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大事な話し

作者: 夜の風

 大事な話し

 

  交際中の男女がいた。

 一日デートを楽しんだ帰り道、「あのね。大事な話しがあるの。」彼女が切り出した。

 次の瞬間、二人の目の前で交通事故が発生した。それに気が付いた周りの人たちが集まりはじめ、警察  を呼べだの、救急車を呼べだの騒ぎになった。

 そのそばで彼氏が聞き返した。「大事な話っていうのは?」彼女が苦笑で言う。

 「なんだっけ。事故見たら忘れちゃった。」


 次のデートの帰り道、「あのね。大事な話があるの。」彼女が切り出した。

 次の瞬間、カバンを脇に抱えた男が二人の目の前を猛ダッシュで駆け抜けて行った。

 その直後、近くの路地裏から、「ドロボー!」の女性の声と共に「待てー」と何人かの人が後ろから追  いかけて行った。

 突然すぎて二人共それを見送る事しか出来なかったが、再び彼氏が聞き返した。

 「大事な話しっていうのは?」彼女はまた苦笑で、「あれ?なんだっけ?泥棒見たら、忘れちゃった。」


 次のデートの帰り道、「あのね、大事な話があるの。」彼女が切り出した。

 次の瞬間、向かいの雑居ビルから爆発音が鳴り響いた。

 ガラスの破片が降りそそぐ中を走って無事に脱出し、呼吸が落ち着いてから、再び彼氏が聞き返した。  「大事な話しっていうのは?」「あれ?なんだっけ。さっきのすごい音で忘れちゃった。」

 またしても彼女が苦笑で言う。


 次のデートの帰り道、彼氏はまた言い出すかもと、今までと違う道を通る事にした。 

 しばらく歩くと、目の前に歩行者しか通れない小さなトンネルがあった。

 彼氏は周りの様子をよくうかがい、車も来ない、泥棒もいない、火事も起きないのを十分確認し、

 中に入ってからこう切り出した。

「あのさ、こないだ言ってた大事な話しっていうのをいまだに聞いてないのだけど。」

「そうだったね。なんかいつもタイミングが悪かったからね。じゃあ言うね。」

「あのね・・私と・・」彼女が口を開いた瞬間、今度は二人の頭の上を電車が通過し、その爆音で彼女の  声が全然聞こえない。彼氏は機転を利かせ、彼女の口の動きに集中した。

 

 そして、その大事な話しはようやく伝わった。

 その口は、「私と結婚して。」と動いた。

 彼氏は満面の笑みを浮かべ、何度も大きく頷き、頭の上で両手で大きく丸印を作った。

 

 伝わった後も電車は爆音を響かせ通過中だったが、

 そんな事はお構いなしに彼らは熱い抱擁と口づけを交わした。    






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