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41話 旧帯広市

かつて、そこには帯広という町があった。

しかし、地球の大異変の際にそこは放棄され、今や無人の廃墟と化している。

そこを牛耳るのが、たまね牛というわけだ。


それなる牛だか玉ねぎだか分らない獣を狩ろうとしているのが我らがお馬鹿である。


「おー、あれが帯広か」

「といっても今は廃墟だ。そこから西側の山の中に第二帯広市がある」


ジャックは助手席の窓から顔を出す【赤兎】にそう告げた。


今回のトウキはドクター・モモに宛がわれた装備というか衣装というか、を身に付けている。

それが赤いバニースーツだ。


それに薄紫色のストッキングと真っ赤なハイヒールとで完全な赤兎と化していた。


武器はもちろんオーラウィップ。

そして愛刀三毛猫。

射撃武器などは無い。


その相方であるトーヤは、まさかのスーツ姿。

短い黒タイトスカートから覗く太ももが眩しい。

おパンツの色は黒。

それもかなりエロい物を着用させられていた。


対比となる白のブラウスの胸元にはリボンがあしらわれており清楚感を演出している。


この姿には女教師を想起させる効果があり、彼女の黒ぶち眼鏡がそれを助長させた。


ただし、背負っている2丁の狙撃銃が全てを台無しにするだろう。

これによって、不良生徒絶対に射殺するウーマン化してしまっているのだ。


「あんたたち、いっつも色物キャラになってるわね」

「ドクター・モモに言ってください。それに僕は、この身体がまともに動いてくれさえすれば問題はありません」

「トーヤちゃんは、もっと自分の魅力に敏感になるべきよねぇ」


見た目完全な女教師の今日の髪型はお団子だ。

これも桃吉郎が束ねた物であり、一部を三つ編みにしてから残りの髪を上部で纏め上げる、という器用なものとなっている。


これによりトーヤが気にしていた髪の鬱陶しさを克服したと言えるだろう。


尚、しゃがむと完全におパンツが見えてしまうがトーヤは気にしない。

見えるのは正面からだし、それを見るのは射殺される獲物か、命知らずの愚か者だけだからだ。


「たまにはデューイさんも、こういった衣装を着てもいいんですよ?」

「丁重にお断りするわ。そういうのは本体で出来るし」

「そっちの方がアレなのでは?」

「私、生まれた時から女ですからっ」


そう言い聞かされたトーヤは「あぁ」と納得し、女教師化した四国美保の姿を想起。

確かに良く似合うと納得を示したとか。


「腹減った~」

「さっきも食ってただろうに」

「あんなもんは腹の足しにもならぬぅ!」


そう言ってトウキはリュックサックの中からホットドッグを取り出し齧り付いた。

たっぷりのミートソースと、ぶっといソーセージを、素朴なコッペパンで挟んだシンプルな物だ。


「はぁむ」


がぶりゅ、と君千切る、とすっかり冷えてしまっているというのにソーセージからジューシーな肉汁が溢れ出る。

それはねっとりとしているミートソースと絡み合って丁度いい塩梅になるだろう。


その旨味から誘発される唾液がねっとり具合を緩和させる。

これによりコッペパンはその真価を発揮することが出来るのだ。


「うまー。これで150円は安いな」

「金欠少女が。ったく、よりにもよってDL20の化物がターゲットとはな」

「なんだよー。牛丼食べたいじゃん」

「豚丼で良いだろ。ファイアピッグの」

「豚と牛は違うんだい。もぐもぐ」


食べるか、鍛えるか、寝る事か、それくらいしか頭に無さそうな美少女はあっという間にホットドッグを完食。

合掌からの一礼を綺麗に捧げた。






旧帯広市に入る。

そこにはかつての人々の生活の名残がまだ存在していた。


無人となったビル、その地下駐車場にジャックはDBCくるまを入れた。

無論、こういったな所は猛獣の住処となっている場合があるため、まずはこのエリアの制圧から始める必要がある。


しかし、車を外に放置していた場合、最悪、猛獣に破壊されている場合があるため、そのリスクを可能な限り少なくするために、地下駐車場を選んだというわけだ。


「よし、まずは周囲の索敵。少しでも異常があったら知らせてくれ」

「OK。帰りに車が使えない、なんて冗談じゃないからね」


帰還困難な場合はドッペルドールの放棄、という手段もあるが、それはリスクが高過ぎるため滅多な事では選択されないだろう。


それならば苦労してでも徒歩での帰還を選択するパイロットが殆どである。


「すんすん……チーズの匂いがする」

「なんだと?」


車から降りてトウキが直ぐに反応を示した。

地下駐車場内にチーズの匂いがする、というのだ。


「俺は感じ取れないが……いや、するな」

「え? マジで? あんたらの嗅覚、どうなっているの?」


料理人は嗅覚が優れていないと一流には成り難い。

この二人は一流に成り得る資質があった。


特にトウキの嗅覚は犬並みである。


「こりゃあ、居るとするなら【チーズワワ】か【チーラット】だな」

「うん、名前でなんとくなく分かるけど、後者は嫌だわ」


デューイはネズミ系がお好きではない。

ただし、ハムスターは許されている。


チーズワワは豊潤な香りとコクのあるチーズを尾の先に実らせるチワワである。

猛獣というカテゴリーに分類されるものの、しょせんはチワワなのでDLは1となる。


チーラットは全身がチーズという、わけの分からないネズミだ。

大きさはドブネズミサイズであり、習性もそれに伴う。


つまり、動くバイ菌である。


DLは0であるが誤って口にした場合、命の保証はない。

現在のところ、食用に適さない獣となっている。


しかし、チーズの味だけは良いらしい。


「来るぞっ」


赤兎が身構える。

果たして、飛び出してきたのはチワワかネズミか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 赤バニーとセクシー女教師! 誰かイラストを描くのだ! [気になる点] 妖刀が本名では無く珍獣と呼ばれてるのは 仕方がない! エルティナ「不本意である」 一堂「黙れ珍獣」 エ「ふきゅん」
[一言] 前回手に入れた「妖刀珍獣」は? トーヤ「邪気を纏い過ぎてたから お守りとか護符とか聖書とか上に乗せて 家に置いてきた」 珍獣「オモーイ」
[一言] ほぅ、チーズ牛丼ですか。 大したものですね(捕らぬ狸の皮算用
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