44話 たまね牛調理
たまね牛をGPCの転送機能を用いて、すすきの要塞へと送る。
その所要時間はなんと6時間。
それほどまでの巨体故に仕方のない事だ。
「6時間だってよ」
「私は臭い女。今はもう何もしゃべりたくない」
「拗ねるなよ。今回はちゃんと洗浄キットを持って来てるんだから」
「流石はジャック様っ! 分かっておられるっ!」
とっても臭い女になっていたデューイはこの情報に歓喜。
直ちにDBCに駆け込んで洗浄キットを使用することに。
その際に犠牲になったのはチーズにゃんたちである。
彼らは赤毛ツインテールの余りの臭さに「ぎにゃあっ!?」と悲鳴を上げて逃げ去ったとか。
洗浄キットはいわゆるボディシャンプーであり、髪も洗い流すことが可能。
異臭も即座に綺麗さっぱり落とすことが出来る優れ物だ。
ただし、そのための水が必要になるが、ジャックはしっかりとその分の水も車に積んでおいたもよう。
「たすかるー」
一糸まとわぬ姿のデューイはなるほどエッチだが、先ほどまで熟成されたンコ塗れだった事を考えると近寄りたくない存在だ。
今は臭くない。
「さて、着替えは……」
だが、ジャックが女ものの服や下着を持っているはずもなく。
そして、予備の服の購入を頼んだのがよりにもよってトウキだ。
残念ながらこれを頼む際にトーヤは居なかった。
ジャックは、まぁいいだろうの精神でトウキにお使いを頼んだのだが、これがその結果となる。
「ちょっとぁぁぁぁぁぁっ! この服は何なのよっ!?」
「ぶふぅっ!?」
「おっ、似合ってんじゃ~ん」
たまね牛を調理していたジャックとトウキの下に痴女が襲来。
それは紐かと見紛う白のマイクロビキニを着用したデューイであった。
もうピンクの部分が見え隠れしてしまっている。
「おい、トウキ。こんなのしかなかったのか?」
「……予算がなぁ~」
「渡した金で買い食いしただろ」
トウキは、ふいっ、とそっぽを向いた。
極めて邪悪系女子である。
尚、話に参加していないトーヤは、たまね牛の転送を見守っている。
使用しているGPCはもちろんデューイの物だ。
トーヤの旧式のGPCでは10時間と表記されたのだから仕方がない。
「まぁ、臭いよりかはマシだと思って我慢しろ」
「あんたねぇ、この姿を見て欲情しないのっ!?」
デューイはヤケクソ気味にセクシーポーズを決める。
ジャックも一応はというか現役バリバリで男なので、女にこのような姿で欲情を煽るポーズをされたら下半身の益荒男が雄叫びをあげるのも辞さないだろう。
「馬鹿野郎。親しいからといって理性が何時までも持つと思うな。大人しくしてろ」
「起った?」
調子に乗ったデューイの頭にはホッカホカの大きなタンコブが出来上がっている。
今は正座させられ大人しい。
「なんだよ~。ジャックさんもお好きなのか? 俺も着る?」
「おまえは洒落にならんから止めろ」
トウキが着るともう完全に紐。
むっちむちの柔らかお肉に食い込んだそれは男の理性を完全に破壊する装置だ。
これで中がゴリラではなければ、ジャックといえども確実に理性が吹っ飛んでいるであろう。
「まぁ、そんな事よりも、今は牛丼だっ!」
「そうだな。さっさと作って、パパッと食って帰ろう」
たまね牛は貧乏な桃吉郎の為に円に換える予定である。
したがって、ある程度はここで食べてしまおう、という方針だ。
たまね牛は滅多な事ではすすきのレストランのメニューには載らない。
東京本部では常にメニューにあるようだ。
それだけ本部と地方の差が大きいといえよう。
北海道は規模が小さく、そしてパイロットも小粒ばかりという傾向にある。
そうなると潤沢な支援金が本部から送られてくるということが皆無だ。
だがその分、好き勝手やってもバレ難いという傾向にある。
ドクター・モモが札幌を拠点にしているのも、これに大きな利点を見出しているためだ。
「タレ出来たぞ」
「おぅ、少し辛くね?」
「玉ねぎを煮たら甘くなるさ」
「そういえばそうか」
エプロンをして並び立つジャックとトウキは、傍から見れば仲の良い兄妹にしか見えないだろう。
ただし、片方はバニースーツにエプロンというマニアック過ぎる姿であるが。
「肉を薄くスライス」
「ニンニクとか入れる?」
「いや、好みがあるから、それはスライスして焼こう」
「後掛けタイプか、良いね」
「チーズも掛けるんだから、そっちの方が良いだろ」
「ごもっとも!」
手際よく調理して行く。
流石は現役の料理人と元料理人だ。
息もピッタリで動きに淀みがない。
「米も炊いて」
「生姜鳥の鶏冠も紅ショウガにしておいたぞ」
「もともと赤いじゃん」
「まぁな」
「「わっはっはっ」」
デューイは、仲が良いなぁ、とぼんやりしつつ、廃墟となった町を眺めた。
調理し始めて1時間ほど。
たまね牛の牛丼が完成した。
「それでは、たまね牛の牛丼っ、いただきますっ!」
「「「いただきます」」」
合掌、一礼。
自分たちの命になってくれる食材に感謝を捧げて食事を開始する。
これより訪れるは幸福なひと時だ。




