第8話 新メンバー
「おまんは?」
彼女の使う言葉は確かに高知弁なのだが、どうもどこかイントネーションがヒカルの知っている高知弁とは違う。
ヒカルはそこで彼女が怪しいと勘付いたのだ。
「徳島だよ。徳島市。小学生までは兵庫だけど。中学から徳島」
「なんだ。自分と一緒だ。私は三重。高校から高知なんだ」
そう言って女の子は笑うと、ヒカルの両手を取って握ると、ブンブンと上下に振った。
ヒカルは心臓が止まりそうなほどビックリした。
柔らかい女の子の手。
女の子と手を繋いだことなんて記憶をたどってもない。
ふと気づくと、加藤と相川、佐々木から冷たい視線を浴びていることに気づいて、サッと彼女の手を離した。
「わたし大台優愛。誰も知り合いがいなくて。お願いっ! 仲間に入れて!」
大台優愛は顔の前で両手を合わせて大袈裟に言った。
「い、いいよっ! いいよな、みんな?」
加藤が大台優愛に即答する。
「ジャッジメント! 大賛成でしょう!」
佐々木がジャッジしたのに続いて、相川も頷いた。
みんなが賛成するならとヒカルも同意した。
チラリとデブの山田を見ると、疑うような視線を大台優愛に向けていた。
意外だった。
ヒカルの予想じゃ山田は「デュフフ、いいでござるよ」と大賛成するかと思ったのだが――。
何か山田にも感じるものがあったのかもしれない。
「よし、決まりだ。大台さん、よろしく」
リーダーの加藤が大台優愛を仲間に入れることを正式に決定した。
「優愛でいいよ」
「じゃ、じゃあ。ゆ、優愛さん……」
「だーかーらー、優愛でいいって」
加藤は顔を真っ赤にして「優愛」と名前で呼んだ。
名前どころか会話すらしていない相川と佐々木も何故か顔が真っ赤。
女に対する耐性がないのだ。
しかもカワイイ女から相手にされない連中。
The陰キャ。
そのことばがピッタリの男たちは、急に言葉数が少なくなる。
もちろんそれにヒカルも含まれるが。
「みんなが行かない有名な場所に行った方がいいんだよね?」
「そうだよ」
「なら札所は?」
ヒカルは思わず「アッ!」と声を漏らした。札所とは八十八ヶ所の霊場のことだ。
お遍路さん、と言えばわかるだろうか。
四国巡礼。
四国四県にある八十八ヶ所の霊場を巡る旅だ。
元々は、修行僧や信仰目的の巡礼されていたが、今では供養や心願成就、健康維持や旅行の一環としてのお遍路に変化している。
ヒカルも去年、夏休みを利用し巡礼をした。原付を使ってだが。
ヒカルは地元、徳島県にある一番札所である竺和山霊山寺から順に、最後の札所である八十八番札所、医王山大窪寺までの八十八ヶ所の霊場制覇を目指したことがあった。
「札所か。それなら、いい場所がある!」
ヒカルにはとある考えが浮かんでいた。
能力者もそうでない人も。
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