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お題シリーズ5

英雄の死

作者: リィズ・ブランディシュカ



 英雄が目の前で嗤っている。


 ゲラゲラとあざけるように。


 もう終わった。


 全部が終わってしまった。


 英雄は死んだ。


 俺たちの希望だったのに。


 だからもう、抗っても意味はないのだ。








 俺達はひどい国で生まれ育った。


 一部の上流階級の人間が横暴にふるまい、それ以下の人間をボロクズのように扱う。


 そんなひどい国で。


 そいつらは、偉そうに英雄の血を引いているから、とかなんとか言って権力をふりかざしてくる。


 馬鹿の一つ覚えみたいに、自分の力じゃないものをふるって、偉そうにふるまう。そればかりだ。


 自分が成し遂げた事なんて、何もないくせに、他人の力でよくそんなにも図に乗れるものだ。


 あいつらは、横暴だ。


 俺達が、やつらの目の前を通ることを許さない。


 俺達が、やつらのの言葉を遮るのは許さない。


 俺達が、やつらの考えに反対する者は許さない。


 もしもそんなことをしてしまったら、見せしめにいたぶられて殺されてしまうだろう。


 だから俺達は奴らへの殺意を抱きながら、毎日を過ごしていた。






 そんな俺たちのもとに現れたのは、英雄。


 どこからやってきたか分からない英雄は、圧倒的なカリスマを持って、俺達をまとめあげた。


 そしてみるみるうちに、策を用いて、ときに狡猾に、ときに大胆に、あいつらをやっつけはじめた。


 これなら、俺達が普通の暮らしができるようになる日もそう遠くない。


 そう思っていたのに。


 全部嘘だったのだ。


 全ては反抗分子をあぶりだすためのもの。


 一大作戦なるものでおびき寄せらえた俺達は、たくさんの兵士達に取り囲まれていた。


 そんな俺達をあざ笑うのはかつての英雄。


「だましていたのか!」

「だますもなにも、最初から仲間などではなかったのさ」


 何もかもが崩れ去る。


 未来への希望も、頼もしい味方への信頼も。


 その瞬間、俺達を救ってくれる英雄という存在は、死んでしまったのだった。 



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