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46話 若きエリート

大満足をしてすすきの要塞へと戻ったトウキ一行。

戻った先ではちょっとした騒ぎになっていた。


「おう、どうした?」


ジャックがドッペルドールの肩を掴んで止め、何事かを問うた。

世紀末モヒカンヘアーの彼は答えた。


「おっ、ジャックか。どえれぇ奴がここに来てるぜ。中央のエリート坊やだ」


中央、それは東京本部の所属パイロットを意味する。

そこでパイロットに着任する、というのは一つのステータスとなり、競争率も高い。

それは東京が抱える人口が地方に比べてとびぬけて多いからだ。


すすきのが1500人に対し、東京の人口は実に10万人を超す。

それは当時、東京こそが人類の最後の砦として扱われたからに他ならない。


今現在に置いても、その地位が脅かされることはなく。

優秀なパイロットたちが毎年のように誕生していた。


その実力はトウキにも劣らないというものである。

つまり、東京にはそのレベルのドッペルドール、そしてパイロットがゴロゴロいるということだ。


その生え抜きがここ、札幌に来ているという。

パイロットたちが落ち着かないのは、この理由があっての事。


「へぇ、中央のねぇ。いったい何の用事だい」

「多分、旭川攻略失敗を受けて本部が派遣したんだろうさ。札幌支部の面子は丸潰れだな」


そう告げるとモヒカンは立ち去って行った。


彼の言う通り、旭川の奪還はそこに住んでいた者たちにとって悲願であり、そこに落ちたであろう隕石の調査も可能になる、という重要な作戦だった。

しかし、無能な指揮官によってそれも水泡に帰したのだ。


これを重く受け止めた東京本部が、若き精鋭たちを尻ぬぐいとして送り込んできたのである。


「ふぅん……ここがすすきの要塞か」

「田舎ねぇ。センスの欠片もないわ」


件のエリートたちが姿を現した。


男女混合の四人チームだ。


チームを引っ張るであろう黒髪のツンツン頭の少年。

彼は青のツナギに要所要所にプロテクター装着しているだけという軽装だ。

それは彼が身軽さを重視しているという証明になろう。


武器は刀とマグナム。

戦闘に相当な自信が無ければ、このような武器選択には至らないであろう。


彼の取り巻きの少女たちはそれぞれ赤、青、黄、の髪色の美少女たち。

服装はタンクトップとミニスカートという刺激的な姿だ。

それに範囲の小さなプロテクターを装着している。


これは実力もさることながら、見栄えを重視しているという点が挙げられる。


要するに【舐めプ】である。


赤髪のボブカット少女の性格は、短気で生意気。

だが、好意を持った者に対しては甘々になる分かりやすい性格だ。

獲物は巨大なツーハンドアックス、そしてバズーカ砲。


青髪ロングの少女の性格は、いわゆるツンデレ。

こちらも分かりやすい性格。

獲物は狙撃銃と鋼鉄の爪。


黄の髪のお下げ少女の性格は、陰湿で執念深く執着し易いという最悪なもの。

しかもこの娘、猫を被るのが得意という最悪を集めて煮込んだかのような性格をしている。

しかも、目的達成のためなら仲間の犠牲も厭わない、というのだから困ったものだ。

獲物は先端に水晶が付いた杖のみ。


そんな彼女もこの世でただ一人だけ、愛する者がいた。

このチームのリーダーである黒髪の少年だ。

彼に執着しているからこそ、このチームに所属し続けているのだ。


「ほーん、あれが中央のエリートか?」


トウキが物珍しそうに黒髪の少年を観察する。

と彼と目が合った。


「やぁ、お嬢さん。僕がどうかしたかい?」


トウキは答えた。


「おめぇ、本当に強いのか?」


少年は返した。


「強いよ」

「ほんと?」

「本当さ」


状況としてはピリピリしたものであるのだが、双方共に、ふにゃん、とした表情なのがそれをおかしなものにしていた。


「じゃあ……やろうぜ」

「夜のお誘い?」

「ちがうっ」


少年はトウキの挑発をのらりくらりとかわしてゆく。

その様子にすすきの要塞のパイロットたちは感心した。


無駄な争いを好まない、そして回避できるチームリーダー。

そいういう冷静なパイロットを高く評価できるのが、ここのパイロットたちなのだ。


突出した実力こそ持たないものの、集団戦においては無類の強さを発揮する。

したがって、優秀なリーダーを据えることが出来れば、札幌のドッペルドールたちは東京本部にひと目置かれる集団となろう。


「今日は用事があってね。時間が取れないんだ。ごめんね」

「え~」


尚も食い下がるトウキに、トーヤが赤兎を回収しに来た。


「うちの馬鹿がすみません」

「いえいえ、保護者の方ですか? お綺麗でいらっしゃる」

「本当にすみません。ほら、行くぞ」

「これで勝ったと思うなよ~」


ズリズリと女教師に引き摺られてゆく赤兎。

その光景はコスプレイヤーがドッペルドールパイロットでもやっているのかと思わせるだろう。


「コスプレイヤーかな?」

「多分ね。行きましょう【トラ】」

「うん、行こうか、みんな」


中央から来た若きエリート集団【チーム・オーガ】。

その若きリーダーの名は【トラクマドウジ】。


後に世界を救う男の名である。

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― 新着の感想 ―
[一言] 虎熊「来ちゃった」 珍獣「お前もか!!」 凍矢「率直に来るな」 桃吉郎「まあ駆け付け3杯逝こうか?」 NG「いつもの奴等が揃ったな…」
[一言] 某ソシャゲの剣豪と死合いたくて鯉口カチャカチャした女みてーな喧嘩の売り方しちゃってぇ…(暗黒微笑)
[一言] リーダーはともかく… ねえ…
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