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5 与えられたスキル

「手伝うって言っても……今までの話を聞いて、俺はそんなにやる気はしないんだけど……」

「えっ?!なんでですか?」


 女神はさも不思議そうに目を丸くする。


「だって……その話、俺にメリットはないような気がする……」

「えぇ~……じゃあ、仕方ないです。気乗りしない方に無理矢理手伝ってもらうわけにはいきませんからね……」


 そう言うと、女神はなにやら瞑想めいそうをしはじめた。彼女の身体が白い光を放ち、ピンクの髪が浮き上がってくる。


「ちょ、ちょっとっ!」


 俺はなんだか嫌な予感がして、声を掛けた。


「なんです?」

「何を……する気なの?」

「何って……今の私の構成力のキャパは生命体ひとつ分ですから、あなたを逆構成して、あらたに別の生命体を再生するんですよ。お手伝いしてくれそうな方を」

「逆構成って……俺はどうなるの?」

「構成物がりになって今の形は失われます」

「死ぬって……こと?」

「生命活動という意味でしたら、その通りです」


 嫌な汗がひたいを伝う。

 この子……女神は、やはり俺の……俺たちの価値観とは、違っている。宇宙人というのも、どこかうなずける。


 だけど……。

 この先、彼女の頼みを受けたとして、どうなっていくのかわからない恐怖はあるが、それが今この場で「死」を迎えるという恐怖に勝るわけもなかった。

 俺は大きくため息をつく。


「……わかった。わかったよ、手伝うよ。要は冒険して、魔王倒して、ハッピーエンドを迎えればいいんでしょ?!」

「わお!」


 女神は瞳を輝かせて拍手かしわでを打つ。


「そうですか!そう言ってもらえるなら助かりますッ!それでは……」


 女神は再び瞑想に入った。


「ちょっとっ!何してるの?!」


 俺は消されると思って慌てて止めに入ったが、時すでに遅し。白い光は伝播でんぱし、俺の体が包まれる。


「うわわわわッ!」

「もう、そんなに慌てないでください。今、私の役目のひとつ、スキル授与をしています」

「……スキル授与?」


 そういえばこのラノベ、女神からのレクチャーを受けた後、異世界で活躍するためのスキルを授けられていたな……。たしか「イマジネーション」……思い描いたモノを異世界に現出させるチートスキル。これで無双していく話。


 白い光が落ち着いてきて、ついには元の通り、真っ暗な空間の中に俺たちふたりがいるだけとなった。


 「イマジネーション」……。ラノベの通りに俺にスキルが付与されたとしたら……。


「来いッ!『かたな』ッ!」


 俺はラノベの主人公よろしく、彼のメイン武器である「刀」を呼び出す掛け声をした……が。


しーん……。


 俺の手の内には何も現れない。手のひらが汗ばむのみ。


「何言ってるんですか?」

「俺も……自分で自分に訊きたいよ……。俺に付与したスキルって……なんなの?」

「私の『記憶素子』を読み解く力と、『構成』する力の簡易版みたいなモノです……。う~ん、よく判らないですけど、『資格』とか、『ライセンス』とかいう言葉が関係しているみたいですね」


 この女神、トコトン無責任だな……。


「『ライセンス』、ねえ……」


 その時、俺の頭の中には、運転免許証のイメージが思い浮かんでいた。

 「ライセンス」という言葉で連想されるもの、それは、俺がはじめに手にした原付免許証。現世で、いちばん思い入れの深かった「資格」だ。


ボンッ


 突然、変な破裂音が鳴る。


「わっ。なんだ、なんだ?!」


 俺たちふたりの目の前で煙があがっている。それが次第に晴れていくと、なんとも場違いなモノが現れた。


「……す、スクーター?」


 型や車種はよく判らないが、間違いなく原付スクーターだ。なんで、いきなりこんなモノが……。

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