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21話 彼女は阿呆ですか? はい、阿呆です。

DBCを離れた場所に停車し、体勢を低くして接近する。

もちろん遮蔽物を利用するが、それにしたって限度というものがあるだろう。


「ここまでだな。あとは一斉に仕掛けて短期決着だ」


ジャックは木の陰にて息を潜める。

遠距離武器を扱うトーヤ、ジャックは、ここからの援護となろう。


「任せておけっ。一撃で仕留めてやるぜ」

「なるべく、他の部位を傷つけないようにね。高値で売れるから」

「分かってらい。いっくぞ~!」


トウキが物陰から飛び出す。

凄まじい速度で生姜鶏との距離を詰めた。


しかし、距離がかなりあるため、トウキの存在に生姜鶏が気付いた。


「任せろ!」


生姜鶏が雄叫びを上げそうになる。

そのタイミングでジャックが矢を放った。

それは生姜鶏の足元に突き刺さり、驚いた生姜鶏は雄叫びを取り止める。


「ジャックさん!」

「トーヤちゃんは討ち漏らした時まで我慢だ!」


ジャックが稼いだ時間で、トウキは生姜鶏の首を刎ねる機会を得る。


「貰った! んじぇずとぉ~っ!」


ざんっ。


吹っ飛ぶ生姜鶏の首。

吹き上がる鮮血。


「Extraスキル!【ディメンションハンド】!」


デューイの手が緑色に輝く。

宙を舞う生姜鶏の首に合わせた瞬間、彼女の手の中にそれが存在していたではないか。


これは空間を支配する超レアスキルであり、一日に5回という制限があるが、如何なる物も手元に移動させる、という能力を持っている。


「よしっ! バレない内に引き上げるよ!」

「おっしゃ!」


トウキは生姜鶏の本体を担ぎ上げる。


「こけぇっ!」


しかし、そのタイミングで物陰から一羽の生姜鶏が現れた。

固まるトウキとデューイ。


「バックアップ!」


飛び出すジャック。


ターン、との発砲音。


放たれた弾丸は寸分たがわずもう一羽の生姜鶏の眉間を撃ち貫く。


ジャックはトーヤが仕留めてくれること前提で飛び出していた。

ゆっくりと倒れる生姜鶏。


遠くでは生姜鶏たちが異常を察知して雄叫びを上げている。


「逃げるぞ!」

「言われなくても、スタコラサッサだぜ!」

「ひ~っ!? 上手くいったと思ったのにっ!」


ジャックは生姜鶏を担ぎ上げてDBCを目指す。


トーヤは既にDBCに戻り後部可動ユニットにてスナイパーライフルで援護の構えだ。


「さて……驚いてくれるかな?」


ターン、ターン、と等間隔で発砲音が鳴る。

狙いは眉間ではなく、追い駆けてくる生姜鶏の足元。


驚いた一羽がバランスを崩して転倒した。

それに躓き、後続が巻き添えになってゆく。


それでも、それらを飛び越えて追いかけてくる生姜鶏の群れ。


「ナイスっ!」


十分な時間稼ぎになっただろう。

ジャックたちは仕留めた生姜鶏を後部可動ユニットに放り投げ、急いで車に乗り込んだ。


「しっかり掴まっておけ!」


車は砂煙を上げながら急発進する。

最高時速は250キロメートルにも及ぶが、それはあくまで整地された道路での話。


一方で生姜鶏は最高時速120キロメートルを叩き出す。

整備されていない平地でだ。


「トーヤちゃん!」

「分かってます」


トーヤは後部可動ユニットから生姜鶏を狙撃する。

しかし、仕留めるということはしない。

一羽や二羽、仕留めたところで状況は改善しないからだ。


追いかけて来ている生姜鶏は軽く二十羽はいよう。

捕まったが最期、骨すら残らず彼らの腹の中、は間違い無く。


「デューイ、アタッシュケースのスモークボムをバラ撒いてくれ!」

「おっとぉ? そんなのもあったわね」


デューイは助手席のアタッシュケースを調べ、中から3個のスモークボムを発見した。

要するに煙幕手榴弾である。


これを用いて生姜鶏の視界を潰し、その隙に逃げ果せようというのだ。


「そ~れっ!」


窓からスモークボムをバラ撒く。

それらは数秒後に爆ぜ、膨大な量の煙幕を撒き散らした。


「ごけぇっ!?」

「くえ~!」

「こここここここここっ!」


想定外の事態に生姜鶏は大パニックに陥った。

これなら、もう彼らが立ち直った時には既にジャックたちの姿は無くなっているだろう。


しかし、馬鹿はいるものだ。


「わっはっはっ、より取り見取り」


いつの間にか車から飛び降りたトウキだ。

彼女は生姜鶏を全て狩るつもりでいるのだ。


「俺の給料20か月分……逃すわきゃねぇだろっ!?」

「「「ごけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」


煙幕で何が起こっているか分からない状況で、仲間たちの首が次々に跳ね飛ばされてゆく恐怖。


完全に生姜鶏たちは狩る側から、狩られる存在へと成り果てた。






「ふい~……なんとかなったわね」

「はい。トウキ、ちゃんとお礼を言うんだ……ぞ?」


一息ついたデューイたちはしかし、直後にトウキがいない事に気付いた。


「おい……」


ジャックが嫌な汗を流した。


「……まさか」


デューイは口を押える。


「あのタイミングでか?」


トーヤは眉間を揉み解した。


そして―――――――――――――。






「「「……アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」






慌てて引き返す車は絶叫と共に。


回収されたトウキは三人に、こっぴどくお説教された。

今は簀巻きにされ、車に引き摺られてながら帰路に付いている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逃げるっつったのに飛び降りてるのはおかしいよなぁ!? というわけでトウキ、タイキック!
[良い点] 生姜鶏「しょうがないじゃん」 トウキ「簀巻きはするのは好きだけどされるのは嫌」
[一言] いるところには、いるもんだ・・・
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