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モブが世界を救うなら  作者: Rester
第一章
7/22

制限解除

私は、勇者とドラゴンの戦いを息をつめてみていた。


私が掲げる目標は3つ。


1、勇者を絶対に殺させない。(ギャラのために!)

2、物語の破綻を防ぐ(ギャラのために!)

3、物語をきちんと終わらせる(ギャラのために!)


だ。



・・・別にギャラが何より大切というわけではない。もちろん勇者かわいそうという理由もちゃんとある。最近金銭が心もとないからとか、そういう理由ではないのだ。うん。


勇者は相変わらず独り相撲を続けている。相手が意にも介してないことぐらい気づかないのかなあ。・・・あれ、もしかして気づいてる?ちょっと泣きそうな顔だ。

初めてに近い戦いで、今までとは桁違いの相手と戦わされたら、そりゃ小さい子じゃなくても泣きたくなるか。


ちなみにオーク達のレベルは1~3だから、文字通り桁違いの相手だったりする。


このまま戦っても無駄だって諦めてくれればこっちもハラハラしないで済むんだけどなあ・・・。

勇者の特徴には「諦めが悪い」も入っているからなあ・・・。



私が懸念しているのは、勇者のもう一つの魔法である。

バーニングドラゴンは火属性だ。火属性に有効な属性は、水。ついでにバーニングドラゴンは空も飛べるため、翼を使えなくすればもう問題ない。

勇者が言う『ファイアーボール』レベルの魔法で考えれば・・・おそらく勇者が覚えた魔法は水属性の『ウォーターカッター』だ。それ以外の魔法も可能性としてはあり得るが、『ウォーターカッター』以外の魔法ならドラゴンが傷を負う心配はない。

しかし『ウォーターカッター』を今の勇者のレベル+全力で撃てば、ドラドンを傷つけることができるだろう。


・・・それが問題だ。

今の勇者じゃ、相性のいい魔法を使ってもかすり傷程度のダメージしか与えられない。しかしそのかすり傷で、ドラゴンは勇者を敵視する。


今まではどうでもいい羽虫から、自分に害をなす目障りな羽虫と認識するのだ。


そしたら瞬殺エンドまっしぐらでお先真っ暗、だ。



・・・まあ、万が一そんな場面になったら、なんとかしよう。私にはその当てがあった。制限を解除すれば、あるいは。

「まだ返事は来ないけどねー・・・。」


こういう突発的なことに、SKは弱いと思う。なにせ世界を囲むほどの建築物を造り上げた組織だ。規模が大きすぎて、伝達も遅くなってしまうのだろう。あるいは判断に時間がかかっているのか。


===


「くそっ・・・。おい、こっちだよ!そっちに行くな!!」


そのころ小さな勇者は必死にドラゴンと戦って・・・いや、戦おうとしていた。

例え自分が蹂躙される側に回ろうとも、せめてドラゴンを村とは違う方向に誘導しようと、ドラゴンに呼びかける。

――――しかしドラゴンは彼に目もくれない。

悠然と歩くドラゴンの姿に勇者は、「僕に気づいてすらない・・・」と半ば絶望しかける。勇者の考えは半分間違っていた。ドラゴンは彼に気づいていなかった訳ではない。気付いていたうえで、無視していたのだ。

勇者は何とかドラゴンの注意が向くように目の前に飛び出していたが、その努力は徒労に終わる。


「――いや、まだだ。」


勇者はキッと前を向く。

そして、呪文を唱えた。


『ウォーターカッター!』


===


遂にやらかした!


私は止めようと叫んだが、もう遅い。

勇者から発された水刃がドラゴンの足元をわずかに切り裂く。ドラゴンが痛みに呻いた。


『ウォーターカッター!』


勇者はそれを好機と見たのか、いくつも水刃を繰り出して足元や翼を狙っていく。

どうやらここで一気に片を付けようとしているのか、魔力を残すことなど微塵も考えていない。


・・・バカじゃないの!?


私は勇者の元に向かって走り出した。ドラゴンは勇者おかまいなしで進んでいたので、少し距離がある。彼の魔力が切れる前に彼を戦線離脱させないと・・・。


「あ、あれ?力が、抜けて・・・。」


遅かった!


しかもどうやら、魔力について何も知らなかったようだ。スタミナとか考えてない戦法だったのはそのせいか。バカじゃなくてよかった。


・・・でも実力差もわからず突っ込んでいいたのは事実だからそこはバカといえるかな。


「返事はまだなの・・・!?」


SKの対応の遅さに苛立ちが募る。


そうこうしているうちに、ドラゴンが唸り声をあげて、爪を振るった。その先は、もちろん勇者だ。


「まずいよ・・・!」


疲労困憊の勇者は、ぐったりとしていて身動き一つしない。

このままじゃ、勇者が死ぬ・・・!


「・・・あぁもう、待っていられない!!」


私は叫んだ。


制限解除(リミットバースト)!』



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