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第2話 箱崎防災船着場

 

 ――決まってしまったことはしょうがない。来世でまた会おうね山下さん。


 ヒカルはデスマッチを選んでしまった不幸な山下さんに心の中で別れを告げ、次のページをめくる。


 9.アマゾン

 10.島


 見た瞬間、絶句した。

 絶対に主催者の気まぐれで決めたであろう意味不明な種目がでてきたからだ。

 しかも詳細が一切書いていない。

『アマゾン』に『島』。

 謎すぎて逆に危険な匂いがする。


 ――こんなもの誰か選ぶかっ! この中で一番マシなのは……クイズだ! クイズにしよう!


 ふと黒板を見ると、既にクイズの応募者は定員に達してしまっていた。


 ――それなら創作料理コンテストは?


 創作料理コンテストも同じく定員に達していた。

 ヒカルは完全に出遅れていた。

 山下さん以外、みんな自分の能力を生かせる種目や無難な種目にエントリーしていたのだ。


 慌ててヒカルも黒板に自分の名前を書きに行ったのだが、余っていたのは『アマゾン』に『島』。

 迷わず『島』を選んだ。

 これが佐藤ヒカルの受難の始まりだった。


 *


 北海道から九州沖縄まで。

 全国の超能力高校から『島』にエントリーした超能力者たち総勢千人が、東京都中央区にある箱崎防災船着場へ集められた。


 この箱崎防災船着場は、東京都が管理する船着き場である。災害時に怪我人を船で病院に運んだり、船で運んできた支援物資を下ろしたり、災害復旧のための資材を運び込む拠点として活用が期待される施設だ。


 普段、この防災船着場は一般企業に開放されているらしく、民間の船が何隻も連なって超能力者たちの乗船を待っていた。

 大会のコーディネーターが言うには、隅田川の河口のこの船着き場から船に乗り、目的の『島』を目指すそうだ。


 ヒカルは初めて訪れる東京の街並みを眺めながら、大会運営からの指示があるのを待っていた。



「君、同じ学校のコだよね?」


 声をかけられたヒカルが振り返ると、そこには見たことのある顔があった。

 一学年上の皆藤センパイ。


 学校でも有名で、通り名は『リピート』の皆藤。

 言った言葉を何度も繰り返すことができる超能力者だ。


「あっ、皆藤センパイも『島』だったんですか?」


 ヒカルは知っている顔を見つけて少し安心した。だがすぐに不安になった。


「君、同じ学校のコだよね?」


 リピートの皆藤は同じ質問を繰り返した。

 繰り返すが、彼は言った言葉を何度も繰り返すことができる超能力を持っているのだ。


「はい。同じ学校です……。皆藤センパイも『島』だったんですか?」


「そうか……君も同じ学校なのか……」


 皆藤センパイ、もといリピートの皆藤はこちらの質問に答えることなく、どこかへ消えた。

 彼の知能指数は未知数だと噂で聞いていたが、ここまでとは……。

 あまりにもIQが低すぎて測れないから未知数。

 つまりヤベェ奴だ。


 そんなヤベェ奴が選んだ『島』だ。

 これからヤベェことになるのではないかと、先が不安になってきた。


 〈はーい、それじゃあ順に船に乗ってください。どの船に乗るかは、旅のしおりに書いてあるからね〉


 いい加減なアナウンスが流れ、ヒカルは旅のしおりに書いてあった番号の屋形船に乗り込んだ。


 隅田川の河口をゆっくりと屋形船は、まるで景色を楽しめといわんばかりにゆっくりと進んだ。


 春は桜を見ながら食事を楽しんだりできるらしい。

 いつかそんな季節に乗ってみたい。ゆっくりと流れる大都会の景色を見ながら、そうヒカルは思った。



 船が進むにつれて、波は大きくなり揺れが激しくなる。


「おい! どうなってんだ!」


「気持ち悪い……吐きそう……」


 生徒たちから不安な声が聞こえた。


 〈この先、少し船が揺れます。『島』に着くまでしばらくの我慢をお願いします〉


 まるで船に乗った生徒たちが、まるで見えているのかと思えるようなタイミングでアナウンスが流れた。


能力者もそうでない人も。

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