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遅刻と何かの始まり

停滞していてすみませんでした……

更新再開いたします!!



部屋に戻ると同時にあたしはベッドへダイブした。

「…………ほんと、ばか」

 分かってんのよ、と掛け布団にくるまりながら呟く。

あの時の、何だかためらったような声。

昔から、健があたしにに嘘をつくときの、小さなためらい。

『うん』と健は嘘をついた。

 もう、あたしには自分の気持ちをどうすることもできなかった。

これ以上、揺さぶられるのは嫌だった。気持ちを確かめたくて、問い詰めたかった。

でも、それで健との関係が崩れるのはもっと嫌だ。

「……もう会いたくないよー…………」

 嘘だけど。と、心の中で付け足す。

 矛盾した気持ちがあたしの胸を駆け巡る。もうどうにもならない。

「とりあえず、寝よ」

そう言って、あたしはそのまま眠りに着いた。



「…………もうやだ」

 始業時間は八時半。今の時間は八時十五分。学校までは二十分。

 マッハで準備して、家を出る。出て行く寸前、リビングの時計を見ると二十分を指したところだ。

これ以上遅刻すれば、そろそろ生活指導だろう。

泣きそうな顔になって走った。

二分ほどで少し広い道に出る。のろのろと車が自分を抜かしていって、あたしはそれを恨めしげににらみつけた。

と、その車がとまる。

まさか自分の眼力で……と、あたしもつられて止まってしまった。そんな余裕はないのに。

運転席のドアが開いて、どこかで見たような明るい茶髪が目に入る。

「あ、やっぱ小堀ちゃんだー」

 にっこりと優しい笑顔は見覚えがあった。間宮隆人。健のサークルの友達。

「間宮さん! おはようございます。

 ……あ、あたしちょっと急ぐんで、すいませんっ」

 悠長に話している暇もないので、体制を整えて走り出そうとした。

ぐい、と腕をつかまれて「うげっ」と変な声が出る。

「遅刻か? 乗ってけ乗ってけー!」

 楽しそうに笑う間宮さんをみて、ああ神だ、とあたしは思った。


「間に合う?」

 ハンドルを操作しながら笑顔を絶やさず、聞く。

世の女の子もイチコロだろうなーと、勝手に思っていた。

「はい、ギリギリ……。ほんと、間宮さんがいてくれて助かりました……。

 …………これ以上遅刻したら生活指導が」

「え、そんなにしてんの?! ははっ、まあ俺もそうだったけどね。

 ……てか、【間宮さん】なんて堅苦しいからやめて、な?

 隆人でいいから! あ、もしくは隆人さん!」

 楽しそうに笑うので、あたしもつられて笑った。

「じゃあ、隆人さん」

「おー、よく言えました。……あ、この間のサークルさー、

 何故か俺だけアドレスと番号教えてもらってなかったんだけど、教えてよ」

 思い出して、ちょっとふてくされたように言う。

そう、あの日何故か隆人さんだけアドレスを交換していなかったのだ。

るみさんや絵里さんが『こいつと関わりを持つだけで妊娠する』とか言い出したから。

そりゃあふてくされる、とあたしは苦笑いして携帯を取り出す。

隆人さんが左手で携帯電話を開く。赤外線通信の画面を出して、それをあたしにひょいと渡した。

「運転中だからね、やっといて?」


「……はーい、到着っ」

 校門のすぐ手前で車を止める。八時二十七分。ギリギリセーフ。

「本当にありがとうございました」

 車から降りて深々と頭を下げる。困ったような顔をして隆人さんは笑った。

「早く行かないと間に合わねーぞー。じゃな。またメールするから」

「はいっ。それじゃ」


 ひらひらと手を振って、亜紀の後姿を見送る。

「……さーて、俺も講義講義っ」




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