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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

とある世界の創世神話

作者: 龍崎 明

 どこまでもどこまでも続いていて、続いていない虚無の中心に、まだなにものでもないがなにものでもある混沌がいた。


 永遠のような刹那のような時間が経ち、混沌のうちの意思が初めに抱いたのは、悲哀だった。


 何故、何も無いのだろう。


 此処は何処だろう。


 己は何だろう。


 何時から此処にいて、何時まで此処にいるのだろう。


 考えても考えてもわからない。


 答えをくれる存在も無い。


 その世界で起きた初めの事象は、涙だった。


 ポタポタ、ポタポタと混沌のうちから、水の概念が零れ落ちてゆく。


 けれど、落ちても落ちても、水の概念は混沌を覆うだけだった。


 次に、混沌のうちの意思に目覚めたのは、憤怒だった。


 己を覆う水の概念が鬱陶しかったのだ。


 邪魔だ!邪魔だ!


 これじゃ他に何かがいても見れないじゃないか!


 その瞬間、混沌から火の概念が迸った。


 火の概念は、混沌を燃やした。


 己を燃やしてどうする!?


 混沌は怒りのままに、火の概念を己の一部とともに放り出した。


 放り出された火の概念は太陽となり、ともに放り出された一部は月となった。


 光となった太陽に照らされて、混沌の憤怒は鎮まった。


 燃えた混沌は、土の概念が焼き固められていた。


 やがて、水の概念と土の概念が混ざり合い、生命が誕生した。


 最初は意思薄弱で動くことも無い植物だけだったが、徐々に徐々に動物たちも生まれていった。


 最後に誕生した人間を見て、混沌は歓喜に芽生えた。


 なんと強い意思だろうか!


 混沌は孤独ではなくなったのだ。


 混沌は抱いていた疑問がどうでも良くなった。だから、安楽に流れた。


 混沌が眠りにつくと、その寝息から風の概念が吹いてきた。


 混沌は夢の中で想った。


 そうだ、人間がいなくならないように助けてあげよう。


 混沌は己の中の四つの存在にそれをさせることにした。


 人間たちは自分たちを助けてくれるその存在に感謝して、彼らを四神として崇め奉った。


 四神はいつしか次のように呼ばれるようになる。


 悲哀と水の神アイスィー。


 憤怒と火の神ドヒィー。


 歓喜と土の神キドゥー。


 安楽と風の神ラクフゥー。


 と。


 混沌は、これで人間は安泰だと安堵して深い眠りについたのだった。


 でも、混沌は大変なことに気づかなかった。


 かつて放り出した己の一部である月が、放り出した己に憎悪を抱いていることを。


 そして、太陽が必死にそれを宥めていることを。


 けれどもやがて、月は憎悪のままに動きます。


 混沌の一部であり全てを持つ月は、長い長い時間を掛けて、人間を滅ぼす存在である魔物を生み出しました。


 一方、月の説得を諦めた太陽は、四神と人間たちに月の企みを教えました。


 月は憎悪と闇の神ゾアークの名で畏れられ、太陽は慈愛と光の神ジアーミの名で四神たちとともに崇められらようになりました。


 それがゾアークにバレてしまい、ゾアークである月は、ジアーミである太陽の反対側に自分の居場所を移しました。


 四神と人間たちは話し合い、強い味方を四神がそれぞれに生むことにしました。


 アイスィーは、魚と交わって海の王者たる人魚を。


 ドヒィーは、竜と交わって火山の覇者たる竜人を。


 キドゥーは、岩石を削って鍛治の匠なドワーフを。


 ラクフゥーは、木を削って美しき狩人のエルフを。


 そして、遂に魔物たちが地上に降り立って、人間たちの殺戮を開始します。


 必死に戦う四神と人間たち。


 しかし、どれだけ戦おうとも、ゾアークの憎悪が晴れることはありません。魔物が尽きることもありません。


 終わらぬ戦いに、ゾアークを慮っていたジアーミも手助けすることに決めました。


 高潔な精神を持つ人間の一人に、ジアーミは力を授けます。


 ジアーミの加護を与えられたその人間は、次々と魔物を斃し、やがて、ゾアークの神子であり魔物たちの王たる魔王を封印することに成功しました。


 魔物たちは統率を失い、三々五々に散りました。


 一度に生み出せる魔王は一体まで、その制約があったゾアークは、どれだけ憎悪を募らせても地上に干渉する術を喪ってしまったのです。


 魔王を封印した人間はやがて勇者と呼ばれ、いつまでもいつまでも人々の間で語り継がれるようになりました。


 そして、ジアーミは何もできなくなったゾアークをまた宥めることにしたのでした。


 その様子が地上からは、月が太陽の光を受けて輝くように見えるのです。


 けれど、ジアーミが眠る時、地上はゾアークの憎悪に当てられ凶暴化した魔物たちの災害が起こるのです。その日を人々は、朔の日と呼びました。


 また、数百年に一度、ジアーミの説得が失敗して、癇癪を起こしたゾアークの勢いが高まり、太陽を覆い隠してしまう時もありました。その時の魔物たちの凶暴化は朔の日よりも酷いものでした。その日を人々は、蝕の日と呼びました。


 やがて、勇者が天寿を全うすると、ジアーミはその魂を星としました。魔王が復活した時に、また戦ってもらうためでした。


 それにならって、四神も英雄たちを次々と星としていきました。


 夜空に輝く星々はそのようにしてできたのです。


 さてさて、創世のお話は此処までです。私たちの生きる今の世界はこのようにしてできたのですよ。


 え?獣人のことが出てこなかった?


 あぁ、そうでしたそうでした。


 獣人は、人間と魔物の間に生まれた忌むべき子らなのです。


 だから、彼らは今の世界で奴隷として私たちに服従し奉仕し、慈悲深き私たちに生かされているのです。

竜は動物(この世界の人には当たり前のことなので言及がなかった)。あと、巨人とか鬼とかアンデッドとかは魔物の一種。ダンピールは獣人と同等の扱いか、それより酷い。有名どころで出てこなかったのは、この辺かな。


星とならなかった魂だが、元は混沌の一部なので輪廻転生思想だし、実際にそうである。憎悪に呑まれるとゾアークさんの眷属になってアンデッド化。天国や地獄はないが、英雄は星となる栄誉が、罪人はゾアークに囚われやすいという責苦があるとも見做せる。


球体か平面か。球体である。混沌が丸かったから、それを焼き固めた世界も丸い。中心である混沌が世界になったので当然、天動説が正解の世界である。あと、平面だと神話成立しない。月のやること止めるなら、ずっと太陽が地上照らしてれば良いし。月は反対側行っちゃったので。いや、地下から侵攻でも良いのか。うーん。でもやっぱ、それじゃ昼と夜が無いし。世界の全てを照らすために、世界の周りを回っているとするなら、球体だな、うん。休みを与えるために、裏側に回るという理由だとなんか弱い。だって洞窟とか暗がりに篭れば、休めるし。あと、夜はこの設定だと魔物対策がいるから休めない人いるし。球体が形として最も安定するわけだし、昼と夜を繰り返す理由づけとしては球体の方がやっぱ強い。

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