05 相談
「僕の『鑑定修正』ってかなり強力な能力なのですが、さすがに無敵ってわけじゃないんです」
「相手の能力の"格"が、僕のスキルと同等以上だったり」
「サイノのような、この世界のことわりの外側の存在だったり」
「あと、多数の要因が複雑に絡まり過ぎていて『鑑定』し辛い状況だったり」
「僕が『鑑定』で見たところ、この辺り一帯の結界が、正直わけ分からん状態になっちゃってて」
「つまりは、僕ひとりでは今のところお手上げなんです」
「ゾディが長期メンテナンスじゃなかったら、『ゾディアック』を呼ぶなり、何か他の方法もあるんでしょうけど……」
サイリさんがアレできないのは、精霊さんたちがこの辺り一体に掛けている守護結界が干渉しているからですよね。
えーとつまり、ヒューネちゃんとロージュさんにお願いして、
精霊結界をいったん解除してもらえば良いのかな。
「いえ、僕の『鑑定』によれば、ふたりだけではないみたいなのです」
?
「もの凄い数の精霊結界が複雑に絡み合ってるって『鑑定』に表示されていて」
「たぶん結界の表示欄にある大勢のお名前の分だけ、精霊さんが関与しているのかと」
あー、精霊さん案件ですし、ちょっとリスト爺ちゃんに相談してみますね。
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お仕事中で、すぐにはこちらに来られないリスト爺ちゃんに、『Gふなずし』で聞いてみました。
で、理由が判明。
どうやら、"ヒューネちゃん詣で"っていうアレな風習が原因の模様。
実はヒューネちゃん、精霊界に結構な数のファンがおります。
当人の希望で正式なファンクラブはありませんので、その実態は把握できませんが、
潜在的にはヒメルミネアさんの"ヒメっ子クラブ"に匹敵する勢力らしいのです。
で、お行儀が良いヒューネちゃんファンの皆さんの間では、ヒューネちゃんの静かな生活は絶対に乱さないようにすべしと、"直接の接触はNG行為"がお約束。
ただ、アイドルと何らかの繋がりを持ちたいというのはファン心理として当然。
で、いつの間にやら、こっそりこちらの世界に来てヒューネ湖に守護結界を張ってくるっていうのが、ファンの間で大流行。
それすなわち"ヒューネちゃん詣で"
まあ、ヒューネちゃんの平穏な生活を守りたいっていう善意からの行為であることは、とてもよく分かります。
ただ、ヒューネちゃんを驚かせないようにと、こっそりひっそりソレが続けられているうちに、
いつの間にやらとんでもない数の精霊結界が掛けられちゃってたわけで。
「あれだけ絡まった大量の結界を何とか出来るのは、けんちゃんくらいかなって」
むう、さすがに今回みたいなアレな案件でけんちゃんのお手を煩わせるわけにはいかんのです。
ただ、精霊さんたちの掛けた結界をどうにかしないと、サイリさんの『鑑定修正』でクラゲを一網打尽にすることもできず。
リスト爺ちゃんも、お仕事が一段落したらこちらに来てくれるそうですが、
何もしないで指をくわえて見ているなんて、
狩人としてのプライドが許さんのです。
てなわけで、
ヨシッ、いっちょやってみますか、狩人らしく。
滅殺公人2号『リサイリー』と、
『ヘルダイバーC2』装備の僕とで、
大クラゲ退治のコラボレーションってことで。
「了解ですっ」
「実はあのクラゲって群体生物じゃなくて、スライム系の魔物に近い存在らしいのです」
「シュメリ博士からの情報によれば、身体の奥にある"核"をブッつぶすとすぐに死んじゃうそうです」
「てことで、まずは『"核"ブッつぶし作戦』、ふたりでやってみましょうかっ」
むふっ、サイリさんの『リサイリー』魂に火がついちゃいましたよっ。
それでは、レッツクラゲバスターズ!
「あの、僕にも何か出来ないでしょうか」
ハンジさん!?
「ヒューネちゃんが、湖のあの光景を見て、凄く悲しんでて」
「僕にも何か出来ることはないかなって」
ありがとうございます、ハンジさん。
じゃあ、クラゲ退治に突撃するのはいったん保留で、
もう一度、何かできることはないか、
みんなで考えてみましょうか。