貝殻の国
旅人は道行く人に尋ねた。
「どうしてこの国の人達は揃いも揃って貝殻を被っているんだい?」
彼?(貝殻をかぶっているから断言できない、おそらく男性だろう)は答えた。
「それはね、この国では6歳を過ぎると特別な貝殻を支給されるんだ。会話も娯楽も買い物も、仕事だってこいつが何でもやってくれるのさ!俺たちはただ願いを口にするだけで良いんだ。「「hey 貝殻!今日はパンケーキが食べたい気分だ!」」すると他の機械と連動して美味いパンケーキがでてくる。お勧めの店を紹介してくれる。パンケーキセットも販売してくれるのさ!どうだ?羨ましいだろう!」
得意そうな声でそう教えてくれた。
町外れまで歩くと今度は貝殻を被らない老いた男が居たので尋ねみた。
「この国の人は皆んな貝殻を被ってるのになんでお爺さんは被らないのさ?」
老いた男は答えた。
「鬱陶しいからなあの貝殻。何をするのにもガイド音が五月蝿い。昔はまだ手に持って遠くの人と会話するだけだった。それが次第に機能が増えて今じゃ顔がなんでも世話する貝殻になった。目の前にお互い居るのに目を見て会話することもままならん。皆んな貝殻に従う。貝殻か人間、どっちが本体かわかったもんじゃないよ。ここは人間の国じゃない。まるで貝殻の国さ。」