101話 邂逅
「おわぁぁぁぁぁぁっ!? 鉄の獣っ!?」
「ひえっ!? 何この化物っ!?」
ドクター・モモはジャックたちにAB-ウルフの存在を教えていなかったのだろう。
突然、旭川の野営地に鋼鉄の獣が現れた事により、現地のドッペルドールたちがパニック状態に陥ってしまった。
「待て待て、俺たちだっ」
「と、桃吉郎?」
少し遅れて桃吉郎と凍矢が旭川野営地に到着しAB-ウルフの説明を行った。
これにジャックたちは呆れるも、ドクター・モモだから、という理由で納得を示してしまったという。
「で……この坊やがトラクマドウジの本体ってわけか?」
「はい、この姿では初めましてですね」
輝夜によってAB-ウルフから降ろされた寅吉君がジャックに対面する。
寅吉君は名残惜しそうに輝夜から離れた。
そのナイスバディはショタっ子をも魅了するのだ。
だが、輝夜も筋肉愛好家であり、ショタっ子のぷにぷにボディには興味が無い。
「本体ってことはドッペルドールの方は無理だったんだな?」
「えぇ、残念ながら」
ふっ、ふっ、と呼吸を整える凍矢は頬を上気させ、とんでもなく艶めかしい状態になっている。
ジャックですら思わず、えっろ、となるような危うさだ。
この時点では凍矢の性別は男性と思われているので、ジャックは間違ってもそのような言葉を口にはしないだろう。
「えっろ」
「モヒ・カーン……おまえなぁ」
「エロに性別は関係ない」
だが、ここには強者がいたという。
世紀末モヒカン伝説モヒ・カーンである。
そんな彼に凍矢は思わず身を引いたという。
「んで、あれは?」
デューイが鋼鉄の獣に縛り付けられてぐったりとしている女たちを指示した。
「彼女たちは僕の仲間です」
「……あぁ、確かホシクマなんちゃら、っていう子たち?」
「はい。コクピットの事情で乗れなかった方々には走るか括られるかの二択となってしまって」
そのような説明をしている中で、AB-ウルフのコクピットからもそもそと這い出る者の姿が確認された。
「お~い、誰か降ろして~」
鈍臭い身体をした金林である。
彼女は運動神経が皆無であるため、降着状態のAB-ウルフですら自力で降りることが出来なかった。
無論、ドッペルドールあれば問題無く下りられるだろう。
「鈍臭い女だな」
桃吉郎はぷひっと溜息を吐いてコクピットに一っ飛びし、金林のぽよぽよな身体を抱き上げ、そこから地上へと飛び降りた。
このgorillaにデリカシーという言葉は存在しない。
金林を途中で放り出さないためにケツと乳をがっちりつかんで身体を固定するという暴挙に出たのである。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? セクハラっ!」
「おまえ……ぶよぶよ過ぎんだろ。もっと絞れ」
「セクハラな上に暴言までっ!?」
そして、桃吉郎は金林の脂肪がお気に召さなかったもよう。
これは酷い。
「何はともあれ、これでようやくスタートラインに立ったわけか」
ここまで口を挟まなかった御木本が口を開いた。
彼の視線の先には桃吉郎。
「やはり、君がトウキのパイロットか。気の質が同じだが大きさが違うな」
「本体の方が強いからな」
「そうだろうな。だが、トウキも見違えたぞ」
「うん?」
桃吉郎が不思議そうに首を傾げる、と御木本の影からトウキが、ひょこっ、と顔を覗かせた。
「うをっ!? トウキが勝手に動いてるっ!?」
「にーちゃ」
「喋ったぁ!」
どうやら、トウキは桃吉郎を兄と思っているようである。
ぶっちゃけトウキは桃吉郎の細胞を基にしたクローンなので、あながち間違いではないのだが。
いうなれば双子の妹であろう。
「これは、どういうことだ?」
「……ねーさま」
「うわわっ!? ト、トーヤっ!?」
もちろん、トーヤも同じような感情を凍矢に向けており、さらりと凍矢の性別を暴露してしまった。
でも、誰も気づかなかったもよう。
それは桃吉郎とトウキの兄妹がクソ喧しかったからだ。
「にーちゃ! にーちゃ! にーちゃ!」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!? いったい何がどうなってやがるっ!?」
トウキは桃吉郎にがっちり大しゅきホールドを敢行。
gorillaにしがみ付くお猿さんな状態に。
それを凍矢とトーヤの姉妹が呆れ顔で見守っている、という構図が出来上がった。
『落ち着かんかおまえら』
「おう!? くそ爺! トウキちゃんに何しやがった!?」
『今から説明するわい』
トーヤのGPCからドクター・モモの声が聞こえた事によって、この騒動は一旦の収束を見た。




