電話
こんばんは、乃崎です。
更新遅れて本当にすみませんでした!
あさってから学校なのでまた更新が...ということになりますが、どうか見守ってください!
「……亜紀? ご飯、冷めるけど……いらないの?」
いつもなら何歳児だ、と思うほどがっついて晩御飯を食べるのに
今日はお箸を持ったままぼーっとしているあたしに、お母さんは心配して声をかける。
「あ、ううん、食べる食べる……」
そう言って一口ご飯を口に含むがそれっきりで、お箸が進まない。
「……おなかいっぱい。ごめんね、ごちそうさま」
これ以上食べる気にもなれなくて、そのまま席を立った。
「おなかいっぱいって……今ので一口目じゃない」
不思議そうにいうお母さんだけど、特に深追いはしてこなかった。
健は、青葉さんと付き合っていた。
「いたらお前をここにつれてきたりしない」
なんて言ってたくせに。
何だか悔しくて、ぼふん、とベッドにダイブする。
「……悔しい?」
何が悔しいんだろう。どうして悔しいんだろう。
「ああ、そっか」
この気持ちが『嫉妬』なんだ。初めて知った。
あたしは単純だから、この間のあんなささいな出来事でも、心が揺れ動いて、健に惹かれてしまう。
この気持ちが、たぶん人を好きになるってこと。
「……五歳か」
妹みたいにしか、思ってもらえないに決まってる。誰に聞かなくても、分かるよ。雰囲気で。
でも、どうしてあの時、健はあたしを抱きしめたんだろう。
寂しかったから? そんな、簡単な答えではないだろう。
それに……
「あの写真、誰よ……」
一人悶々と考えていると、突然携帯電話のバイブが鳴った。
いつになくびっくりして、「なによもう」とか言いながらそれが置いてある机に向かう。
サブディスプレイには「健」の一文字。メールではなくて、電話。
「…………」
一瞬、出ようか出まいかためらって、出た。
やっぱり、声が聞きたかった。
「あー、俺」
あたしの気も知らずに、呑気な声が聞こえてくる。悶々としている自分が馬鹿みたいに感じる。
「……どうしたの」
少しそっけなく返す。そうしないと自分が情けなくなってしまう。
高校一年生の、ちょっとした意地。
「や、あのさ……青葉さんのこと……何か聞いた?」
ためらいがちに聞いているのが分かる。健の口から『青葉さん』が出てくるのが嫌で、大きくため息をついた。
「やっぱ付き合ってたんじゃん。うそつき」
「ん……ごめん」
ごめん、か。と心の中で一人思う。
「あたしのせいで青葉さん怒らせちゃって……。…………まだ、好きなんでしょ?」
心のどこかで、『もう吹っ切れた』って言ってほしいと思いながら聞く。
幼いあたしは、こういう時、どういう言葉をかければいいのかなんて、分からない。……ということにしておく。
「……まあ…………うん」
小さく、悲しそうな声で呟くように言う健。あたしは机の上においてあるプリントをくしゃっと握った。