仕事
さっそく今日の放課後、学級委員の仕事があるから、と担任に呼び出された。
「何か手伝えることがあったら手伝うけど……」
仲のいい夕菜が親切に職員室までついてきてくれた。
「あー別にいいよ。遅刻とか自業自得だし。しかも男子もいるしね。
しかも、今日デートでしょ? 藤森くんと」
あたしは彼氏いない暦イコール年の数という感じだけれど、夕菜には付き合って二年になる彼氏がいる。
「まあ、そうなんだけど。もし明日も学級委員の仕事あるんだったら手伝うから」
「そう? ありがと」
誰もいない廊下には、あたしと夕菜の歩く音と、声しかしない。
じゃあね、と夕菜は職員室と反対側にある昇降口へと向かっていった。
「……さて」
職員室のドアの横には大きな鏡がある。卒業記念らしい。
そこで少し身だしなみを整えて、周りに誰もいないのを確認してから、ちょっとだけ笑顔を作ってみた。
……何してるんだろ、馬鹿らしい
「失礼しまーす……。えっと、鈴木先生いらっしゃいますか」
鈴木先生とは、あたしの担任の先生である。白髪交じりのおっちゃんで、生徒からわりと人気がある。
「おー、来たか。話が長くなるから入って来い」
こっちへ来いという風に手をひらひらと降った。
「仕事ってなんですか」
早く終わらせたかったので、ついぶっきらぼうになる。
「まあそんな怖い顔するな。
今度、大学見学に行くんだけど。ほら、お前の近所の兄ちゃんが通ってる」
「兄ちゃ……あ、健ですか」
……最近会ってないなあ。
「そうそう。で、今から大学に下見に行って、御世話になる先生方に、お願いの言葉を言いに行かないとだめなんだよ。
めんどくさいだろ、ったく。先生も行きたくないんだけど、実際」
と、本当にめんどくさそうな顔をした。あたしもめんどくさくなってきた。
あたしは特に用事が無かったので、家に連絡を取ってから、後から来た男子の学級委員とともに先生の車で大学に行った。