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103話 北へ

『では、詳しい話はわしの秘密基地で行うとしようかの』

「なんですって?」

『こんな事もあろうかと作っておいたんじゃ。場所は稚内宗谷岬の地下深くじゃ』


凍矢は呆れた。


この老科学者はやりたい放題を極めていたのだ。


まぁ、だからといって本部には同情しない。


今の本部には期待できる部分が殆ど無いからだ。


彼らにできる事と言えば、問題の先延ばしに、その問題の隠蔽くらいだろう。


だからこそ、御木本は解任され僻地へと追いやられている。


「ふむ、毒を食らわば皿まで、か。こちらに異論は無い」


既に覚悟が完了している者は応対が違った。


御木本は実に落ち着き払っている。


「稚内って北海道の最北端じゃねぇか。そんなところまで、どうやって移動すんだよ」


それに対してモヒ・カーンは覚悟が決まってないので心が浮ついている。


『エティルに乗せてもらえい。もう、秘密基地の位置もばれていいわい』

「あら、ということは完成したんですね?」

『うむ。わしの最高傑作が、の』


かっかっかっ、と狂科学者は愉快そうに笑った。


絶対にとんでもない物を完成させたに違いない、と溜息を吐いたという。


もちろん、桃吉郎とトウキ以外だ。


ついでに話の内容をよく理解できていないトーヤもだ。


「では、ドクター・モモの秘密基地まで私が送ります」


そういうとエティルは衣服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿へと。


その様子に「うほっ」と喜ぶモヒ・カーンだが、次の瞬間にはしょぼーんとなった。


エティルの正体はアナザーでありドラゴンである。


「では、私の背に」


巨大な白金の竜に変じた彼女が蹲り、背中に乗り易い姿勢を取った。


それでも背中に乗れない鈍臭いやつらがいる。


そういった面々はやはり、桃吉郎とトウキに抱えられて雑に運ばれた。


トウキに抱えられた寅吉君は彼女の肉の柔らかさに大満足したという。


このエロガキがっ!


「おっと、そういえば俺たちの本体はすすきのに置き去りか?」

『そのことか。それなら問題ないわい。今はとにかくわしの秘密基地に急ぐんじゃ』

「お、おう」


ジャックは自分たちの本体が気がかりであった。


もし、本部に規約違反がバレた際には本体が人質に取られる可能性もあるからだ。


しかし、それに気付かぬドクター・モモではなく、既に手を打ったという。


これに憂いなくジャックは事の成り行きに身を任せようと決心した。






旭川野営地傍で巨大な竜が出没したと大騒ぎになっている。


また、複数名のドッペルドールが姿を消した、とも。


その竜が飛び去って行った方角は北。


この情報は直ちに本部へと送られた。


だが、桃吉郎たちが大暴れした影響もあって対応は遅れている。


無能な彼らが行えることは、とにかく適当な人材を派遣して現状を維持するのみだ。


この無能ぶりに本部へ侵入していたアナザーは呆れたという。


「(ちっ……マスタードラゴンは、こいつらの何に脅威を感じておられるのだ?)」


とある女性高官の一人に化けたアナザーは、責任の擦り付け合いをする高官たちに嫌気がさした。


それでも自分の使命を全うするために殺意を、グッ、と堪えたという。






場面は変わり――――――宗谷岬。


そこは、かつて美麗な景色が人々を楽しませる観光スポットであった。


しかし、今現在では人間ではなくペンギンたちの憩いの場となってしまっている。


そのペンギンは【あわびペンギン】。


背中に無数のあわびを背負うペンギンである。


DLは0。


人畜無害で人懐っこい鳥類だ。


餌は海藻類で、特に昆布を好む。


背負ったあわびはペンギンたちから栄養を貰い、すくすくと成長する。


特に昆布を好んで食べる個体のあわびは絶品であり、とても価値が高い。


ただ、このペンギンは宗谷岬限定の生物であり、捕獲が簡単であるにもかかわらず、まったく手が付けられていなかった。


理由は至極単純。


宗谷岬までが遠すぎる、だ。


そんな彼らの楽園に突如、白金の竜が舞い降りる。


だが、彼らは「ぺ~ん」と不思議そうな表情で巨大なる者を見つめるのみ。


あわびペンギンには天敵がいなかったのだ。


なので個体数がやたらと多い。


彼らが捕食されない理由として、ペンギンの肉自体がくそ不味い上に毒が含まれているからである。


だから彼らは捕食されない。


しかし、背中のあわびは毒の影響は無く、逆にペンギンの体内、特に内蔵の毒素を浄化してくれていた。


これによって、肉に毒はあっても内臓器官には毒が無い状態が成り立つ。


つまり、健全な共生関係が成立しているのだ。


「わー、ペンギンだ~!」

「見ろ、トウキちゃん! あわびを背負ってるぞ!」

「ほんとだー! 全部、かりとれー!」

「わぁい!」


「やめんか!」と凍矢とトーヤに怒られた兄妹は正座をさせられている。


今だけは大人しい。


「ここが宗谷岬か」

「本当にペンギンだらけね」


稚内の地に降り立ったジャックとデューイは早速、あわびペンギンたちの熱烈な歓迎を受けた。


なんだなんだ、と纏わり付いて来る小さなペンギンたち。


つんつん、と彼らの足を嘴で突いて見上げてくる。


その際に、こてん、と首をかしげるのが可愛らしい。


「ペンギンだらけですねっ」


寅吉君は本体がお子様だからなのか、この光景に大喜びだ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 助けてっ!」


逆に金林は地獄の宴。


竜から降りる際にケツから落下。


もんどりうっている最中にペンギンたちが殺到し、全身をツンツンされている。


ぷよぷよの肉が面白かったのか、嘴の乱れ突きを喰らっているもよう。


たぶんこの刺激でまた肉が増量しそうである。


「ドクター・モモ、現場に到着しました」


凍矢がトーヤから受け取ったGPCでドクター・モモに連絡を入れる。


『そこから向こうにかつての売店が見えるじゃろ。そこに入るんじゃ』

「あの崩れかけの建物ですね。分かりました」


こうして、凍矢たちは崩れかけの元売店へと足を踏み入れた。


尚、あわびペンギンあわびは、桃吉郎兄妹のちゃっかりによって結構な数、略奪されたという。


だが、ペンギンの剥がれ落ちたあわびは直ぐに生えてくる。


なので心配ご無用だ。


寧ろ、身体が軽くなって喜んでいたという。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あわびがアワビを捕獲 常識人「それ以上はいけない」 ではゴリラが鮑を乱獲」 ふきゅん人「それなら問題無し」 売店のおばちゃん「それは売り物だからちゃんとお金払ってね」 どうしてこうなった!…
[一言] トウキちゃんにデレデレしている→健全な少年 トウキちゃんをドロドロにしている→発禁少年 発禁少年にならなければセーフな筈…
[一言] あわび乱獲 桃吉郎「さっそく調理しなきゃ! 凍矢、火を起こせ」 凍矢「そんな暇ないだろ!」
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