表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/163

3話 活動開始

要塞を出る―――とそこは密林だった。


しかし、かつての都市の名残が窺える。

確かにここに、かつての札幌市が存在していた。


だが、今は歪んだ自然が都市を覆い尽くし、異形の生物たちが徘徊する魔界と化している。


地球は異世界に侵食された、そう提言する者もいる。

それはある意味で正しかった。


「う~んっ、やっぱ地上は緑のにおいが濃いなっ!」


背筋を伸ばし、自然のにおいを肺に取り込むむっちり少女。

字だけだと微笑ましいが、その姿は破廉恥そのものである。


ビキニ姿など、とても危険地帯へ赴く姿ではない。

しかし、一応は強固な繊維で作られた鎧のカテゴリーに含まれる。


ドッペルドールの初期装備としては優秀であり、何よりも軽量。

そのため、重武装の釣り合いとしてこれを選択したり、インナーとして装着する者も多い。


男も一応、装備可能であるが、確実にド変態になるので着用者は極少数となる。


いるのだ、これを装備する猛者がっ。


「油断するなよ、桃吉郎」

「分かってるよ」


ふにゃっとした顔を見せる桃吉郎。

必要時以外は基本的に怠惰で油断しまくりである。




暫し密林を探索する。

要塞の近くは定期的に猛獣の討伐が行われるので比較的安全だ。

なので新人にとっては恰好の修練の場となっている。


がさり、と物音がした。

二人は即座に臨戦体制に移行する。


「おうおう、早速、お出迎えだぜ」


桃吉郎は殺気を感じ取った。

柔肌を突き刺すそれは、しかし、すぐさま嫌らしい物へと変化する。


「猿……エンプティングか。DLデンジャーレベルは3だな」


DLとは、その生物の危険度を示す数値だ。

これが高ければ高いほどに危険であることが示されている。


パイロットたちはこれを目安にして、狩るか、避けるかを選択することが出来るのだ。


「3……ってことは一般人が相手にできる限界だったか?」

「あぁ、だが、ドッペルドールの相手じゃない。もっとも……」


単体ならば。


エンプティングは紫色の体毛を持つ2メートルの猿だ。

肉は食用に適さないため価値は低い。

そのため、害獣に指定されている。


この猿は群れで行動する特徴があり、非常に繁殖力が高い。

そして、厄介なことに人間の女性を襲い孕ませることが可能なのだ。


ドッペルドールも女性型は妊娠が可能である。

なので、エンプティング相手に敗北した場合、自爆が推奨されていた。


「こんなのが100匹いようが敵じゃねぇよ」

「大した自信だ。じゃあ、手っ取り早く片付けるとしよう」

「応よ!」


桃吉郎は刀を抜いた。

それと同時に大猿へと切り込む。

凍矢はスナイパーライフルで援護する形だ。


エンプティングは13匹の群れであったが、桃吉郎と凍矢の息の合ったコンビネーションによって7分後には全滅してしまった。


この二人、とんでもない戦闘センスの持ち主である。

それは実体に置いても遺憾なく発揮される。


特にゴリラは実体の方がドッペルドールよりも強いという。


「大したことはなかったけど……」

「けど?」

「おっぱい、ぶるんぶるんっ! 戦い難いっ!」

「あぁ、邪魔そうだな」

「凍矢~、交換しようぜ」

「絶対に嫌だ」

「けち~」


桃吉郎は早速、自分のドッペルドールに不満を覚えたのだった。


その後、彼ら……もとい、彼女らは食用のキノコを発見、20キログラムほど回収し初回の地上探索を終え、それぞれ3000Dと1500の貢献ポイントを得た。






「おう、戻ったか」

「あー、肩こりそ」


ぐりんぐりんと肩を回す桃吉郎。

その度に豊満な乳房がふるんふるんと揺れる。


「もっと乳を小さくしてくれ」

「ダメじゃっ! 巨乳はロマンなんじゃっ!」

「せめてバックアップ型のドッペルドールに付けてくれ。俺のは前衛型だろうが」

「だから、ええんじゃろうが」


ぶーぶー、と肩を竦める桃吉郎のドッペルドール。

彼女は武装を外し、てくてくとドッペルドールの収納カプセルに入り込んだ。


凍矢のドッペルドールも同様だ。


「「リンクアウト」」


そう宣言する、と彼女らは休眠状態に移行。

実体に意識が戻ってきた。


「ヴァ~、ようやく娑婆に戻って来たぜぇ」

「なんだ、その元犯罪者みたいな言いぐさは」

「やっぱ、男の身体が一番だ」

「その意見には同意しかないな。ドクター、なんとかならないのか?」


凍矢の要求に対し、ドクター・モモは腕をクロスさせて拒否した。


「この子たちは、わしの最高傑作じゃ。どういうわけか、おまえたちの細胞でしか完成しなかったのじゃよ。じゃから、文句言わずに可愛がれい。そもそも可愛いじゃろうが」

「いやでも……自分だし」

「考えようによっては双子の妹だしな」

「ロマンが無い連中じゃのう」


凍矢の意見はある意味で正しい。

自分の細胞を用いて複製した存在なのだから、性欲など生まれるはずもなく。

ただし、自分以外ならチャンスもあろうか。


「……ふむ」

「……僕のドッペルドールを見てどうしたんだ?」

「いや、ケツでけぇな、って」

「僕のドッペルドールに欲情するな」

「凍矢もいいんだぞ? 俺のドッペルに欲情しても」

「するかっ! いいから行くぞ! 収めた食材が【レストラン】に並んでるだろうし」

「おぉ、そうだった!」


バタバタと退室する大男。

その後を呆れ顔の美丈夫が追いかける。


その様子を老博士が見送った。


「ひっひっひっ、なるほど。拒絶反応、一切無しか。流石はわしが見込んだ男どもよ」


にちゃあ、という嫌らしい笑み。

マッドサイエンティストを頷かせるものだ。


「あぁ……最高じゃ、わしの娘たちよ。おまえたちこそが人類を救う女神となろう」


収納カプセルにて眠りに就く二人のドッペルドールをカプセル越しに撫でる。

それは生まれたての赤子をあやす父親のようだ。


「そのためなら、わしは……」


その目には強い決意。


そして、疑いようのない狂気を孕んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここまでプロローグって感じでしたね。 色んな添加物が添えられてるバインバインのドッペルドールの方がゴリラ(素体)より強いのかと思うジャン。 ゴリラの方が強いとかいうジャン。 お母さんもう何も…
[一言] ウチにも、こっち系の「変人猫耳科学者」がいましたッ!
[一言] いるのだド変態が!! タカアキ「呼びました?」 NG「次の異世界へ逝って下さい」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ