17 進む道
ようやく落ち着きましたよ、日常。
いや、アランさんには今度こそ本当に落ち着いてもらわないと。
今回の件で、乙女たちにも男衆にも、
ちょっとやそっとじゃ返せないほどの大きな借りも出来たでしょうし。
この機会に、アランさんの性癖、
じゃなくて、人生が良い方向に進みますように。
ちなみに、"覗き魔事件"でストッパー出来なかったゼシカさんとフルリさん、
猛反省の後、例の安全闘技場で猛特訓の毎日だとか。
次こそは過激な実力行使も辞さず、だそうですが、
それだとたぶんアランさんには過激なご褒美ってことになるだけだと思うのです。
つまり、特使公爵さまの行く手を阻むのは、真っ当なやり方ではアカンってこと。
残念ながら僕ごときには、何をどうすれば良いのかなんてさっぱりですけどね。
今回の件で大活躍のフェリシルスさんですが、
今はロージュさんと特に親しく交流しているそうで、
おかげさまでアレによる僕へのストーカー行為が激減するといううれしい副産物も。
めでたし。
ヴァサコさんは、よろず相談所で日々がんばっております。
本当に何でもそつなくこなせるという得難い人材ですので、
リピーターな固定客まで付いちゃったそうで。
ヴァサコさんが楽しみながらお仕事してくれていること、それがイチバンなのです。
めでたし。
ハンジさんは、そろそろ行動を起こすかも。
あのクラゲ事件でがんばれたことが自信となったようで、
今の自分に何ができるのかを、ヒューネちゃんたちと語り合っているようですね。
ヒューネちゃんは、お昼寝を見守っていてくれるだけで大満足みたいですが、
ハンジさんもやっぱり男の子なのです。
でも無理せず、最初はご自宅での内職からでも良いのですよ。
慌てず焦らず、頼りになるみんなと相談しながら、ですよね。
何はともあれ、めでたし。
えーと、僕はですね、
特に普段とは変わらず、です。
いつも通りに狩人して、家族とのんびりして、時々みんなに頼って、精霊さんたちに振り回されて。
あー、本当に相変わらずですよね、これ。
まあ、ストーカー被害も減ったことですし、
めでたしめでたしってことで。
「…………(じっとりとした眼差し)」
うわっ、ストーカー再来!
って、リスト爺ちゃん、なにやってんですかっ、そんなとこでっ。
「フォリスちゃん、ヘルプッ」
なんすか、またなんかやらかしたんですか。
「ヒューネちゃんの出禁、早いとこなんとかしてほしいんじゃよぅ」
「わし、このままだと淋しくて昇天しちゃいそう……」
えーと、リスト爺ちゃんには、
アランさんみたいに陰ながら応援してくれる乙女とかは。
「……わし、マジ昇天……」
おっと、ごめんなさい、
直球すぎましたね。
どうしよう、困ったな、これ。
爺ちゃんのプレッシャーって人によって受け方が違うから、
ハンジさんにがんばってもらうってわけにもいかないし。
おっとそうだ、
それならまずは本人ががんばらなきゃね、自分のことなんだし。
「ほえ?」
つまり、リスト爺ちゃん自身ががっつり修行して、ダダ漏れしているプレッシャーを減らせば良いってことですよ。
できますよね、なんたって"精霊王"様なんだし。
「この歳になって修行かのう……」
いや、お歳は存じませんが、
人生日々修行ってことで。
「もちろん付き合ってくれるんじゃろ、フォリスちゃんっ」
マジっすか……
まあ、人族にできる常識的な範囲でなら。
「じゃあまずは定番の、滝に打たれての荒行からじゃのっ」
「あと、デッカい岩をブッタ斬るんじゃったっけ」
「あれ? 押すんじゃったかのぅ」
ってなわけで、次回から修行編に突入。
……するかっての。
あとがき
テンプレ行動からの逸脱こそが、
マンネリ打破への第一歩。
でも、積み重ねてきたモノを壊さぬ程度にお願いします。
誰とは言わないけど、
アランさん……
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。