14 窮地
本来は、観光地らしく大々的にお料理コンテストを開催して盛り上がろうぜ、
との予定だったのですが、
なぜか両国の女王様と王妃様の連名でのご署名入り御通達で、あまり事を大っぴらにしないように、と。
というわけで、両国のみならず周辺諸国のお料理名人たちの元へと、密かに速達鳥が飛びました。
『急募、アルセリア大太鼓クラゲを美味しく調理する方法(ただし極秘案件)』
しかし、名だたるシェフたちにも負けなかったのですよ、あの厄介クラゲ。
チャレンジした皆さんは、ことごとくサジをブン投げちゃったそうです。
こんな無理難題に深入りしてしまったら、
シェフとして立ち直れなくなってしまう、と。
本当凄いな、アルセリア大太鼓クラゲ。
それほどなのですか、お味のほどは。
「ちょっと試食品、試してみる?」
まあ、ここまで来ちゃったことですし。
食卓に並んでるお料理は、どれもめっちゃ美味そうですし。
どれどれ……
ぶべらっ!?
なんじゃコリャ!
エグ味の塊じゃないですか、コレ、
こんなん食うくらいなら水っ腹の方が万倍マシですよっ。
「だよねえ、"ヒューネ湖唯一の汚点"って言われ続けてきたのは伊達じゃないよね」
ちょっと、アランさん、
なんですか、人ごとみたいに。
見てくださいよ、ロイさんたちのあの表情。
普段リノアさんやルルリエさんのごちそうを食べてる人たちに、
こんなの拷問に等しい苦行ですよ。
これはもう残念ながら手の施しようが無いですね。
たぶん後世の歴史書には、
『覗き魔公爵のクラゲ離婚』
とか記されちゃうんでしょうけど。
「酷いよ、フォリスさん……」
身から出たサビでしょ、アランさん。
ユイさんだけじゃなく、奥さまたちのことを思いやらなかった罰です。
「……」