁ!」


自分が扱っても壊れない武器を手に入れた事で、ちょっぴり頭がおかしくなったのだろう。


世紀末モヒカンレベルの知能にまで低下したゴリラは――――いや、知能が上がってるのかこれ。


とにかく、桃吉郎は暴走した。


人知を超えた身体能力と、人知を超えた妖刀を携えて、この世の理を外れる肉巨人を蹂躙し始める。


「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」


肉巨人は妖刀に切り刻まれて悲鳴を上げるだろう。


しかし、何かがおかしい。


それは確かに徐々に原形を失ってゆく。


だが、死なない。


腕を、足を、胴体を、首を、頭を切られても活動し続けるのだ。


それは、巨人が【個】ではなく【群】であるから。


桃吉郎は個に対して強いが、群に対応できていない。


彼が切っているのはあくまで個に過ぎないのだ。


斬られた肉は意思を持つかのように蠢き、すぐさま一つの塊に戻ってゆく。


ぐちゃぐちゃになった人の姿。


それでも尚、それらは生きている。


生かされている。


悲鳴を上げ続ける。


そんなものを延々と聞かされ続ければ精神は破壊されてしまうだろう。


だが、元々おかしいゴリラには通用しなかった。


「ええいっ! 面倒くせぇ! だったら、こうだ!」


桃吉郎は巨人に背を向けケツを突き出した。


「くらい……やがれぇっ!」


ぶおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! ぷぴっ。


ゴリラのケツから黄色いガス状の何かが放出された。


その直撃を受けた肉巨人の一部は「くさっ」という悲鳴を上げて壊死する。


そう、まさかの放屁であった。


こいつの屁は腹の中で異次元の処理がなされ、生物に超有害なガスが生成される。


このガスに触れると細胞は生きる気力を失い自殺してしまうのだ。


だが、これには限りがあるため多用することはできない。


そして臭い。


絶対にガスマスクを着用しなくてはならないだろう。


「そして、こいつだっ! 燃えやがれっ!」


桃吉郎は指パッチンで火花を発生させる。


それが、ねっとりとした屁に引火。


巨人に付着していた屁を爆弾に変える。


お前の屁、どんだけだよ。


粉々に吹き飛ぶ巨人の肉。


しかし、それもごく一部に過ぎない。


再び再生を繰り返す鼬ごっこに桃吉郎の怒りは無駄に限界を突破する。


「おんどるるっ! しょばいしゃいせしゅたらだめしょっ!?」


怒り過ぎて人語を忘れたゴリラが肉巨人に突撃する。


凍矢が百式火縄銃を構えたのは、このタイミングだった。

なろうの仕様が変わってあたふたした感。

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― 新着の感想 ―
[一言] 珍獣刀あらぶる 月の黒エルフ「エルちゃん正座」 珍獣「スミマセンでした!!」 桃吉郎(何でオレまで…しかし逆らえない) 凍矢「ホットドッグ三十人前お持ちしました!」
[一言] ちょっと実も出てそうできたない(小並感
[一言] オナラ砲ッ!?
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