プロローグ
こんにちは。乃崎です。
この小説は前に書きました、「雨女、晴れ男」の
構成に少し似ておりますが、その小説が途中で執筆できなくなったので、少しストーリーを似せて書きました。
頑張って完結させたいと思いますので、よろしくお願いします。
「健ー、遊ぼうよー」
あたしがいくらそう言って近寄っても、
「お前五才も俺より下のくせに名前で呼ぶな。
あと俺は宿題があるんだ、学校の」
ふいっとぶっきらぼうに突っぱねる。
「いーやーだっ。宿題って何よー」
まだ幼稚園の年長だったあたしには宿題の意味さえわからない。
「勉強するんだよ、今から。だから遊んでる暇ないんだっつの」
あたしの頭三つ分背の高いその人は、にっと笑ってあたしの頭をポンポンと叩いた。
「だってお母さんが、健に遊んでもらえって言ってるんだもん」
ぶーっとふくれっ面になる。でも頭をなでてもらったのは嬉しくて、何だか変な気持ち。
「昨日遊んでやっただろーが。
いくら家が正面にあるからって毎日毎日訪問するなよ」
「……ほうもんって何?」
「えーと……
ま、とにかくまた明日遊んでやるよ」
「やだ。今」
幼稚園児なので、これがわがままだということは分かってない。
ただ純粋に、目の前の人と遊んで欲しかっただけで。
「今日はだめ。俺も用があんの。
明日遊んでやるから、約束。指きり」
「絶対?」
「おう、絶対だ」
そういって、無理やりあたしと小指を絡ませた。
「……じゃあ今日は帰る。帰る代わりに、あたしと結婚してね」
びしっと指を指してポーズを決める。まだ結婚の意味など知らない。
あはは、と笑われた。
「お前よくそんな言葉知ってるな。
おー、してやる、してやる」
「ほんとに!? やったあ」
よく分からないけど嬉しくて。
「当然。じゃー、また明日な」
そう言って家の中に入っていくのをずっと見ていた。