表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/163

55話 襲撃

トラクマドウジのトウキスカウト失敗から数日後。


彼らは数名のドッペルドールを引き連れて、すすきの要塞を後にする。


旭川を攻略し、隕石を政府の管理下に置くためだ。


これが成ると史上初の出来事となり、彼らは名実ともにドッペルドールパイロットのトップエースの座に君臨することになろう。


しかし、そんなことはトウキたちにとってはどうでもいい事であり。


そして、本体たる桃吉郎ゴリラにとっても些末な事であった。


彼にとって何よりも優先するべきことは食料の確保。


親しい人々が飢えないようにする事だ。


今日も桃吉郎は日課のトレーニングをこなす。


超人的で殺人的なトレーニング量は短時間の内に消化され、それはあたかも普通に見えてしまう。


それを、ほぼ毎日、欠かさずに行う。


いつもの公園で呼吸を整える桃吉郎。


その背中には奇妙な存在感を放つ刀の姿。


ドクター・モモがエルティナと命名した桃色の刀の姿。


この時代、既に銃刀法などは形骸化しており、誰も咎めようとする者などいない。


寧ろ、護身用として銃の一丁や刀の一本を持て、と推奨されるほど。


自分の身は自分で護れ、が当たり前の世界。


それが、現代なのだ。


「……」


今日の分のトレーニングを終えた桃吉郎は何気なしに背の刀を抜いた。


何故だか、呼ばれたような気がしたのだ。


ふきゅん。


そんな音を発して鞘から抜かれる桃色の刃。


「……」


桃吉郎は無言でそれを眺める。


地下すすきのの朝はまだ来ない。


街灯の明かりに刀をかざす。


桃色の刀身はそれを受け止めて神秘的な輝きを放った。


「……」


どういうことか桃吉郎はこの光景を知っていた。


それも、生まれる前から。


それはデジャヴであろうか。


それとも彼の思い込みであろうか。


ただ一つ言える事。


それは、この刀が普通ではない存在であるということだ。


「おまえも……飢えているのか?」


桃色の刀の周囲が歪み、刀に引きずり込まれている。


喰っているのだ。


周りの光を、闇を、熱を、水分を、空気を、砂埃を。


桃吉郎の放つ微弱な電気、そして闘気までも。


それは直ちに影響を与えるものではない。


しかし、放っておけば甚大な被害になるであろうことが予想できた。


だから、桃吉郎はエルティナを鞘に納める。


ちんっ。


そんな金属音を奏でて奇妙な刀は鳴りを収めた。


―――と、桃吉郎の頭の奥。


そこに鈍痛を感じ取る。


古傷を撫でられるかのような、そんな感じがした。


無論、この男に傷が残るということはない。


驚異的な頑丈さに加え、異常な回復能力をも併せ持つ規格外生命体《GORILLA

》なのだ。


「なんだ? 今の痛みは?」


その痛みに嫌なものを感じる。


「おまえか?」


桃吉郎は背のエルティナそう問うた。


刀は答えない。


その代わりに結果を見せた。


遠くで破砕音。


やや遅れて非常サイレンが鳴る。


地下都市に脅威が迫った、と知らせるサイレンだ。


「なん……だと……?」


この時代、そして、地下都市に非常サイレンが鳴るなどあってはならない出来事だ。


何故なら、地上を繋ぐ唯一の道は要塞によって護られている。


しかも、そこにはドッペルドールたちが常勤しているのだ。


猛獣の大群が押し寄せてきたとしても、地下都市への道は塞がれており、それに猛獣たちが気付くということはほぼ皆無だろう。


唯一の道も24時間体制で見張っているため、開けっ放しということはまずありえない。


では、持ち込んだ食材が猛獣として再生したか。


その線も否定できないが、食糧庫は地下都市の更に奥深くに作られておるので、そこから這い出てくるとなると、相当なレベルの猛獣となろう。


地下すすきのには、そのレベルの猛獣は持ち込まれていない。


それを狩れるパイロットがいないからだ。


では、あと考えられる不測の事態は何か。


桃吉郎は嫌な予感を感じ取る。


「桃吉郎!」

「凍矢か!」


今日は珍しく二人とも道着姿だ。


凍矢は型の稽古を行っていた最中に、この事態を知った。


「なんだか、嫌な予感がする」

「僕もだ。急いでドッペルドール管理センターへ……」

「そんな時間は無さそうだぞ?」


ひたひた、と獣の足音が近づいて来る。


それも、一匹ではない。


複数だ。


「……どうなっているんだ?」

「さぁな? だが、俺たちがやることはただ一つだ」


桃吉郎は構えた。


同時に公園の物陰から複数の影が飛び出てきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 珍獣刀「お腹が空いたので色々食べられそうな猛獣を呼んでしまいました」 凍矢「やめて差し上げてください」 ゴリラ「美味いのか?」 エ「それはもう」 [気になる点] もれなく珍獣刀と狂科学者…
[一言] ふきゅんと鳴く刀に過去作からの読者は反応してしまうわけだがどこもおかしくはない この作品のノリが合う人は食いしん坊エルフとかも楽しめると思うから読んで、どうぞ(ダイマ)
[一言] ふきゅんって!? やはり!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ